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【明晰夢で人生を豊かにする!②】睡眠と夢の構造 〜 夢を覚えておくためには?〜

2018年公開記事を再構成しています。

前回は、私が「夢」への関心を深める契機となった、数々の不思議な夢をご紹介しました。

第二回となる今回は、「人はどのようにして夢を見るのか」について、お話をいたします。


睡眠と夢

同期性活動

睡眠中の脳は「同期性活動」と「脱同期性活動」という2つの基本モデルの間を往復しています。

「同期性活動」とは睡眠中にのみ現れるもので、ニューロン(神経細胞)が互いに調和を持って同期的に発火している状態のことを指します。

*ニューロン・・・情報処理と情報伝達に特化した電気信号を発する神経系を構成する細胞

ニューロン(神経細胞)

​​上がニューロン(神経細胞)のイラストです。

緑色の部分は細胞体といい直径3〜18マイクロメートルの大きさです(1マイクロメートルは0.001ミリメートル)。

左側のオレンジ色の枝葉のように分かれた部分を「樹状突起」といい、枝葉に分かれた部分から、さらに枝葉が分かれて、多い場合で数千から数万もの「樹状突起」が形成されて行きます。

この「樹状突起」は「入力」の役割を担います。

右側のオレンジ色の枝葉は「軸索」といい、「樹状突起」とは反対に「出力」の役割を担っています。

この「軸索」が他のニューロン(神経細胞)の「樹状突起」と結合し、出力された信号を受け取る(入力)ことになります。

この結合部分を「シナプス」と呼びます。

ニューロン(神経細胞)の発火とは、ニューロン(神経細胞)同士の情報のやり取りに於いて生じる電気信号の変化(膜電位の急上昇)をいいます。

同期性活動では、このニューロン(神経細胞)が調和したリズムで、同期的な電気信号の変化が見られるということですね。


脱同期性活動

一方の「脱同期性活動」とは夢を見ているときのものです。また同時に覚醒時にも脳は「脱同期性活動」を行なっています。

つまり、夢を見ているときというのは、脳が活発に活動しており、この状態は目が覚めているときと何ら変わらない状態にあるということでもあります。

ニューロン同士、異なった場所同士で相互に活発な情報交換をし、連絡し合っている状態です。

「同期性活動」でのニューロンの発火は調和の取れた同期的な発火ですが、「脱同期性活動」では、まちまちのタイミングの異なった発火をしていると考えれば良いでしょう。


睡眠の四つの段階

さらにこの同期性(同期性活動)のレベルによって睡眠は四つの段階に分類されます。

第一段階:これは軽い同期の状態であり、入眠期といわれ、いわゆるウトウトした状態です。脳波ではθ(シータ)波とβ(ベータ)波が現れます。

第二段階:入眠時で意識がなくなった時を示します。

第三段階:同期性が高い段階です。深い睡眠に入っており、強い刺激でなければ知覚出来ません。

第四段階:同期性がさらに高まった状態です。脳波ではδ(デルタ)波が顕著となります。

この四つの段階を称して「ノンレム睡眠」といいます。

この「ノンレム睡眠」と対を成すのが、上記の第一段階の脳波パターンに類似した「REM睡眠」です。

身体は完全に弛緩していますが、脳は覚醒して活動状態にあります。

ただしこの時は急速眼球運動(Rapid eye movement)といい、眼球が小刻みに動いている状態にあります。この「REM睡眠」時に夢を見ることが多いのです。


一晩の睡眠中、この四つの段階+「REM睡眠」が90分周期で繰り返されることになります。

布団に入り、寝返りを打ったり、より良い姿勢で眠ろうと身体を動かします。その内に徐々にウトウトとし覚醒と睡眠の中間を心地良く彷徨います。

これが上記の第一段階です。第二段階へ至ると、完全に睡眠状態となります。この時に脳内のニューロンは同期を始め発火しています。

この第二段階は10〜20分ほど続き、より深い第三段階の睡眠状態へと移行します。第三段階までは通常45分から60分かけて達します。

その後、第四段階を経た1時間から2時間後に、徐々に浅くなり「REM睡眠」へと至ります。


順番で言いますと「第一段階」→「第二段階」→「第三段階」→「第四段階」→「第三段階」→「第二段階」→「第一段階」→「REM睡眠」となり、この周期が90分間隔で繰り返されることになるのです。

このことから6時間睡眠では「REM睡眠」は4回、8時間睡眠では5回となります。

​上の睡眠ステージの推移を表したヒプノグラムからも分かる通り、時間を経る毎に睡眠周期のパターンは徐々に形を変え、夢を見ている時間(REM睡眠)は後になるほど増えています。

同時に第三段階と、第四段階の時間が短くなっていることも分かります。


上のヒプノグラムでもう1つ分かることがあります。縦軸の「REM睡眠」の上は覚醒時、つまり起きている時を表していますが、睡眠周期の中にありながら覚醒を示している部分が2ヶ所あります。

これは必ず「REM睡眠」の後に起こる現象で、実際に目を開けて覚醒している訳ではありませんが、脳波上では覚醒を示しています。

さっきまで見ていた夢をハッキリと覚えているのは、このタイミングで起きた場合です。つまり「REM睡眠」直後(または「REM睡眠」中)に自然に起きた場合に夢を覚えていることが多いのです。

夢を覚えていられないのは、この睡眠周期に逆らったタイミングで目覚まし時計や、外の騒音や雑踏、人の声などの外的刺激によって覚醒させられる場合です。

人はこの睡眠周期に則って自然に起きることが出来るのですが、この論理で言うと夢を効率よく覚えていたい場合には、起きたい時間から逆算し、90分周期を何倍にした時間に就寝するか決めれば良いということになります。

勿論、長い時間眠りにつけば、それだけ長時間、夢を見ることが可能です。

しかし、鬱病などの心の病、ナルコレプシーなどの睡眠障害があれば、この90分の睡眠周期は短くなり、30分ほどで「REM睡眠」が現れることになります。


「睡眠」と「夢」の関係とメカニズムについて少しだけ理解出来たところで、次回は "他者と同じ一つの夢" お互いに見ることが出来るという、不思議な「夢の共有」というお話をしたいと思います。

どうぞ、お楽しみに!

参考文献

「明晰夢 夢見の技法」スティーヴン・ラバージ著
「みたい夢をみる 明晰夢の技術」チャールズ・マックフィー著
「ドリーム・テレパシー」M・ウルマン+S・クリップナー+A・ボーン著
「夢を操る - マレー・セノイ族に会いに行く」大泉実成著
「臨死体験」立花隆著


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