見出し画像

『伝奇集』と「ない話」|2021年2月7日の日記

ARuFaのSAYOUNARAパーカーかわいい。SUZURIではじめて買いものしたけど生地やサイズ感もいいかんじだ(サイズは迷いに迷って、ふつうのほうのパーカーのMにした)。あわせて買った目線バケットハットも気に入っている。



寝たのが5時半だったのでもはや日曜は終わりかと思われたが、えいや!と10時に起きた。えらい。午前中に家事などをすませる。


きょうもお天気だったので午後はぶらぶらと散歩しながら図書館に行った。

図書館というものの存在を完全に忘れていて、先週末に友だちとの通話のなかで話題にあがったとき「図書館に行けば読みたい本が読めるってことじゃん!!!」と感動してしまった。最後に行ったのは2017年3月のことだったらしい。4年前! アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』を借りたくて利用者登録をしたんだった。

ひさしぶりに足を踏みいれたらテンションがあがって絶対に読みきれない量を借りてしまった。

画像1

借りた本
福岡伸一『生物と無生物のあいだ』
ケン・リュウ『紙の動物園』
川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』
谷川俊太郎、尾崎真理子『詩人なんて呼ばれて』
高野秀行『謎の独立国家ソマリランド』
高野秀行『移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活』

ケン・リュウ『紙の動物園』はヤスミノさんがおすすめしていたもの(とりあえずメモしておいただけで、内容は忘れた)。ボルヘス『伝奇集』は原宿さんが積んでいたもの。高野秀行さんの2冊は岡田さんがおすすめしていたもの。


きょうはボルヘス『伝奇集』をすこし読んだ。映画『インセプション』のもとになった短編がおさめられているらしいのでそれだけ読むでもいいかなと思いつつ、頭から、プロローグと最初の短編「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」を読む。

プロローグにこの短編は「架空の書物にかんするノート」だとある。ちょうど積読王の記事でも引用されていた箇所だ。文章はかためで難解な印象ではあったけど、おもしろかった!

いろいろ差し置いてざっくりいってしまうと、これ一種の「ない話」なんですよ。書き手は架空の世界(架空の天体の架空の文化)のことを書いた架空の書物について追っていて、最初は断片的にしかわからなかったその書物の全貌がすこしずつわかってくる、という構造。最初の1ページで完全に寝た(首をやった)ので、きちんと理解して読むことはあきらめて、ある程度わかればよいことにして読みすすめていった。


その架空の世界での、言語についての説明がとくによかった。

その星には名詞が存在しない(しなかった、かも)。その星の南半球では「副詞的な価値を有する単音節の接尾辞もしくは接頭辞で修飾される、非人称動詞が存在」し、たとえば意味的に「月は河の上にのぼった」をあらわす文を逐語訳すれば「上方に向かって、背後に、持続的に流れる、月した」となる。いっぽう北半球では、「基本的な単位は動詞ではなく、単音節の形容詞」で「名詞は形容詞の積みかさねによって造られる」。「月」をたとえば「暗い=円い、上の、淡い=明るい」「空の=オレンジ色の=おぼろの」という。この表現の組みあわせは恣意的で、詩的だ。

時には、単なる同時性がそれらを限定する。一方は視覚的で他方は聴覚的という、ふたつのことばで構成される対象もある。たとえば、朝日の色と小鳥の遠く鋭い声で。多くのことばから構成されるものもある。たとえば、泳ぎ手の胸にはね返される陽光や波、瞼を閉じたときに見える、淡い、おののくようなバラ色、河の流れ、また夢によって運ばれる者の感覚。これらの二義的な対象が他のものと結びつくことがある。ある種の省略を用いることによって、その過程はじつに無限のものとなる。(p.18)

例がすでに美しいでしょう。「ひとつの厖大な単語で作られた有名な詩篇もいくつか存在する」とあって、読んでみたいと素直に思った。

あとは唯物論と観念論についてもかなり紙面をさいていて、おもしろく思ったけどまとめるのはむずかしい。こちらの常識や物理法則で「あたりまえじゃん」と思うようなことを正面から否定されると、ちょっと思考の足もとがゆらぐような感覚があり、世界をつくりあげる凄みをみた。


いちおうボルヘスさんには心のなかで謝ったうえでつづけると、これを読んでいるあいだじゅう「ウンコビエニア」(原宿さんが脳内に建てた王国)のことを思いだしていた。この動画はあまりにも好きなんですが、なかでも原宿さんの問題の答えあわせのあとに加藤さんがいった「ウンコビエニアのことを考えてるんですね」という一言が忘れられない。


(動画を見直したら笑いすぎて完全に手が止まりました)


「ウンコビエニアのことを考えてるんですね」。ウンコビエニアとその民は原宿さんのなかには「存在」している。それはボルヘスがやっていることと同じじゃないか?と思った。いつも「ない話」をしているような人たちの発想の種を育ててきれいにパッケージしていったら、こういう伝奇小説みたいなものになるんじゃないかな。常識をゆさぶられるような物語の土壌はおそらくもうある。(とんでもなく適当なことをいっている自覚はあります。)


_____
引用はすべて ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』鼓直 訳(福武書店、1990年)。太字は執筆者による


画像3


空の色がきれいだと写真とりたくなるよね。一周まわってありになってきている。暮れはじめた空をみるといつも、青にオレンジをあわせるセンスすげ~と思う。


週末は家事と散歩をして本を読んで元気になったのでよかった。あしたからも元気でやっていくぞ。



(2321字)


・ ・ ・


今週(2月1日~7)の記録

読んだもの
伊藤計劃『ハーモニー』
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』

きいたもの
ありスパ(#78、#77~45、#79)
KGB(#1~49)
音声放送(#60)
イマラジオ(#139)
匿名ラジオ(#240)
かまみく(Love you #45)
モンゴルナイトフィーバー(#50)
オモコロウォッチ
鎧坂とのぎへっぺんの音声放送(仮)

みたもの
オールナイト虚無(#26~29)
PUI PUI モルカー 第5話「プイプイレーシング」
オモコロチャンネル


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?