児童書「ふたつの月の物語」

月の名前をもつ少女「美月(みづき)」と「月明(あかり)」。肉親もなく別々の人生を歩んできた二人が、ある日津田節子という富豪の養子候補に選ばれ、夏休みの間別荘に招かれます。
なぜわたしたちが養子に選ばれたのか、その秘密を探っていくうちに、ダムの底に沈んだ村、魂呼びの神事、集められた別荘の人々、そして自分たちの出生の秘密に辿りつきます。

読み終わって最初に、なぜか「思い出のマーニー」が思い浮かびました。
マーニーはまだ観ていないのに…。

女の子同士の秘密というのは、男の子も知っている秘密なんかよりもとても甘美で繊細な気がします。というのは、男の子が知っている女の子の秘密は、たいていみんながもう知っていることであり、女の子同士の秘密は、ほんとうに秘密のことが多いからです。(男の子は気付いていませんが)
自分の持っている秘密を隠すべきか、この子になら言っても大丈夫か、その見極めはある意味直感です。この子たちも、それぞれの秘密をそれぞれ明かしたいと思ったときに話しています。そんな心理的描写が、とてもリアルに描かれている気がしました。

…たぶんですが、そんな不安定な少女たちの心の波が、なんとなくマーニーに似ているように思ったのかもしれません。

そして、この物語は児童書ですが、物語に張り巡らされた伏線は終盤でしっかり回収されています。おかしな村の風習や習わしという点では、ドラマ「TRICK」「金田一少年シリーズ」などにありがちそうな流れですが、児童書、しかも少女の観点からすれば、かなり珍しいのではないかと思います。

読み応えのある物語でした。
ぜひ月の見える夜にお読みください。


ふたつの月の物語
富安 陽子 著

2014/9/8 読了

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