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表現全般。おもに美術。

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最近の記事

埼玉県立近代美術館「アーティストプロジェクト#2.05 スクリプカリウ落合安奈:Blessing beyond the borders- 越境する祝福 -」レポート マリコム

新型コロナウイルス感染症拡大防止のための緊急事態宣言が発令されるたび、休館措置を取る美術館が散見される。前回の記事では1度目の発令(2020年4月7日〜5月25日)に伴い休館した美術館を取材したが、今回も2度目の発令(2021年1月8日〜3月21日)に伴い休館した美術館の、会期途中で終了した展覧会について詳述する。埼玉県立近代美術館の「アーティストプロジェクト#2.05 スクリプカリウ落合安奈:Blessing beyond the borders- 越境する祝福 -」である

    • 小杉放菴記念日光美術館「『描く』を超える―現代絵画 制作のひみつ―」

      美術館や博物館で催される「常設展」や「コレクション展」の多くにおいては、常設と言っても常に同じ作品や資料が展示されているわけではない。物質的な劣化をなるべく食い止めるべく、光や外気に触れづらい収蔵庫で休ませたり、修復やメンテナンスをしたりする期間が必要だと考えられているためだ。あるいは、他館での展示のために、作品が貸し出されることもある。そういうわけで常設展やコレクション展にも「展示替え」が存在するのであり、展示作品の変更に伴いキュレーションや配置場所も変化することが多い。

      • 安藤裕美 個展「光のサイコロジー」on Sundays

        安藤裕美という作家の経歴は、彼女が所属する私塾「パープルーム予備校(*1)」の活動歴とあまりにも分かち難い。 そのことをはっきりと物語るのが、現在ワタリウム美術館内on Sundays(*2)で開催中の個展「光のサイコロジー」である。 展示されている油彩画12点・水彩画10点・アニメーション映像1点、そしてアニメーション映像の原画72点(全体の一部)は、いずれも安藤の作品であると同時に、パープルームの軌跡を記録したドキュメントでもあるのだ。 (展覧会予告動画より) 「光が

        • 「健康な街@プライベイト」

          プライベイトと名付けられた3階建ての貸し民家が、都営新宿線の大島駅から徒歩5分程度の密集した住宅地内にある。民家とはもともと私的な場所であるが、わざわざ私的であることを名乗るのは、オーナーでありまた作家でもある慈の考えによるものだ(詳細は後述する)。かつて慈の親族の持ち家でもあったこの場所は、2019年5月からはオルタナティブ・スペースとして駆動している。 この場所で、2019年8月2日から12日まで「健康な街@プライベイト」と題されたグループ展があった。タイトルに場所の名

        埼玉県立近代美術館「アーティストプロジェクト#2.05 スクリプカリウ落合安奈:Blessing beyond the borders- 越境する祝福 -」レポート マリコム

          「プライベート・コレクション展」生活工房ギャラリー

          世田谷区の三軒茶屋に位置するキャロットタワーには、生活工房という多目的の公共施設が備えられている。キャロットタワーはオフィス・商業店舗・劇場・自治体窓口等を兼ねた複合施設であるが、そうした多目的性を凝縮したようなスペースが生活工房だ。公式HPによれば、生活工房は「美術館でも、博物館でも、公民館でもな」く、「日常の暮らしに身近なデザイン、文化、環境などをテーマに、展示、ワークショップ、セミナーなど、子どもから高齢者までが参加できるプログラムや、手作り品のフリーマーケットなど地域

          「プライベート・コレクション展」生活工房ギャラリー

          内田百合香 個展「好き、」River Coffee & Gallery

          モチーフ、モチーフ、モチーフ。 具象的なアイコンが散りばめられ、互いにお喋りを交わすように賑やかである。 犬、猫、魚、ライオン、チューリップといったそれらは、口角が上がっていたり目が笑っていたりと、どことなく優しげな表情で訪問者を歓迎する。 またそれらを象る境界線はゆらぎ、中間色が多用され、そのため強い主張はいっそう退けられている。 絵の中のモチーフが率先してそうであるように、ここでは誰もが緊張をほぐし、くつろぐことを許されているのだ。 「好き、」と題された内田百合香の個展

          内田百合香 個展「好き、」River Coffee & Gallery