豆知識「セルフモニタリングの各項目の効果や意味」

【セルフモニタリングの各項目の効果や意味】

出来事
→モニタリングしたい状況から、なるべく自分の考えや感情を排除して事実のみを書くようにすることで、あるトラブル的な状況の中で何が自分の考え方の問題で何が事実の問題なのかを切り離して考えることができるようになる。事実だけ見たら大したことないようなことに過剰な反応をしていることがわかったり、過剰な反応をしてしまったと反省してるときによく事実を見てみたらそのくらいの反応をしても当たり前だったことがわかったりする。

思考
→ある事実に対して自分の中に自動的に生じた考えをなるべくリアリティ持ってたくさん書けるようにすることで、自分がある事実に対して本当はどう思っているのかを把握できるようになる。本当はどう思っているかを把握することで、どうしたら適切な思考になれるかを考える素材にできる。また、本当の気持ちは発散するところが日常の中では少なく、抑圧されがちなので、自動思考の中でなるべく思いっきり発散できたほうが、現実での行動が適切になりやすくなる。

感情
→ある事実に関して自分がどんな感情を持ちやすいか、その程度がどのくらい強いのかを把握し、記録することによって、問題となる状態になったとき、どの程度普段の自分とかけ離れているのかを数字で把握できる。また自動思考と感情が食い違うような場合には、何らかのモードが働いていることも予測できる。感情日記は毎日つけておくほうが、問題となる状態の自分の異常レベルが把握しやすい。また、何かコーピングを行った結果、最初よりも感情の程度が変化したなら、それも記録する。そうすることで、どのコーピングが有効か把握することができる。

スキーマ
→いいスキーマと悪いスキーマがあるので、どんなモニタリングのときも、一応どちらも当てはまるものがないか確認する。一見、問題行動に見える状態にもいいスキーマの影響があったり、一見良さそうな行動のときも悪いスキーマの影響があったりするから。
まずは日常のあらゆる場面いろんなパターンでモニタリングをして、自分がどんな時にどんなスキーマが活性化されやすいのか把握する。スキーマの把握は、その悪いスキーマはどんな中核的感情欲求が満たされていないから生じるのか、あるいは、いいスキーマはどんな中核的感情欲求が満たされたことで生じたのか考えるヒントになる。

モード
→モードは最も対人関係や社会生活や日常生活のトラブルを表しやすい。たとえば、怒りのモードを持つ人はそれが理由で人間関係が破綻しやすいし、回避的なモードを持つ人は人間関係を回避しすぎて孤立したり必要な社会行事に参加できないことで社会不適応になったりする。自分が抱えている問題は把握しやすいが、それがどんなモードなのかまで特定することで日常生活で同じ問題的場面で「これはあのモードだ」と気がつくだけで落ち着くことができる。また、脅威や権威に服従的になってしまうモードを持つ人は意図的に服従モードになることで、精神的なダメージを軽減することができる。モードは、スキーマとモードと中核的感情欲求のサイクルの中で最もわかりやすく問題化されるので、モードをヒントに自己理解を深めていくことができる。

中核的感情欲求
→スキーマ療法の最大の目的は「満たされていなかった中核的感情欲求を満たすこと」である。したがって、自分がどんな中核的感情欲求は満たされていて、どんなに中核的感情欲求を満たされていないのか把握することがスキーマ療法において最も重要である。その他のすべての項目はこの中核的感情欲求を把握するために存在すると言っても過言ではない。しかし、満たされていない中核的感情欲求を把握しただけではそれを満たし直すことはできない。それには相応のトレーニングやコーピングが必要となる。

行動
→その出来事の時にどんな行動を取ったのかを示すことは、その時にどんなモードに入っていたのかを把握することに役立つ。たとえば、壁を殴ったなら怒りのモードになっていただろうし、泣いていたなら不安やさみしさのモードになっていただろう。また、行動がいくつもあり変化していくなら、その変化に応じてモードが変化しているかどうかも観察することができる。はじめは怒り狂って相手を罵倒したのに罵倒しながら泣き始めてしまいには相手に謝り続けるなどの行動をしたなら、怒りモードから不安なモードになり、怒りモードになった自分を責めるモードに変化していったことがわかる。

身体反応
→身体反応もモードを把握するのに役に立つ。思考や認識のレベルでは何も問題がなかったと思っていても、動悸があったらそれはなんらかの脅威や不安に晒されていることの現れになる。また、出来事があきらかにショッキングなのにも関わらず、身体的に何も感じていないのだとしたら、それは解離や遮断のモードになっている可能性がある。通院している場合は処方が変わるポイントにもなる項目なので重要。

コーピング
→コーピングは自分にとって不都合なことやトラブルや精神不安になった時にする対処のこと全てで、いいものも悪いものコーピングになる。たとえば、大麻は違法だけどコーピングの項目に入る。暴飲は違法ではないけど自分の健康を害する。自傷は合法だけどなんらかの害がある。でも自傷はコーピング効果としてはものすごく効果があることもある。コーピングはいいものも悪いものもあるけど、大切なのはまずは自分の身が安全になるコーピングを選ぶこと、どうしても害になるコーピングをしてしまうときは、時間を決めるとか程度を決めるとか「限界設定」をする。そして最も大切なのが、コーピングの結果自分の感情的な問題がどの程度回復したかをチェックすること。回復度合いの高いものを把握するようにして、リスト化しておくとよい。また、ついつい選びがちなコーピングがモニタリングの結果、回復度合いもそんなにないことがわかったら、そのコーピングは害がなくてもやめること。

サポート資源
→サポート資源は自分を助けてくれる支えてくれるあらゆる人、物、能力、環境、スキルを指す。「サポート資源はなんですか?」と聞くとほとんどの人が「話を聞いてくれた友達」「パートナー」「医者」「くすり」などを挙げるが、これだけではない。たとえば「サポート資源を考えることのできる力」や「モニタリングのスキル/意欲」などといった自己有能感につながるようなサポート資源もあれば、「有り余る時間」「静かでインテリアの素敵な部屋」「汚いけど落ち着くし手の届く範囲に好きなものがある布団」など環境的な面で安心感を与えてくれる物もサポート資源になる。サポート資源は増えれば増えるほど見つけられれば見つけられるほど、中核的感情欲求を満たす手助けになるし、自分が何をすれば安心できるかを把握できるし、不安なときは自分のスキルを確認できるので、サポート資源を数えるということもある意味コーピングになる。とてもおいしい。

生得的気質
→生得的気質の理解はとても重要で、書き出してみると生得的気質ではなくスキーマの問題なのでは?というものがよくある。たとえば、発達障害でありがちなものといえば「完璧主義」「正義感が強い」「自己肯定感の低さ」「コミュニケーション不良」「先延ばし癖」などをあげる人がいるが、これのほとんどはスキーマとモードで説明できてしまう。「自分はこういう生まれつきの問題があって生まれつきのものは仕方ない」と思ってしまいがちだが、よく見るとスキーマとモードで解決できるものが多く、その自覚をすることは「何をしても治らないダメ人間ではない」という諦めと絶望から自分を救うことになる。また、本当の生得的気質を知ることで「どうしても無理なもの」も把握できる。今までは生得的気質だと思っていたものが多過ぎて絶望していたかもしれないけれど、本当の生得的気質は絶望するほどの量ではなかったり、質的にも全く違ったりすることがわかり、安心感につながる。

感想
→モニタリングをしてみて全体をもう一度眺め直す、それを言葉にすることはあってもなくてもいいけれど、感想を書く方がなんかモニタリングがうまくいったという経験則しかない。

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発達障害者まりんのスキーマ療法体験記
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