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やっぱり小説が好き。(後編)


さて、私の好きな作家さん&小説を勝手に語るこのシリーズ。前編では、8人の作家さんの私の好きな小説をお話させていただきました。

後編は、中村航さんの小説を紹介していきたいと思います。中村航さんの魅力については、前にnoteで語らせていただきました。

なので、今回はおすすめの小説とそこに登場する好きな言葉を紹介したいと思います。もしよろしければご一読ください。

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①星に願いを、月に祈りを。/中村航

私の一番好きな、ある宇宙にまつわる物語。小学生の男女がキャンプに行ってホタルを探す話から始まり、中学生になった男の子とある先輩のお話へ。そして、中学生の女の子とある男性の物語へと進んでいく。少し難しいけれど、すごく不思議で素敵なお話です。

この物語では、合間に星空放送局からのラジオが流れてくる。そのDJの話が少しキザだけど素敵で。まるで本当に星空の下でラジオを聞いているような気分になる。つい宇宙とか星について知りたくなってしまう。

夢見心地に進む物語の裏には、悲しい事実も隠されているんだけれど、人生は巡り続けていて誰かの物語とちゃんとつながっているんだと気づかせてくれる、そんな物語。夜に月明かりの中で読みたい小説です。

どうか君の夜空に、優しい星が流れますように。

②あのとき始まったことのすべて/中村航

社会人になって再会した中学の同級生の男女2人を中心に、中学の頃の毎日や修学旅行の思い出などを巡りながら、今に繋がっていく物語。

再会した2人が昔を振り返っているシーンを読むと、何とも言えない懐かしさが込み上げてくる。

そして途中に入る、中学生のとき2人の席の後ろにいた内気な女の子の視点からの中学の話も好き。ちょっと胸が苦しくなるぐらいリアルな懐かしさがあって、私も思わず自分の中学生の頃を思い出した。でもこの物語を読むと、ちょっと辛い毎日の中にも、素敵なことってあったなぁと思えて、なんか私の学校生活も悪くなかったと思えた。

そして、最後に修学旅行の時一緒だったメンバーで再会するシーンが素敵で。すべては繋がっていて、意味のないことなんてないって思える物語。

あのとき始まったことのすべてを大切にしたい、そんなふうに感じるのは奇跡みたいなことだと思うから。

③絶対最強の恋のうた/中村航

要約すると、大学生の男の子と女の子が恋をする話なんだけれど、なんだろう、すごくかわいいお話。キュンキュンする。

特に女の子視点の話が好き。女の子の中学、高校、大学の自分のキャラクターの変化をたどっているんだけど、それがすごくわかる気がして。何にでも笑ってしまう頃ってあるし、視野が広がってクールになる時期もあるし、そのうち両方のバランスがとれて朗らかな自分になっていく。そんな自分らしさを手に入れる過程が、かわいらしくて少し懐かしくもなった。

あと、男の子との仲が徐々に深まっていく過程もいい。水族館デートとか胸キュンだし、思わず好きって思ってしまう女の子もかわいい。男の子も結構いいやつだし。いいなぁ、私もこんなデートしてみたい。あと弓道がしたくなります。

恋はスタンプカードのようなものだ、と思う。(中略)このカードはいつかかけがえのない何かと交換できる。そんな日がきっとくる。その日まで私たちは歌うのだ。絶対、最強の恋のうたを。

④ハミングライフ/中村航

『あなたがここにいて欲しい』に入っている短編小説。このお話もすごい好きで、もう何回も読んだことか。

雑貨屋さんでアルバイトをしている女の子が、公園のウロの中に手紙を見つけて、そこからウロを通して男の子と手紙のやり取りを始める物語。なんとなく「営み」とか「繋がり」とかをテーマにしているのかなと思う。

ほんわかした物語で、春の朗らかな日差しを浴びながら読みたい一冊。2人のやり取りが微笑ましいし、ちょっと考えさせられることもあったり。とにかく女の子の心情が可愛いくて、読んでいると自然に笑みがこぼれてくる。中村さんのふわっとした素敵な言葉たちがちりばめられている。

こんな素敵な物語がどこかで起きていてほしい、そう思わず願ってしまう物語。

今こうしている間にも、世界には様々な営みがあって、わたしも確かにその一部だ。そんな一体感をいつもより感じながら、私は歩いた。

⑤インターナショナル・ウチュウ・グランプリ/中村航

『さよなら、手をつなごう』に収録されている短編小説。ある兄妹とその友達は小学生の頃、宇宙を目指していた。時は流れ現在、建築士をしている妹と元カレが久しぶりに会って話をしていると、あるつながりに気づいてー。

何とも言えない懐かしさが込み上げてくる物語。小学生の時、あの小さな世界で、何もかもに一生懸命だったあのころ。そんな時間が確かに今の自分をつくっている。そう気づいた瞬間、思わず胸がいっぱいになった。

その時はまだ分からなくても、何かに一生懸命になった時間は、いつかどこかの自分に繋がっていくんだ。素敵じゃないか。

そして最後には、思いかげないプレゼントが。こういう偶然の繋がりってなんだかいいよね。夕日を眺めながら、読み返したくなるお話です。

どこまでの青く澄んだ青空と、そこに吸い込まれていく人工衛星の光景をわたしは今でも思いだせる。(中略)あんなに大きくて深い空を、あの日以来、見たことがない。

⑥紅茶とかケーキとか雑貨とか/中村航

『恋を積分すると愛』に収録されている短編集。さらに何篇かの小説に分かれているんだけど、全部いい。紅茶のお店の雑誌に載っていたからか、すべて紅茶やスイーツにまつわる物語になっている。

全部女の子が主人公で、日常のふとした瞬間に感じるちょっとしたひらめきや感動がエッセンスになっている。思わず私も一緒にあったかい気持ちになって幸せを感じられる、そんな物語たち。ちゃんとスイーツや紅茶も食べたくなるんだから、やっぱり作家さんってすごい。

休日に紅茶片手にのんびり読みたい物語。ちなみに、同じ本に入っている『はぐれホタル』もおすすめ。

選べることだけ選べばいい、と思った。選べないことはまだ、そのままでいい。選ぶときはこんなふうに、少しだけ楽しい気持ちで、未来の自分を想像しながら選べたらいいな、と思う。

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ということで、書かせていただきました。中村航さんやっぱりいいなぁ。また読みたくなります。

いつも読んで感じていた思いをこうやって言葉にするのって難しいけれど、楽しい。少しでも良さが伝わるとうれしいです。

ということで、好きな小説のお話はこれにておしまい。読んでくださった皆さま、どうもありがとうございました。






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