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労働人口を調べてみての気づき

本日は、『労働人口を考えてみての気づき』というメモ書きです。朝起きて、ふと思った考えを膨らませてみます。関心を持っている日本の人口減少問題が思考の発端です。

「労働人口」とは?

まずは、字義の確認です。「労働人口」の定義は、私が想定していたものとは違っていました。

労働人口(または経済活動人口) 
非就業人口 /非経済活動人口 とは区別され、一般的に、有給の活動(所得の発生に貢献する活動)に従事している人々のことを指す。無給の家族従業者は経済活動人口に含まれる。無給の家事労働に従事している主婦 、学生、定年退職者などは通常含まれない。非労働人口は、労働人口の生産活動によって扶養されているという意味で、"被扶養者"とも呼ばれる。
ー 人口統計学辞書をベースに関連箇所よりまとめ

15歳以上人口全てを指すのではなく、労働する意思・労働できる能力を持った15歳以上の人口ということです。「労働する意思・労働できる能力を持った」というのがミソで、就業(有給の活動に従事)をしておらず、かつ就業意思のない専業主婦、学生、ニート、定年退職した高齢者など(=非労働人口)は、労働人口には含まれていないことになります。

日本の総人口減少と労働人口

労働人口は、15歳以上人口に労働参加率を乗じたもの、と言われることがあります。労働参加率(労働力人口比率)の定義は、

労働参加率=15歳以上の人口に占める労働力人口(従業者+休業者)の割合

です。

日本の総人口は、2008年をピークに減少へと転じており、”被扶養者”(=非労働人口)数の増加によって、社会保障コスト増大よる過剰公的債務、日本経済の活力低下が問題視されています。

厚生労働省の「労働力人口」の統計によれば、「ジャパン・アズ・ナンバー1」と日本経済が絶頂期にあった1990年(平成2)から、現状最新の2019年(令和元)への変化は以下のようになっています。太字は、私がデータから計算で出した数値です。「労働動員可能率」は私が勝手につけたものです。

◆総人口(万人):12,361➡12,619
◆15歳以上人口(万人):10,089➡11,092
◆労働力人口(万人):6,384➡6,886
◆非労働力人口(万人):3,657➡4,197
◆非労働人口比率(非労働人口/総人口、%):29.6%➡33.3%(+3.7)
◆労働動員可能率(労働力人口/総人口、%):51.6%➡54.6%(+3.0)

何を重視するのか?

日本の総人口減少は、動かし難い事実です。このまま、新生児数の爆発的増加もなく、移民受け入れの緩和もしないとなると、数年やそこらで、総人口の減少トレンドを止め、増加へと転換させることは困難です。

総人口減少にどこで歯止めをかけ、その為にどういう対策を講じるか、の政策選択は、これから先、日本社会や経済に起こるであろう何を問題視し、何を重視するかの議論次第です。人口減少を許容し、放置して自然の成り行きに任せる、というのも一つの選択肢です。

一方で、経済を支える働き手の低下を食い止める打ち手は、ー少なくとも数字上はー 実は色々とありそうです。非労働力人口の増加を緩やかにし、労働動員可能率を高める施策は、総人口を増やすよりは実行可能性が高いと考えられます。現在非労働人口に分類されている、主婦・若年層・高齢者・ニートの労働市場への参加を積極的に促していけば、働き手の減少カーブは緩やかにできるからです。

また、将来の人手不足による経済規模の縮小をより重視するのであれば、絶対的な人手不足を代替する最新テクノロジーの導入を積極的に進めれば、労働生産性の維持もある程度までは可能かもしれません。また、働き手として優秀で複業余力のある人間には、従来の2~3倍の仕事量をこなしてもらうことも一つの解決策ではあります。

日本の先行きにとって、非労働力人口の労働力人口化への転換は必要な施策である、と考えるのであれば、これからのビジネス市場で求められるスキル獲得の支援、雇用の流動化、会社員の複業推進、働き方制度の柔軟化、などは、民間企業も公共機関も積極的に推し進め、政策的にも支援した方がいいということになりそうです。

私は、高校時代はアルバイト禁止、会社員時代は副業禁止、の規則を愚直に守った為、その期間の労働余力を市場に提供することが叶いませんでした。しかしながら、本当に人手不足なのであれば、高校生/大学生年代の労働要件緩和や、会社員の副業・複業の解禁を後押しすればいいと思います。

適材適所・効率化分業の観点から、家事労働にも市場経済を導入すべしとの意見もあり、実際に進みつつあります。家事労働は、統計上労働にはカウントされません。生きていく上で不可欠で、本来は社会的価値のある、炊事・洗濯・掃除などの家事労働が、経済的に無価値という扱われ方をすることはおかしいのではないか、という気持ちがあります。

優れた炊事・洗濯・掃除能力を持つ人が、対価を受け取って家事労働を引き受ける…… 子育て能力に長けた人が有償で育児労働を請け負う…… 結果、苦手な家事労働から解放された専業主婦は労働市場で力を発揮する…… といった社会全体での効率化を進める施策も一考でしょう。家事労働を有給活動化すれば、経済統計的にはGDPアップにも寄与します。

ただ、あまりにも経済価値最優先という批判もあるかもしれません。かくいう私も、家事労働能力の優劣を金銭価値に反映する(=市場経済に組み込む)という考え方には違和感があります。あらゆることがスコア化され、その高低によって人格評価される社会は嫌です。

分人

労働人口って何だろう、と思索を拡げている最中に思い浮かんだのが、『分人(ぶんじん)』という考え方です。

『分人』とは、作家の平野啓一郎氏(1975/6/22-)が『私とは何か――「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書2012)という著書で提唱され、話題になった考え方です。

人間は分割不可能な個人(individual)ではなく、複数の分割可能な存在(dividual)である。

近代思想は、『個人』を単位に構成されています。『個人』を、それ以上は切り刻めない最小単位として、組織や価値観や社会のルールが構築されていることに、時に不合理さと窮屈さを感じることがあります。

『分人』というは、考え方は、
生産者でもあり、消費者でもある私…… 
誰かの親でもあり、誰かの子でもある私……
公的な場で見せる顔と私的な場で見せる顔が違う私…
好きな人と嫌いな人とで態度を変える私……
に悩んだり、困ったりしている人たちに、一つの解決策を提示してくれているように思います。

『分人』思想を展開していった分人主義には、色々な批判があることも承知していますが、人口問題や経済政策を考える時に、『分人』という発想は、未来の経済政策を考える上で役立ちそうな気がしています。

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