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少女怪談 安眠
いつの頃からか、夜が恐くなった。
小学校の高学年になった頃からだっただろうか。
恐い本を読んだせいなのか映画の影響なのか、原因はわからない。
なにしろ中学時代はずっとだった。
眠る時間になると
「このまま死んじゃったらどうしよう」とか
「死んだら”わたし”はどこに行ってしまうんだろう」と、考えて眠れない。
夜の暗さに目が慣れてくると天井の模様が動き出しそうで、目をぎゅっと閉じて何か別のことを必死で考えているうちにいつしか寝てしまう。寝たのかどうかわからない感じで目が覚める。
毎日その繰り返し。
「死」というものの漠然とした恐怖におびえていたのだろうか。
明るいうちは楽しく過ごせるのに、夜が近付くと恐怖と不安でたまらなくなった。受験勉強しなくてはならない時期が来ると、勉強している間に眠ってしまおうと考えた。ところが、勉強よりも眠りの方に意識が行ってしまう。結局どちらにも集中できず成績は落ちるし眠れない、という負のスパイラルにはまり込んだ。それでも、そこそこ程度の良い高校に入れたのは、まぐれだったのだろう。
高校に入ると”ラジオ”という救いの神が現れた。つけっぱなしで寝ると翌朝母親に怒られたが、音が流れていれば少しは安心して眠ることができた。
毎日なんとなく睡眠不足。
学校でも電車でも眠くてしかたない。
高校2年の夏、祖母が死んだ。72歳だった。母はひどく泣き、いつまでも祖母の話をしては涙していた。
遠くに住んでいたから会う機会も少なかったし、厳しい感じの祖母だった。かわいがってもらった記憶もなかったのでわたしは寂しくも悲しくもなかった。
でもなぜだろう、そんなに親密な間柄でなかった祖母が今、枕元で子守唄を歌ってくれている。
その声には優しさを感じる。生きているときは怖かったのに。
わたしはひさしぶりに安眠を手に入れた。
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