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あの頃好きだった曲⓱:青葉城恋唄

あの頃好きだった曲シリーズの第十七弾は、さとう宗幸『青葉城恋唄』(1978)です。短時間の滞在だった仙台の街の余韻が微かに残っている間に、日本音楽史上屈指の美しい曲の一つ(と私は考えています)であり、後世まで歌い継がれて欲しいと願うこの曲の思い出を書き記しておこうと思います。


杜の都が舞台の抒情豊かな一曲

この曲は、当時NHK-FM仙台のラジオパーソナリティをしていた、さとう宗幸氏(1949/1/25-)のメジャーデビューシングルであり、110万枚を超える大ヒットとなりました。さとう氏の担当する番組に、リスナーの星間船一氏から送られてきた詩に、さとう氏が即興で曲をつけて製作されたものだとされます。

内容は、恋人との思い出を辿る失恋ソングで、季節は夏です。過去に二人で過ごした仙台の情景が彩りを添えます。抒情を誘うゆったりとしたメロディが、清潔感と爽やかさを醸し出しています。歌詞の一言一句が美しく、非の打ち所がありません。特に、サビ部分に登場する、『季節(とき)はめぐり、また夏が来て...』から連なる

①瀬音ゆかしき 杜の都
②葉ずれさやけき 杜の都
③吹く風やさしき 杜の都

青葉城恋唄(1978) 作詞:星間船一 作曲:さとう宗幸

という歌詞は抜群だと感じます。

美しい歌声だったさとう宗幸氏

当時29歳の無名の新人だったさとう宗幸氏は、長髪に口髭をたくわえた特徴あるスタイルだったものの、清潔感がありました。そして、やや高めの澄んだ歌声が見事でした。

当時小学四年生だった私は、木曜の21:00から放送の『ザ・ベストテン』で、この曲を覚えました。歌詞に登場する、広瀬川、杜の都、七夕まつり、青葉城、といった印象的なキーワードは、仙台を象徴することも知りました。(現在でも仙台に関する知識は、そこからさほど増えておりません)大相撲に、長く伸びたもみあげと胸毛が特徴的だった「青葉城」(元関脇 青葉城幸雄 仙台市出身)という名の力士がいたこと、「唄」を(うた)と読むということを学んだこと、など、記憶が甦ってきます。

この曲の大ヒットで一気に全国区となったさとう宗幸氏は、その後役者業でも活躍しました、代表作は、主人公の国語教師、伊達仙八郎を演じた『2年B組仙八先生』(1982)やNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』(1987)での支倉常長役です。現在も地元仙台では、絶大な人気があるようです。

歌い継がれて欲しい一曲

もう、日本の音楽シーンからこういう曲は生まれないだろうな…… という気がしています。そういう意味で、大事に歌い継がれて欲しいと思うし、若い世代の人たちにも受け継がれて欲しい曲です。

この曲を聴くと、心が洗われるような感覚に毎回襲われます。歌詞もじっくり聴き込むし、サビでは自然に口ずさみます。40年以上も私の心に止まり続ける思い入れのある一曲です。

先週末に折角仙台を訪れたのに、うっかりしていて、肝心の広瀬川の光景を目に焼き付けず、ゆっくりと瀬音も聞かずに帰ってきてしまったことを、今激しく後悔しています。

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