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読書 『エッセイストのように生きる』

私の最も好きなエッセイストの一人である、松浦弥太郎さん。彼の著書『エッセイストのように生きる』を読んだ。

新刊の知らせを受けてすぐにその本を入手した。読み始めてからすぐに、もう、そこは弥太郎ワールド。どうしてこの人はこんなにカッコいいんだろう!エッセイで人の心を鷲掴みにする弥太郎さんを心から尊敬する。

弥太郎さんのエッセイ本をほぼ全部読んでいるが、毎日をていねいに暮らそうと思わせる力がいつも存在している。そして、彼自身が自分の生き方に満足しているという自己を肯定する強さを感じる。私が最も魅力を感じるのは、そのあたりかもしれない。

平易な言葉遣い、わかりやすい文章から弥太郎さんのやさしさ溢れる人間性を感じる。生き方の背景には感じ方や考え方があり、弥太郎さんの”パーソナルな心の様子”が描写されている。この本の文章そのものが、良きエッセイのお手本になっている。

エッセイとは何か。それは、出来事について感情の動きが表現されたものである。事実を単に並べただけではなく、自分がどう感じたのかを語ったもの。何かに出会ったり、何かがわかったときの、自分なりの秘密の告白文がエッセイである。なるほど、弥太郎さんの説くエッセイの定義に思わず唸ってしまうほどだ。

どうすれば私はエッセイが書けるようになれるのだろうか。そのためには、何をどう感じるかを書く。その感情にはどんな背景があるのかを考える。そしてわかったことをさらに書く。そんな風に、自分の感情を自分なりの視点で書くことによって、秘密を告白していく。それが心の動きが表現された面白いエッセイなのである。

そして、エッセイは相手に読んでもらいたいという気持ちを持って書くものだ。エッセイは自分のために書くのであるけれども、相手が読むことで初めて完成するものでもあるのだ。本質的に読み手があってこそ成立するのだから、伝わりやすいように書くにはどうしたらよいかという視点はとても大切なのだ。 

日々の些細なことのなかにある私の心の体験を誰かと分かち合いたい。そのために心の中を言葉に映し出すのだ。共に生きているという実感をより一層得たいと思う。言葉によって、自分の居場所をつくりたい。エッセイを書くための暮らしが自分らしい生き方になっている、といつしか気づくことができたら理想的だ。



20th March 2024 / Reading Journal 063

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