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金曜日の随筆:題名を考える~『増補版ぐっとくる題名』を読む

また運命を動かしていく金曜日がやってきました。2021年のWK14、卯月の壱です。本日の読書感想文は、タイトル(題名)に関する秀逸な分析が勉強になるブルボン小林『増補版ぐっとくる題名』です。

ブルボン小林氏とは?

『ブルボン小林』は、小説家、漫画家、俳人、同人作家としても活躍する長嶋有(ながしま ゆう、1972/9/30- )氏がコラムニストとして活動する際のペンネームです。

本名の『長嶋有』名義の作品で、文學界新人賞(2001)、芥川龍之介賞(2002)、大江健三郎賞(2007)、谷崎潤一郎賞(2016)と数々の受賞歴があり、「サブカルチャーの教養をベースにした純文学作家(Wikipedia)」と評される奇才です。

コラムニスト『ブルボン小林』氏の得意分野は、漫画やゲームなどのオタク系です。内容の記述に無駄がないし、起承転結の付け方はうまいし、ことばの選び方が鋭いです。俳人の素養が影響しているのでしょう。

本書は、だいぶ前に購入して積ん読になっていました。プチ旅行中の電車の中で読み始めたら、面白くて一気に読了してしまいました。

題名に悩む人への解説書

毎日noteを書き続けるにあたり、題名の付け方はいつも迷います。私は最初に題名(仮題)を決めたら、段落構成もオチも考えずにどんどん書き連ねていき、後で整える書き方をします。

途中で話の展開がブレていって、書き終えた後に題名を修正することもたびたびです。ただ、きっかけの題名すら思い浮かばない時は、さっぱり書き進めることができません。

私は文章の題名を、これから書き進める文章のざっくりとした『テーマ』だ、と考えていました。題名探しが、そのまま書くべきテーマ探しになっているのです。

本書の「はじめに」で、こう紹介されています。

企画書や小説、それ自体の書き方を指南した本はこの世にいくらもあります。だけど、その入り口にして、そのものの顔でもある「題名」を考察した本がない。《略》どういった題名が心に残るのか。また、心に残る題名には、どのようなテクニックが用いられているのか。僕は真剣に考えてみることにしました。その思考の集積がこの本です。(P12-13)

自分では意識していなかったことが多く、最適のレッスン書でした。この本が広告代理店やテレビ局で働く人たちに人気というのもわかります。

読み物としても、実用書としても

本書は、

第1章 ロジック篇
第2章 マインド篇
第3章 現場篇

の三章構成で、題名の付け方の基礎知識が学べる第1章が特に役立ちます。小見出しを読むだけでも、注意すべきポイントが整理できます。さすが、「題名」の評論なので、ここにも配慮が生き届いています。

①助詞の使い方
②韻とリズム
③言葉と言葉の距離(二物衝撃) … 個人的なおススメ
④題名自体が物語である
⑤濁音と意味不明な単語
⑥アルファベット混じりの題名
⑦古めかしい言い方で
⑧命令してみる
⑨パロディの題名
⑩関係性を言わない

ここで解説されている内容は、今後何度も読み返して確認することになるでしょう。モノを書く仕事に従事する人なら、知っておいて損のない内容ばかりです。教科書的に使えます。もちろん読み飛ばすだけでも面白いです。

人に向き合ったかどうかが題名に出る

私は、読む本や買う商品を、「題名」で決めることが多いです。

「名は体を表す」と言います。どんなに内容が素晴らしくても、響かない「題名」をつけてしまうと、そもそも気に止めてもらえないし、マイナスハンデを背負ってのスタートとなってしまいます。それは残念なことです。フックの役割を担う「題名」はすこぶる重要です。

カクテルも名前が大切です。見た目は凄く美味しそうなのに、カクテル名がイマイチと感じると興醒めします。意味を凝り過ぎて、音の響きが軽視されていたり、名前と内容が吊り合っていなかったり、手垢がつき過ぎたありふれた表現だったりすると食指が伸びません。

時間に追われる読者は、忍耐強くないので、題名のセンスの良し悪しの差が大きな差を生みます。人への優しさを発揮していない作品や商品は苦しいということかもしれません。

今週の格言・名言《2021/3/29-4/4》

Your life purpose sets your free.
人生の目的は、人を自由にする
Imagination is more important than knowledge. For knowledge is limited, whereas imagination embraces the entire world.
- Albert Einstein, Phisicist/Germany
想像力は、知識よりも大切だ。知識に限界がある。想像力は、世界を包み込む。ー アルベルト・アインシュタイン 物理学者/ドイツ


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