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カメルーン発の空間情報解析プラットフォーム。アフリカで空間情報を扱うということ

トーゴ・ロメでのプロジェクトを終えて、カメルーンの首都・ヤウンデにやってきて早くも2週間経った。ロメを振り返っての感想や、カメルーン1週間目の所感などは、Good News for Citiesのポットキャストでもざっくばらんに話をしているので、是非聴いてみてもらえると嬉しい。

アフリカに来てからは今日でちょうど2ヶ月。まだやりたいことは山ほどあるし、フランス語も上達させなければいけな一方で、経験したことをまとめたりシェアしたりもしたいしで時間がなく毎日きりきりしつつ、楽しい毎日を送っている。

今回は、カメルーンの首都・ヤウンデで現在コラボレーションをしているスタートアップ・Geo.smについて、ご紹介したい。

アフリカ初の空間情報解析インテリジェンス・Geo.sm

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GeOsmは、誰にでもアクセス可能な地理空間情報(geo-spatial data) を活用したプラットフォームを運営する会社だ。カメルーン、そしてアフリカのイノベーションを、地理空間情報の収集と共有から支えることをミッションに活動している。

アフリカの国々の多くでは、地理空間情報に関わるインフラがまだ整備されていないことが多い。これらのデータは、新しいサービスの開発やリサーチフェーズで必要なもの。これらがないと、アフリカの経済成長や生活の質の向上がはばかられてしまう。

例えば、日本ではおなじみのハザードマップ。災害に関わる地理空間データを分析して作られるこれらの地図は、市民の安全に寄与する。地方自治体毎・エリア毎の人口密度や交通量のデータなどは、投資先や新規ビジネス開拓の判断、居住地の決定などにも寄与する。

geo.smでは、オープンストリートマップのを活用した地理情報検索システム「geo.sm」や、GPSを用いて人々の現在地を確認する「Position」など、複数のサービスを展開している。創業者のWillyは34歳、その他、15名ほどの20代中心の若者(主にGIS専門家、ディベロッパー、地理学者、マーケターなど)で、地理空間情報が必要な行政(例えば、インフォーマルな住宅の多いカメルーンでは、税収の基本となる世帯の把握が難しく、世帯毎の居住情報などが必要)、地図を用いた新規事業を行うスタートアップ(Uberなどが分かりやすい事例)などをクライアントに、活動を展開している。

◉オープンストリートマップ(Open Street Map / OSM)

Geo.smのベースにあるのは、オープンストリートマップ(OpenStreetMap 以下、OSM)だ。各地方のボランティアが集まって作成する無料の世界地図で、ウィキペディアの地図版とでもいうべきものである。Googleが有料でGoogleマップのAPIを共有し、第三者からの利用料や広告料で莫大な収益を生み出しているのに対し、OSMは、ユーザーが自由に利用でき、かつ編集もできる無収益型サービスだ。

OpenStreetMap Foundation(OSMF)という団体によって運営されており、全世界に150万人もの公認エディターが存在し、ボランティアとして定期的にデータを更新している。

Googleマップにあるようなファンシーな機能やデザインはないものの、コミュニティドリブンの運営方針や無利益であることが評価され、近年Googleマップからオープンストリートマップに乗換える企業も増加している。MapBoxやCraigslistといった大型サービスが、Googleマップではなくオープンストリートマップを使用しているのも面白い。

150万人のボランティアが作る地図がGoogleマップを超える日

geo.smの活動前半に関しては、LinkedInにも詳しいのでぜひ覗いてみてもらいたい。

アフリカの地理空間情報事情

Geo.smの他にもいくつか地理空間情報を用いたアフリカのスタートアップはあるようだが、印象としてはまだまだ少ない感じはある。

そもそも、地理学者Monica StephensによるTEDトーク「The Frightening Future of Digital Maps」でも述べられているように、アフリカの地理空間情報は先進国に比べて余りにも少ない。

私達の生活に関わるデータはすべて、基本的に何かしらの地理空間情報を付随している。私たちがSNSをアップデートするたび、wekipediaを読むたび、Yelpでチェックインするたび、そのデータにはジオタグと呼ばれる地理空間情報が付与される。そしてこのジオタグ情報は、世界中で均衡ではない。

例えば、ジオタグがついているwekipediaページは、20%がアメリカ、50%がヨーロッパのコンテンツだ。南アメリカとアフリカ大陸のコンテンツは、2つ合わせてもフランスのコンテンツ量と一緒である。wekipediaに体現される知識の70%は、西洋に関するコンテンツに占められている。

Googleもそうだ。Goodle上で、ユーザーによってアップロードされるコンテンツ(Flickrの画像など)の70%がアメリカ(60%)とドイツ(9%)から来ている。

コンピュータやインターネットなどの情報技術を利用したり使いこなしたりできる人と、そうでない人の間に生じる、貧富や機会、社会的地位などの格差をデジタルデバイドというが、アフリカや南米などの地域からは、ユーザー発信のコンテンツが、ほとんどないということになる。Googleは「世界のバーチャルな鏡を構築する」とよく言っているけれど、Google上のコンテンツの大部分が西洋発のものであるとすれば、私達がインターネット上で培う世界観には、偏りがあるということになる。

”Let's Put Ourselves on the Map”というメッセージ

普段私は、新しい街に行くとき、面白いインタビュー先がないか、知っておくべき歴史的背景も兼ねて、Googleでざっと基礎情報を調べる。これがアフリカだとあまり通用しない。

英語だけでなく、フランス語でも調べたりするわけだけど、それでも全然情報が落ちてない。現地語の情報は読めないし、そもそもニッチすぎてネット上に上がってないのでは?しょうがないので、知人のつてを辿って詳しい人を探したりするわけだけれど(仕事やいろんなソーシャルサービスもこうして探すことが多いらしい。両替もそうだった)、そういうローカルな知識は共有されないし、ドキュメントされていくこともない。

Googleマップもそうだ。日本や欧米に比べてそもそも地図の解像度が違う。建物がびっしり密集している住宅街なのに、地図上では白紙、みたいなこともよくある。

だからこそ、Geo.smの創始者であるWillyは常に、「Let's put ourselves on the map(私たちを地図上にのせよう)」と言っている。物理的に地図の上に立て、というわけではなく、世界地図から置いてけぼりになっているアフリカの人々に対して、自分たちの生活に関わるさまざまなデータを、積極的に(デジタル上に)集約しくことの重要性、そして、そこから新しいサービスなどを後押しする重要性などがメッセージとして込められている。

他にも参考になるビデオをいくつか。

ここで、私がやっていること

そんなGeo.smとのコラボレーションは、Traveling Cirucs of Urbanism上の公募で集まった2名が加わり、合計4人のチーム編成で行っている。スキルセットはこんな感じ。

Julien(フランス):スマートシティ開発、AI
私(日本):ジャーナリズム、企画、デザイン
Eliza(ロシア):GISアナリスト
Teya(ロシア):ビジネス、スタートアップ支援、サイコロジー

1. デザインリサーチ 
まず、こうしたデジタル空間上のgeoデータの不平等さ、不均衡さを踏まえたうえで、geo.smの活動に関してきちんとドキュメントすること(そもそもアクセスできるデータセットがあまりない状況からのデータ採集方法や、データ公開に関する政策側との交渉など、ちゃんとドキュメントしておきたい)、そして、ユーザーリサーチとエクスパートインタタビューを通して、アフリカと地理空間情報に関するデザインリサーチを行う。

2.GIS、Space Syntax
ロシア出身のGISアナリストと共に、Geo.smのデータセットを利用して「Space Syntax」という手法を用い空間分析を行う。せっかくGISな環境にいるので、私自身も、何かしらのテーマでデジタルマップ作成やデータ分析・ビジュアルアナリシスを行う予定。

3.ハッカソンの開催
3月中旬に、ヤウンデから南に車で3時間ほどの距離にある街・ドアラで、現地の若手スタートアップオーナーを対象に3日間のハッカソンを開催する。こちらについては別途記事にしたいと思う。


以上、カメルーンでのプロジェクトについて簡単な紹介。

カメルーンでは他にも気になるトピックがいくつかあって(コンクリートという素材の扱われ方や、豊富にある土の種類など)、これについても合間合間で深ぼっていきたい。

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