疑似家族への憧れ②高河ゆん「源氏」1
平安時代にはまる
歴史ものが好きになった私は、歴史がモチーフになっているものをいろいろ読み始めた。当時、少女小説が流行っていたこともあり、恋愛小説の大家・折原みと先生の本ももちろん読んでいたけれど、オタクな私は早々にコバルト文庫にのめりこむようになった。
お気に入りは氷室冴子先生の「なんて素敵にジャパネスク」シリーズだ。
「なんて素敵にジャパネスク」は、疑似平安時代のお話である。登場人物は現代の感覚で動いているけれども、和歌を詠みあったり、方違えをしたりと、小学生の私にとっては十分な「歴史モノ」であった。
今思うと「歴史」とは私にとっては「異世界」とか「ファンタジー世界」とかの一種だったのだと思う。
同じ歴史でも、明治時代など写真が残っていたりする時代は生々しくて物語として楽しめなかった。
源氏物語…じゃなかった!
マンガも、学園モノが多くて恋愛のお手本としての「りぼん」とか「マーガレット」ではなく、「花とゆめ」とか「ウィングス」とかに連載されている、ファンタジーな世界を好んで読んでいた。
なかでも私にとって衝撃が大きかったのが高河ゆん「源氏」だ。
「源氏」というタイトルから、「源氏物語」……平安時代じゃないか、と早合点をしてわくわくした私は、このマンガを手に取り衝撃を受ける。
源平合戦…なのか?
「源氏」は、源氏物語の「源氏」でなく、源平合戦の「平氏」「源氏」だった。源頼朝とか、源義経とかの「源」である。
主人公の高校生の克己(かつみ)が、突然消えた二歳年上の恋人、桜を追って船に乗るとそこはパラレルワールド「日本国」で、源平合戦の世界だった。
桜は平清盛(源頼朝の幼なじみ、イケメン)の許嫁で、記憶を無くした状態で清盛や側近の参謀・空也(長髪のイケメン)に保護される。
一方の克己は、源軍の野営地にたどり着き、頼朝そっくりという理由で戦死した頼朝の身代わりとされる。
以上が簡単なこの話の最初の方のあらすじである。
……清盛は頼朝よりだいぶ年上じゃないか、とか、空也は坊さんじゃないか、とか、史実は思い出さない方が頭が整理できるかと思います…
私の知らない「東京」そして「家族」
史実についてはまだ学習していたなかったのか、小学生の私が衝撃を受けたのは別のところだった。
まず、主人公克己(16歳)の恋人、桜(18歳)は東京のデザイナーズマンションみたいなところで一人暮らしをしており、二人で海を見ながらお酒とか飲んじゃったりしている。……なんて大人!なんてカッコイイ!
克己は克己で、たくさんの兄弟と暮らしているのだけど、放任で(桜のところに入り浸っていても無問題、夜中に桜を追いかけて出かけても無問題)、なにより人数分の洗濯機がある家に住んでいるのだ。……なんて個人主義。なんて自由!
「歴史モノ」以上のファンタジーの世界がここにあった。
思っていた以上に長くなったので続く。
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