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📖#8 千年前の和風シンデレラストーリー『和泉式部日記』

↑の続きです。

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弟宮に散々「私のお邸にいらっしゃい」と誘われたけれど、不安いっぱいでなかなか決心出来ない和泉ちゃん。

弟宮はまたしても和泉ちゃんの悪い噂を信じて嫉妬したり(いい加減、学んでくださいよ、皇子)「私がこのまま出家してしまったらどうする?」と試すようなことを言って和泉ちゃんを泣かせてしまったり、歌を詠んだり、歌を詠んだり、やっぱり歌を詠んだりしながら月日が経ちます。

もうこのまま進展がないのか……と思いきや、ついに弟宮が重い腰をあげます!

弟宮「私が直接行って、和泉を私の屋敷に連れてこよう」

やっとのことで、決意して行動に移すことにしました。
(最初からお前が動けよ)


弟宮様がやってきて、いつものように「さあ、いらっしゃい」と、和泉に牛車に乗るようおっしゃいました。
和泉は今夜も弟宮様のお邸に行くのだと思い、一人で牛車に乗ろうとしたところ、侍女も連れてくるように言われました。

和泉(こんなことをおっしゃるのは初めてだわ。もしかして、今夜私を連れて行って、そのまま住まわせてしまおうと思っているのかしら)

和泉は優秀な侍女を一人乗せて出かけました。
弟宮様のお屋敷に到着すると、いつものお部屋ではなく、目立たないように侍女も置いて生活出来るように整えられた部屋に案内されました。
それから、和泉は身の回りの生活道具を使用人に運ばせると、そのお部屋でひっそりと暮らし始めました。

二、三日すると、弟宮様は正妻のいる北の建物に和泉を移しました。
当然、正妻とお仕えする女房たちは大激怒し、正妻は弟宮様に訴えました。

正妻「歌が上手いらしいですけど、男性遍歴がだらしない和泉式部とかいう女をお屋敷に入れられたのですね。どうして私に話してくださらなかったのですか。私にお話しされたからといって宮様を止められませんが、それでもこんなふうに世間から笑いものにされるのは恥ずかしいことですわ」

と泣く泣く言うので、弟宮様は、

弟宮「あなたも人の上に立つ立場の方なのですから、自分に仕える女房をちゃんと管理してくださいね。あなたの女房たちが、あなたのことを思うばかりに、私のことを憎んで誰も世話をしてくれないから、私の髪をとかしてもらおうと和泉を屋敷に呼びよせたのです。あなたも和泉に身の回りの世話をさせたらいかがですか」

とおっしゃるので、正妻はとても腹立たしく思いましたが、何も言いませんでした。

弟宮、強行突破!
和泉ちゃんを自分のお屋敷に連れてきて住まわせてしまいました!

やり方は強引ですけど、弟宮、やれば出来るじゃないですかー!

正妻や正妻にお仕えしている使用人である女房たちは怒りました。
そりゃあ、そうですよね。
夫の愛人と同じ建物に住むなんて地獄です。

弟宮が事前の相談もなく独断で決めてしまったことに、正妻はひどく傷つきますが、弟宮は謝りもなぐさめもせず、「あなたが使用人たちをちゃんと管理しないから私の世話をする者がいなくなってしまった」と正妻のせいにします。
この言い訳、無理がありますよねー。
弟宮が勝手に和泉ちゃんに惚れて連れてきたのを、正妻のせいにするなんてひどいです!

さらには、傷に塩を練り込むかのごとく「これからは私の世話は和泉にさせます。あなたの世話もするよう貸してあげましょうか」とか提案する始末。侮辱もいいとこですね。

自分は傷つきやすいくせに、正妻を傷つけるのは平気だなんて冷酷すぎ。


それから、和泉は少しずつお屋敷での暮らしに慣れていき、弟宮様は夜だけでなく昼も和泉を呼んで自分の世話をさせました。
少しの間も側から離れさせないほどの溺愛ぶりです。

弟宮様は正妻のところに、全然行かなくなってしまいましたので、和泉の悪口を言う使用人たちも出てきました。
和泉は正妻はますます自分のことを許さないだろうと不安に思いましたが、

和泉(それでも、私にはどうしようもできないわ。何も知らない態度を貫いて、宮様に従ってお仕えしよう)

と心に決めるのでした。

和泉ちゃんはやっぱり悪口を言われてしまいました。
超人気アイドルの恋人も、ファンからとてつもない嫌がらせを受けるらしいですし、ましてや和泉ちゃんの場合はイケメンなうえにロイヤルなプリンスなので、これは当然のなりゆきですね。

それでも、弟宮が昼も夜も傍において溺愛してくれるので、お屋敷に来る前よりも、和泉ちゃんの心は満たされています。

正妻への罪悪感はあるけれど、和泉ちゃんにはどうすることも出来ません。

正妻はとても身分が高い方でしたので、中流階級出身の和泉に、夫である弟宮様をとられてしまった上に、同じお屋敷に一緒に住んでいるなんて、屈辱的すぎて耐えられませんでした。
そんな正妻を心配して、正妻のお姉様(次期天皇の妻)から心配のお手紙が届きました。

姉様「いったいどうしたの。最近、世間の噂になっていることは本当なのですか。私まで恥をかかされたような気分です。人目につかない夜のうちに抜け出して、こちらにいらっしゃい」
正妻(お姉様にまで噂が広まっているなんて……)

正妻はなんとも情けない気持ちでお返事を書きました。

正妻「お手紙ありがとうございました。前からうまくいっていない夫婦関係でしたが、最近はみっともないことが起きてしまったので絶望しております。お迎えの牛車を寄越していただけますか。私もお邸を出て、もうこんな噂を聞きたくありません」

正妻は女房たちに必要なものをまとめさせて、お邸を出る準備をしました。

可哀想な正妻を心配して、高貴なお姉様が手を差し伸べてくれました。

自分の妹が、夫が連れ込んだ愛人と一緒に住んでいて、世間から笑いものにされていたら、姉としては何がなんでも助けますよね。

「そんな男とは別れなさい!」と言ってやりたいところですが、夫はこの国のプリンスです。簡単には離婚出来ません。
性格に難ありでも、身分としては最高クラスのイケメンなので我慢するしかありません。

弟宮様と和泉は、正妻が出ていく準備をしていると使用人から聞きました。
和泉は正妻のことを気の毒に思いましたが、原因を作った自分があれこれ口にすることではないので黙って聞いていました。

和泉(聞いていてつらくなるわ。私もほとぼりが冷めるまで実家に戻ってしまおうかしら)

と思ったけれど、自分がしたことを反省しているように世間に思われてしまうのは嫌だったので、そのまま弟宮様のお邸に留まりました。

和泉(宮様と深い関係になれて、ずっとお側にいられるにようになっても、やっぱり私は物思いが絶えない運命なのね)

和泉ちゃんの心は締めつけられましたが、それでも弟宮との恋を諦められませんでした。

ここで自分も実家に帰ってしまったら、世間からは「自分のしでかしたことを反省したのか。いい気味だ」と思われてしまいます。そんなのは嫌です。
こちらは悩みに悩み、相当の覚悟をもって、弟宮の傍にいることを選んだのですから。

あちらを選んでも、こちらを選んでも、悩みは尽きない恋愛をする和泉ちゃんなのでした。

弟宮様が正妻のお部屋に入ると、正妻は何事もないかの様子で座っていました。

弟宮「あなたが実家に戻ってしまうというのは本当ですか。どうして牛車の用意を夫である私に依頼してくれなかったのですか」
正妻「私が何かおかしなことをしましたでしょうか。実家からお迎えが来ただけのことですのに」

と答えて、それきり何もおっしゃいませんでした。

おわり

なんとびっくり!
『和泉式部日記』は、ここで終わってしまうんです!

最後は弟宮の正妻が出ていってしまうところで完結です。
うーん……なんとも消化不良。

日記はここで終わりですが、その後の和泉ちゃんと弟宮がどうなったのかは次回に。

続きます。


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