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Markover 50 の読んだ本

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Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
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2021年9月の記事一覧

あの人が教えてくれるもの⑨:筒美京平

『あの人が教えてくれるもの』シリーズの第九弾は、昨年誤嚥性肺炎で亡くなった作曲家、筒美京平(本名:渡辺栄吉 1940/5/28-2020/10/7)です。近田春夫『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』(文春新書2021)を読んで、大いに触発されたので、記憶に強く刻む為に、今ほやほやの湯気が立ち昇る状態での気持ちをこの記事に残しておきます。 謎に含まれた希代のヒットメーカー日本人に生まれ、日本で暮らした人で、筒美作品を一度も聴いたことがない、という人はおそらくいないと思います。

『自由と成長の経済学』を読む❹

本日は、自分なりに丹念に読み進めた内容を、過去3回にわたって読書ノートを書いてきた柿埜真吾『自由と成長の経済学』(PHP新書2021)の真骨頂とも言える第7章を取り上げます。最終回です。 第7章 新しい隷従への道ー『人新世の「資本論」批判』(P143-199)この章が本書のメインパートです。「脱成長コミュニズム」を提唱して、一気に知名度が上がり、引っ張りだこになっている感のある斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』(集英社新書2020)を、ぶった斬りにしてやる、という並々ならぬ

『自由と成長の経済学』を読む❸

本日は、旅の紀行文などを挟んで中断していた柿埜真吾『自由と成長の経済学』(PHP新書2021)ノートの第三回、第4~6章です。 第4章 社会主義は反動思想(P83-103)この章では、「社会主義の正体は、市場経済社会に対する反動思想」という主張が展開されます。柿埜氏は、 実は社会主義や共産主義も、持続的経済成長という事件の衝撃に対する反動から生まれてきた思想なのである。(P86) と断言しています。この世界の富は一定のゼロ成長社会を前提に、誰かが豊かになる=誰かが貧しく

旅の記録2021:③宇部 9/16-18

島根・山口を巡る旅の三日目、予期せぬ”おまけ”です。 宇部新川 PartⅡ台風14号の日本列島直撃によって、昨夜(2021/9/17)予約していた羽田行きのフライトの欠航が決定してしまいました。翌日(2021/9/18)昼のフライトに変更し、宇部新川のホテルを手配しました。 観光や食事を楽しめる状況ではないので、ホテルに引き篭もっていました。テレビやネットで台風の針路を逐次チェックしつつ、酷い自然災害が起こりませんように、と祈りながら、時間を過ごしました。 今朝目覚める

『自由と成長の経済学』を読む❷

昨日に引き続き、柿埜真吾『自由と成長の経済学』(PHP新書2021)の第2章・第3章の読書ノートです。 第2章 前近代の閉じた社会の道徳(P51-60)短い章なのでさらっと読み通しました。ゼロサムゲームが基本OSとなっている有史以前続いてきた「閉じた社会」が、資本主義が起爆剤になって「開かれ、拡大(プラスサム)していく社会」が到来した、という見立てに異論はありません。 「脱成長」は「閉じた社会」への逆戻りを意味する、そんな社会を果たして望みますか? というメッセージとして

『自由と成長の経済学』を読む❶

本日は、柿埜真吾『自由と成長の経済学』(PHP新書2021)の序章・第1章の読書ノートです。大ベストセラーとなっており、私も大いに共感している斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書2020)と対極の立場から批判する本も読んでおこうという趣旨で手にした本です。 脱成長+コミュニズム と 経済成長+競争的資本主義斎藤幸平氏が2020年に発表した話題の書『人新世の「資本論」』で提示されている『環境問題への視座=SDGsの嘘』『マルクス主義』『脱成長コミュニズム』に各所から共感

『45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』を読む

本日は、木下紫乃『45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP2020)の読書感想文です。 「昼スナック」紫乃ママに相談!会社員時代、特に30代から40代前半までは、大量のビジネス書を購入して、せっせと読んできました。このような感じの本も、過去に数冊は読んでいると思います。 ビジネスの世界から距離を置くようになって以降は、ビジネス書を読む効用は、悩んだり、疲れたり、傷んだりしている心にビタミン注射をするようなもの、という結論に至り、買うことを極力控えていました

構造主義の土台 マルクス・フロイト・ニーチェ

先日から読み始めた内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書2002)を無事読了しました。内田氏の記述は期待通り見事で、理解の難しい内容でも楽しく読み通すことができました。 構造主義が登場してくる上での思想の土台となっている、マルクス・フロイト・ニーチェを簡潔に扱っている『第一章 先人はこうして「地ならし」したー構造主義前史』(P16~58)の読書ノートを残します。 いずれ劣らぬ思想史上の巨星なので、今後何度か彼らの遺した思想や業績に触れ直す機会もあるでしょう。自分の手を