📖#6 千年前の和風シンデレラストーリー『和泉式部日記』
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切なくて儚い和泉の立場
和泉ちゃんが弟宮に図々しく何かを要求したことはありません。
それなのに、悪い噂が流れてしまうのは「なんでセレブでもない普通の家の娘が、プリンスやたくさんの男たちから愛されてるのよ!」という周りからの嫉妬が原因だと思います。
弟宮がそんな噂を気にせず、和泉ちゃんを大切にしてくれればいいのに……。
すぐに噂を信じて、へそを曲げてしまう厄介なプリンスです。
しかも、またもアポなし訪問。
よりによって、まだ辺りが明るい夕方に来やがりました。
この時代、女性は家族以外の男性には姿を見せないのが常識。
ブラインド越しか、暗くてはっきりと分からないときにしか近くには寄りません。
それなのに、明るいうちにやってきて、和泉ちゃんのお顔とお体を見て、その後は訪れず。
和泉ちゃんが「私の顔にがっかりしちゃったの!?」と不安に思っても無理はないです。
初めて顔を合わせてから音信不通になったら、そう思うのは当たり前です。
現代の乙女だってそう思いますよね?
弟宮は「それが理由ではありません」って返事しましたが、じゃあ一体どんな理由なの!?
はっきり言いなさいよー!
和泉@石山寺
「こんな人生嫌だわ」と思ったのか、和泉ちゃんは七日ほど石山寺(滋賀県)にこもってお祈りすることにしました。
すると、すぐに弟宮からお手紙が来ました。
都にいるときは全然お手紙をくれなかったのに、遠くに離れた途端にお手紙が来るなんて不思議です。
近くにいるときや手に入れやすいときほど、人間は欲しいと思いませんが、遠くに行ってしまったり、手に入りにくくなると欲しいと思ってしまいがちですよね。
和泉ちゃん、強気ですねー!
これまで何かをしてほしいって要求したことはほとんどなかったのに、ここに来て必殺技を出してきましたね。
つまらない噂にびびってないで、弟宮が迎えに来いや!
弟宮の心にしっかりとダメージを与えられたようで、弟宮は寺まで迎えに行きたいと思いましたが、プリンスがおいそれと遠出できるはずもなく……。
迎えにいけるはずないのに何言ってるんでしょう、この皇子は。
和泉ちゃんが早く戻って来てくれたので、余裕ぶっこいてますねー。
それに対して、和泉ちゃんは一途ですね。
恋多き女性ですが、好きになった人には真剣な和泉ちゃんです。
この後、和泉ちゃんは弟宮を思ってさびしくしている秋の夜の切ない気持ちを、長々とお手紙に書いて送ります。
ところが、弟宮からのお返事は歌五首というあっけないもの。
短すぎる?
いえいえ、五首の歌はぜんぶ和泉ちゃんが詠んだ歌の初めの五文字と同じものを使ってくれていました。
短いけれどもセンス抜群!
さびしがってる和泉ちゃんのために、早くお返事を出してくれたのです。
「私もあなたと同じく、秋の夜を切なく過ごしてますよ」と。
お互いの気持ちが通じ合ってますね。
で・す・が!
このあと、弟宮は和泉ちゃんに、
弟宮「付き合ってる女性が遠くの国に行ってしまうから、この女性のために良い歌を私の代わりに代作してくれないかな。『こんなに素敵な歌をもらったのだから、心おきなく都を離れられる』と思ってもらえるような素晴らしい歌を頼むよ。あなたはとても歌が上手だから」
と、とんでもなく図々しい無神経なお願いをします。
いらっとしたけれど、和泉ちゃんはしぶしぶ美しいお別れの歌を詠んであげました。
弟宮はプリンスなので、甘やかされて育ったんでしょうね。
和泉ちゃんの代わりに、扇でひっぱたいてやりたいです。
続きます。
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