神意にこたえ、水音を止めた「アジメドジョウ」 - 『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第二十六回)』
「神使」「眷属」とは、神の意思(神意)を人々に伝える存在であり、本殿に恭しく祀られるご祭神に成り代わって、直接的に崇敬者、参拝者とコミュニケーションを取り、守護する存在。
またの名を「使わしめ」ともいいます。
『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界』では、神の使いとしての動物だけでなく、神社仏閣に深い関わりのある動物や、架空の生物までをご紹介します。
動物を通して、神社仏閣の新たなる魅力に気付き、参拝時の楽しみとしていただけたら幸いです。
神使「アジメドジョウ」
皆さんは、「アジメドジョウ(味女泥鰌)」をご存知でしょうか。
アジメドジョウは日本の固有種で、近畿地方や中部地方の透明度の高い河川の上中流域に自然分布する淡水魚です。
昨今、ダムや砂防堰堤の建設や、水質の悪化により生息数が減少しており、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。
このアジメドジョウを神使とするのが岐阜県高山市の「飛騨一宮水無神社」です。
高山市の市街地を流れる宮川(下流は神通川)。
飛騨高山のシンボルともいえる赤い中橋がかかり、周囲には古い情緒豊かな町並みや、賑やかな朝一が開かれる通りなどがあります。
この中心地から数kmの上流そばに位置するのが水無神社。この社前から、さらに上流域にかけては、川の流れはほとんどなく伏流水となっています。
これには、こんな理由があるのです。
ある時、水無神社のご祭神「水無大神(ミナシノオオカミ)」が、宮川を隔てた対岸にある寺の和尚の説教を聞こうとしていましたが、寺の前を流れる宮川の川の音がうるさくて、説教が聞き取りづらく困っていました。
すると、宮川に住むアジメドジョウたちが、神様のお役に立ちたいと一斉に川底にもぐって、豊富な川の水を地下に導き、伏流水に変えてしまったのです。それ以来、アジメドジョウは水無神社の神使となったのでした。
このことによって、宮川上流の水量は減り、静かになりました。また、村人たちはアジメドジョウを捕ったり、食べることをしなくなったといいます。
水無神社の「水無」は、「水主」つまり、川の水源を司る神という意味があります。
宮川(神通川)」の水源である飛騨の霊峰「位山」には、古代人に関わる遺物であるといわれる謎の巨石群が点在しています。
その巨石に一つに「天の岩戸」と呼ばれるものがあり、これが水無神社の奥宮となっています。また、位山そのものが水無大神の御神体であるともいわれています。
水無大神は、農作物に実りをもたらす「作神様」として信仰されるほか、養蚕・畜産の守護神、延命長寿の守護神としての高いご神威があるとされます。
位山はUFOが飛来する山としても知られ、多くの観察者が訪れています。また、古代文明との関係も示唆され、スピリチュアル的にも意味深いパワースポットです。
アジメドジョウと所縁ある神社
参考文献
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