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『西村京太郎の推理世界』を読む

本日は、オール讀物責任編集『西村京太郎の推理世界』(文藝春秋2022)の読書感想文です。

今回も副反応なし?

昨日は三回目のワクチン接種だったので、副反応に見舞われることを想定して、本日は一切予定を入れず、自宅静養日として確保していました。ところが、接種から30時間以上経った今でも、発熱や倦怠感はなく、接種箇所が重いくらいで済んでいます。過去2回と同じような感じです。特異体質なんでしょうか…… それとも既に強力な抗体を宿しているのでしょうか…… あるいは免疫系がおかしいのか…… と変な心配をしてしまいました。

昼過ぎには外出する元気もあったので、近所の本屋に立ち寄り、何冊か買い込んできたうちの一冊が本書です。今年3月に91歳で逝去された、日本を代表する推理小説家、西村京太郎氏の追悼特集です。遅かれ早かれ発売されるだろうと考えていたので、書棚に見つけて即買いしました。永久保存版です。

久々に読んで、その筆致に感服

過去の対談集やインタビュー記事、生涯刊行した全647冊の作品リスト、絶筆となり今夏発売予定の『SL『やまぐち』号殺人事件』の一部などが収録されています。

また、第2回のオール讀物推理小説新人賞受賞作である『歪んだ朝』の全文掲載と選考委員を務めた有馬頼義、高木彬光、水上勉、松本清張各氏の選評、過去にオール讀物に発表された作品からの傑作選として、

美談崩れ(1965年9月号)
見舞の人(1967年3月号)
夜行列車「日本海」の謎(1982年12月号)
事件の裏で(1983年7月号)

が再録されていて、一気に読み通してしまいました。小気味いテンポでスト-リーと心理描写が進んでいく感覚が、昔読み進めていた頃のままでした。改めて、さすがの筆力だと脱帽致します。

綾辻行人✕有栖川有栖 「僕らの愛する西村作品ベスト5」

本書収録のこの対談は、かなり面白いです。私が追悼記事で、氏のベスト5に推した『殺しの双曲線』『名探偵が多すぎる』を、お二人も選んでおられることを嬉しく思いました。

本書を偶然発掘できたことで、西村作品が群を抜いて面白いことが再認識できました。

私からは最後、西村さんが常に弱い人の側に立って小説を書いてきたということを指摘しておきたいと思います。(中略)
この「強い側には厳しく、弱い者には優しい姿勢は、デビュー作から最近の歴史や戦争のテーマを溶け込ませたトラベルミステリーに至るまで、背骨として一貫しています。
P66-67 有栖川

には、全く同感です。私自身はミステリー小説の熱心なファンではなく、知識や素養の蓄積は小さく、作品の出来栄えに口を挟めるような手合いではないものの、西村氏のこの価値観には強く影響を受けていると思っています。

裏面のことば

冊子の裏面には、西村京太郎氏がしたためたと思われる十津川警部のことばが配置されていて、考えるものがあります。

人生は愛情と友情と裏切りで成り立っている

そうかもしれない、と今ならしみじみ思います。


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