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『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』に心惹かれる理由を考えてみた

長い間テレビ東京系で放映され、人気テレビ番組だった『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』に今さらながら嵌まってしまいました。その理由について、考察してみました。

嵌まりました…

ここ数日、amazon primeで『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』を観て楽しんでいます。太川陽介・蛭子能収のレギュラーコンビに、マドンナ役の女性ゲストが加わった三人組が、ローカル路線バスだけを乗り継ぎ、出発点から三泊四日で指定された目的地を目指す人気番組でした。

2007年10月の第1回から2017年1月の第25回まで放送されました。現在amazon primeでは、第3回(函館駅~宗谷岬)、第5回(日光駅~松島普賢堂)、第7回(青森港~新潟市万代シティバスセンター)、第8回(三条大橋~出雲大社)、第9回(出雲市駅~枕崎)、第10回(徳島駅~鳴門)、第12回(松坂駅~松本城)、第15回(米沢~大間崎)、第19回(京橋~兼六園)の8回分と映画化された台湾編が見放題になっています。

嵌まった理由を考えてみた

私が、この番組にすっかり嵌まってしまった理由を考えてみました。

● 不便が設計されている
● 出演者のキャラクターが魅力的である
● 予定外に振り掛かる苦難と喜びの連続に共感する
● 立ち寄った街の観光情報が楽しめる
● 路線バスの旅は、人生とかぶる

それぞれについて、考えてみます。

不便の設計

ローカル路線バスの旅のルールは以下の通りになっています。

ルール①
移動は原則としてローカル路線バスのみを使用。高速バス、タクシー、鉄道、飛行機、船、自転車、ヒッチハイクなど、他の交通機関の利用は禁止!
ルール②
目的地へ向かうルートは自分たちで決める。情報収集でインターネットを利用することは禁止!紙の地図や時刻表、案内所や地元の人からの情報のみ使用OK。
ルール③
3泊4日で指定の目的地にゴールすること。旅はすべてガチンコ。ルートだけでなく、撮影交渉も自分たちで行う。
ー 番組サイトから引用

インターネットでの情報収集が禁止されているので、紙の地図と現地で出会う人たちからの口コミ情報だけが頼りです。あえて不便な制約を作って、現地で出会う人たちとコミュニケーションをとるしかないようにルール設計されています。

魅力的なキャラクター

行き当たりばったりの旅なので、出演者のキャラクターやアドリブ対応力が大きく影響します。

機転が利くリーダーの太川さんと自由奔放でゲスキャラの蛭子さんの凸凹コンビは秀逸で、この二人だからこそ出せる面白い雰囲気が充満しています。ナレーション担当のキートン山田さんもいい感じで盛り上げてくれます。

まず、二人共に真の悲壮感がありません。根っこに明るさがあるので、予想外の苦難に直面した時の困った表情や、あてが外れて怒った時の表情に共感でき、ついつい応援したくなります。毎回変わるマドンナも、良いアクセントになっています。

私は、同行者をイラっとさせる自由な言動や行動をする蛭子さんに、自身の姿を投影してしまいます。太川さんは、引率者・保護者役がぴったりで頼もしいリーダーです。番組を引き締め、バラエティとして成立させているのは太川さんの力が大です。太川さんが、一日の旅を終えて、ビールを美味そうに飲む姿には、ほっこりさせられます。

想定外の苦難と喜びの連続

命に関わるほどのシリアスな苦難ではないので、視聴者も一緒に耐えようと思えます。路線バスが途絶えている区間は、徒歩でクリアしなければなりません。炎天下、土砂降りの雨、強風、大雪の悪天候の中を、自分も一緒に歩いている気分になります。

途中見事な風景に出会ったり、親切で温かい人たちに助けられたり、目標を達成して喜んだり、繰り広げられる名シーンに共感して嬉しくなります。編集の仕方も巧いです。旅の途中のエピソードが程よく、バランスよく詰め込まれています。

観光情報

バスの乗継時間の合間に訪れる場所も、この旅の魅力です。ローカルバスが効率良く繋がることは稀なので、次のバスまで数時間待つこともザラです。

景勝地ばかりではなく、偶然立ち寄る店や町並みがいい感じです。自分の知らなかった日本を発見する楽しみがあります。自分の意図しない場所で意図せず過ごすのは贅沢な時間だと感じます。

路線バスの旅は人生

最大の魅力は、路線バスの旅が人生そのものと感じさせてくれることです。

人生という旅は、どんなルートを辿ったとしても、最後には「死」という最終目的地に辿り着きます。どんな人もこの世に生まれ落ちた瞬間、好むと好まざるとにかかわらず、将来必ず訪れる「死」へと向かって、与えられた残り時間を減らすための旅に踏み出していきます。

生きていく過程で、幾つかの目的地が現れます。自分で設定した目的地も、他人に設定された目的地も、偶然に辿り着いた目的地もあるでしょう。多くの人と出会って、束の間交わって、やがてすれ違います。そこへ辿り着くためのルートや歩み方は、自分で決められる場合も、決められない場合もあるでしょう。

私は、人生後半戦はローカル路線バスを乗り継ぐような生き方がしたいと考えています。乗り継ぎが悪くて、何時間も、何日も、何ヶ月も、何年も同じ場所に止まることになっても、その待ち時間すら愉しめるだけの懐の深さと鷹揚さを持っていたいものです。

事前に立てたルート設計図や時刻表を参考にはしても、臨機応変に工夫したり、時には大きな流れに身を任せたり、方針変更で寄り道をしたりしながら進みたい。この番組に嵌るのは、私の人生の歩き方の理想に近いものを感じ取っているからかもしれません。


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