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『日本を追い込む5つの罠』を読む

本日は、カレル・ヴァン・ウォルフレン『日本を追い込む5つの罠』(角川oneテーマ21 2012)の読書感想文です。

著名なジャーナリストであるウォルフレン氏が、日本に迫る5つの罠について解説する書です。「一度罠に嵌ったら抜け出せない」ということばが意味深です。丁度10年前に刊行された本ですので、当時の記憶を振り返る機会にもなりました。


①TPP

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)については、その後の顛末(アメリカの不参加)を知っているため、ウォルフレン氏が本書で指摘されていた危険性は薄まっている気もします。

私は、仕事の関係で貿易制度も担当していた時期があり、TPPも当時の空気感を思い出しました。自由貿易体制は力の強い側が圧倒的に有利になる仕組みだということを感じました。

②財政緊縮

欧州の金融危機の問題は、血祭りにあげられた形のギリシャの窮状が連日報道されていたことを思い出しました。日本でも依然として『財政均衡を達成課題にしなければならない』という思い込みは根強くあります。

日本政府は、自民党が民主党から政権奪回し、アベノミクス(功罪相半ばしますが)を展開したことで、緊縮財政の流れは断ち切られました。

③脱原子力への反対勢力

ウォルフレン氏は、脱原子力発電の積極推進派で、太陽光発電の可能性に過剰な期待を寄せているという印象を持ちます。東日本大震災時の福島原発の事故の記憶も新たなので、日本全体に原発への恐怖感は消えていません。

しかしながら、現実問題として、電力問題への対処候補に再び原子力発電が浮上してきています。

④対米隷属に苦しむ沖縄

なかなかに深い考察です。もう長らく今の状況が続いているので、対米隷属しているという自覚が薄れています。その皺寄せを沖縄が引き受けているという自覚が、自分自身も薄いことを改めて自覚させられました。

日本には、国(nation)はあるが、国家(state)がない、という指摘も深く考えるべき問題だという気がしました。

⑤権力への無関心

これも深く考えるべき問題であり、本書の書かれた時期よりも、今の方がより深刻な状況になっているかもしれません。日本は変化を拒む、緩慢に国益を喪っているのは感じられるところです。

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