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自分の心は、他人には傷つけられない。

川端康成の「神います」という小説を読んだことはあるだろうか。
とても短く、文庫本でまとめても数ページにも満たない文量だ。

私は、ちょっとした縁で2年前にこの短編と出会ったのだが、読んで以来、折々にこの話を思い出す。

心が沈むような日には、特に。

文章の一部だけを、引用する。

 自分が彼女を不幸にしたと信じていたのは誤りであることが分った。身の程を知らない考えであることが分った。人間は人間を不幸になぞ出来ないことが分った。彼女に許しを求めたりしたのも誤りであることが分った。傷つけたが故に高い立場にいる者が傷つけられたが故に低い立場にいる者に許しを求めると言う心なぞは驕りだと分った。人間は人間を傷つけたりなぞ出来ないのだと分った。

ーー川端康成「神います」より引用

傷つくことも、傷つけることも、じぶんの心が選択していることだ。

自分のせいで誰かを不幸にしたと考えることは、その人の人生を支配しようと思っていることとそんなに変わらないのかもしれない。

この話を思い出す、心が沈んだ日の夜。なぜ私は今日、じぶんの心が傷つくことを選んだのかを、探る。
言葉はナイフではない。言動の地雷なんて、どこにもない。
ただ、言葉と心の距離が離れすぎていただけだ。大きな反動がないと、受け止めきれなかっただけだ。

もちろんだからって、他人を傷つけることをしていいというわけではないけれど。
自分の心との対話で、人生はもっとひらけるんじゃないかと思った。
きっとそれが、強くなるということかと、考えた。


すこし、今週は心にひっかかることがあったので、そんなことを考える夜が多かった週。
ちなみに「神います」は、こちらのアンソロジーに収録されてます。

先ほど書いた「ちょっとした縁」はこのことで、私が担当している作家の安野モヨコさんが綺麗な挿絵を描いてます。
宣伝に繋げて、終わり。

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