マリオン

主に映画の感想を書いていくと思います。

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最近の記事

2020年映画ベストテン

今年も残すところあと数日…12月といえば映画ファンがそれぞれの年間ベストを発表して今年を懐かしみ、来年に公開する映画を楽しみしながら年を越していくものだ。ただ今年はあまり無邪気に盛り上がるのは難しいかもしれない。新型コロナウイルスによってもたらされた世界的な混乱が未だに終息する気配が見えない中、映画業界も大きな変化に飲まれていった。製作側は思うように映画製作が出来なくなったし、緊急事態宣言の発令により興行側も観客側も大きな空白が生まれた。またハリウッド大作は一部を除いて延期や

    • 7月に見た映画②

      だいぶ時間がかかってしまいましたが引き続き7月に見た映画の感想を書いていきたいと思います。例によってネタバレしていますのでご注意ください。 7月に見た映画①はこちらです。 WAVES ウェイブス フランク・オーシャンやカニエ・ウェストなどの人気アーティストによる素晴らしい楽曲や鮮やかな色彩に包まれた青春映画かと思いきやトレイ・エドワード・シュルツらしい愛憎入り混じる家族の物語だった。誰からも愛されていた兄が厳格な父からのプレッシャーや黒人として生きる事の厳しさ、大きすぎ

      • 7月に見た映画①

        まだ梅雨も明けていないというのにもう暑さと湿気でヘトヘト気味になってきました。しかもマスクまでつけないといけないのが本当にうっとおしくて仕方がない…そんな7月に見た映画の感想をまとめて書いていきたいと思います。場合によってはネタバレもありますのでご注意ください。 SKIN スキン(短編) 肌の色で何かを分けようとする事が如何に無意味であるか、そして差別による憎悪の連鎖が今もなお続いている事実を端的かつえげつない程ショッキングに描いていく寓話のような短編映画。白人至上主義者

        • "見えない悪意はそこにある" 透明人間 (2020) (ネタバレレビュー)

          ある真夜中、オーシャンビューの綺麗な豪邸で女は目を覚ます。横には彼氏と思われる男が寝ている。こんな綺麗な豪邸で暮らす2人はさぞかし順風満帆なのだろうかと思いきや、彼女の顔は不安と恐怖でいっぱいだった。その後、彼女は音を立てないように準備していた荷物を持って豪邸から出て行く。彼氏を薬で眠らせた上で、スマホと連動した監視カメラで監視するという細心の注意を払って…。 この冒頭のあらすじだけを読んでH・G・ウェルズのSF小説やユニバーサル・モンスターズに登場する名キャラクターである

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        • 映画感想
          5本

        記事

          "彼女が感じた世界と僕の後ろめたさ" はちどり (ネタバレレビュー)

          ハチドリという鳥は鳥類の中で最も体が小さく、刻々と変化する環境下でも長時間高速飛行やホバリングが出来るように高い空間認識能力と代謝を持っているのだとか。中学2年生の女の子の日常を描く「はちどり」はそんな鳥の名前からタイトルが付けられている。確かに日常を精一杯に生き、世界から放たれる全てを感じようとするあどけない女の子の姿はまさしくハチドリのようだ。そんなハチドリのような彼女は何を感じながら生きていたのだろうか?その問いにキム・ボラは彼女の視点に寄り添って描き出していく。 1

          "彼女が感じた世界と僕の後ろめたさ" はちどり (ネタバレレビュー)

          6月に見た映画②

          引き続き、6月に見た映画の感想の続きを書いていきたいと思います。例によってネタバレありですのでご注意ください。 6月に見た映画①はこちらです。 ヴァスト・オブ・ナイト トワイライト・ゾーン的な怪奇系ドラマシリーズの体裁を取りながら、深夜ラジオのような手触りを感じる唯一無二の魅力があるSF映画。どこか懐かしいSF映画のようにも見えるけど、デヴィッド・フィンチャーを彷彿とさせるグラフィカルさや町の規模感を実感させる長回しの使い方、電波に乗った声や音をきっかけに出会う事のなか

          6月に見た映画②

          "悲しみと怒りが渦巻く世界で…" もののけ姫 (ネタバレレビュー)

          僕にとって「もののけ姫」は小さい頃のトラウマの1つだった。当時、実家に「もののけ姫」のVHSがあったのだが、パッケージに描かれていたコダマが不気味で仕方なかった。そしていざ本編を見てみると冒頭に登場するおぞましい姿をしたタタリ神がとても恐ろしく、最後まで見る事が出来なかったのを覚えている。その後もテレビ放送で「もののけ姫」を見る機会は何度もあったのだが、今の今まで未見のままだった(これには色々理由があるので記事にするかもしれない) そんな中、スタジオジブリ作品のリバイバル上

          "悲しみと怒りが渦巻く世界で…" もののけ姫 (ネタバレレビュー)

          6月に見た映画①

          新型コロナウィルスの影響によって延期していた新作映画が続々公開され、少しずつ日常が戻ってくる兆しが見えたような見えないような…そんな6月に見た映画の感想をまとめて書いていきたいと思います。本当は見た映画1本1本にレビュー記事を書きたいところなんですがなかなか時間がないのが悩ましい…でも時間があれば改めて単体でレビュー記事を書くかもしれません。 ちなみに何度か見ている映画については触れません。初鑑賞の映画のみを取り上げます。そしてネタバレも気にせず書いているのでご注意ください

          6月に見た映画①

          "完璧という名の牢獄で断絶を叫ぶ" ルース・エドガー (ネタバレレビュー)

          もうこれで何度目だろうか。黒人男性が白人警官の過剰な暴力によって死亡させられた事件をきっかけにアメリカでは大規模な人種差別抗議デモが再び巻き起こっている。こういった痛ましい事件や抗議デモを見るたびに黒人達を取り巻く現状はあまりにも過酷で理不尽なものであると改めて実感させられるし、差別や人権問題は全ての人類に関わる問題だ。そんな最中に「ルース・エドガー」の公開が始まった。コロナショックによる延期によってこの時期までずれ込んだ訳だが、ある意味とてもいいタイミングだったのではないか

          "完璧という名の牢獄で断絶を叫ぶ" ルース・エドガー (ネタバレレビュー)

          "あらゆる生き方と人生に祝福を…" ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 (ネタバレレビュー)

          「なんか古めかしそうだな…」 これは僕が「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」を見る前に抱いていたイメージだ。若草物語は19世期のアメリカを舞台にしたルイーザ・メイ・オルコットの古典小説でこれまでに何度も映画化されているほど世界中で愛されている物語だ。ただ僕は若草物語を読んだ事はなかったし、映画化作品も見た事がなかった。だから若草物語の魅力や今作がアカデミー賞にノミネートされるほど絶賛されている理由もよく分かっていなかったし、そもそもなんでグレタ・ガーウィグが若

          "あらゆる生き方と人生に祝福を…" ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 (ネタバレレビュー)