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【AI✕リアル】 ChatGPTがネイル提案 人工知能 vs プロネイリスト

AI(人工知能)がネイルデザインを提案したり、「こんなイメージ」という文章から具体的なネイルデザインを作る、そんなことができる時代になりました。

気になるのはクオリティ。

AIは、人間よりも優れたデザインができるのか?
AIと人間の認識の違いは?

この疑問を解決するため、プロのネイリストさんの協力を得て検証しました。

大まかな流れ

  • ChatGPTにネイルデザインを相談

  • ChatGPTの回答をもとにネイリストさんが施術

  • ChatGPTの回答からMidjourneyがデザイン画像を生成

  • 人間(プロネイリスト)とAI(Midjourney)のデザインを比較



カンタン用語解説


ChatGPT(チャットジーピーティ):
質問に対して文章で回答してくれる対話型のAIです。例えば、「〇〇について教えて」と聞くと、その内容について回答してくれます。Googleなどの検索エンジンとは異なり、会話のように前の文脈を覚えて、連続したやりとりをすることができます。

Midjourney(ミッドジャーニー):
テキストから画像を生成するAIで、絵を描くAIと言われたりもします。
「空を飛んでいるうさぎ」のように、架空の内容であっても、テキストを指定することで画像が自動生成されます。英語を使用する必要があります。

ネイリスト:
指先を美しく見せる仕事をしている人のこと。
具体的には、爪のケアや爪に装飾を施すネイルアートなどを行う職業の人を指します。



検証

1.ChatGPTにネイルデザインを相談

3月に適したネイルデザインを相談しました。

イエローなど他の具体的なデザインの会話の後に、「やっぱりラベンダーかな?」と送ると、その前の会話の流れを引き継ぎ、5案の具体的なデザインの回答がありました。

「もっと教えて」と依頼すると、続きの番号である「6」から始まる具体的なデザインの回答がありました。

1~10の異なるデザインを10本の指に施す方向で採用します。
この文章に手は加えません。

※AIが回答した10のデザインは、組み合わせの考慮を指定していません。


2.ネイリストさんに依頼

ChatGPTの文章を事前にネイリストさんに送ります。
自分の主観が入らないように「テキスト通りに施術をお願いします」とお伝えします。

当日は、手描きしたデザインを用意してくださいました。

ネイリストさんがChatGPTのテキストを手描きで形に。

施術していただいている間は、どんなデザインに仕上がるのか、とてもわくわくしました。


3.Midjourneyでネイルデザイン画像を生成

Midjourneyは英語で指定する必要があるため、ChatGPTにテキストを「英訳して」と依頼します。今回は、英文に手を加えずにそのまま使用します。

1案ずつMidjourneyにテキストを送信します。
1回の送信につき数秒~1分程度で、4枚の画像が自動生成されます。

デザインが生成された画面。左上や右上のように人の手ではない何かが生まれることも。

今回は、4枚の画像から目視でイメージに近い1枚を選択して、比較用のデザインとして使用します。

同じ作業を繰り返し、1〜10のネイルデザイン画像を生成
します。


4.人間とAIのデザインを比較

1.フレンチネイル
ラベンダーをベースにして、爪先を白いカラーでフレンチネイルにするデザイン。清楚で上品な印象があり、オフィスやフォーマルな場でも使いやすいデザインです。

左:人間 テキスト通り清楚で上品。トータルのバランスを考慮してラメラインがプラスされている。
右:AI フレンチネイルではなくグラデーションになっている。文中に記載のないフラワーアートが描かれている。


2.ラメグラデーション
ラベンダーをグラデーションにして、ラメをプラスしたデザイン。光に当たると輝くキラキラ感が特徴的で、パーティーやイベントなどの華やかな場面で活躍します。

左:人間 テキスト通りのグラデーション+ラメ。“パーティー” や “イベントなどの華やかな場面” というキーワードからは控えめな印象だが、指1本単位ではなく、手全体のバランスが考慮されている。
右:AI 一見テキストにマッチしているが、色がラベンダーではなくパープルが強い。


3.フラワーアート
ラベンダーをベースに、小花や葉っぱのアートを施すデザイン。ワンポイントで施すことで、爽やかで可愛らしい印象を与えます。

左:人間 テキスト通り爽やかで可愛らしい印象。
右:AI “ワンポイント”が無視され、全体にフラワーアートが描かれている。


4.マーブル柄
ラベンダーと白のマーブル柄を描くデザイン。派手すぎず、上品で落ち着いた印象があります。

左:人間 テキスト通りの印象。
右:AI “派手すぎず、上品で落ち着いた” が無視され、鮮やかなパープルにゴールドも入った派手なデザイン。


5.ラメライン
ラベンダーをベースにして、シルバーやゴールドのラメラインを施したデザイン。シンプルながらも輝きがあり、ワンポイントで存在感を出すことができます。

左:人間 テキスト通りの印象。
右:AI “シンプルながらも” や “ワンポイント” が無視され、全体にかなり華やかな印象。


6.オンブル
ラベンダーをグラデーションにしたデザイン。明るめのラベンダーから淡い色味になるように塗り分け、爽やかで優しい印象を与えます。

左:人間 テキスト通り爽やかで優しい印象。
右:AI 色がラベンダーではなくバイオレット。文中に記載のないフラワーアートが描かれている。


7.キラキラストーン
ラベンダーをベースにして、ストーンを散りばめたデザイン。ストーンの色や大きさを変えることで、個性的で華やかな印象を与えます。

左:人間 テキスト通りの華やかなデザイン。
右:AI 色がラベンダーではなくパープル。華やかというよりもギラギラとした印象が強い。


8.チェック柄
ラベンダーをベースにして、白やグレーのチェック柄を描くデザイン。シンプルで上品な印象があり、落ち着いた雰囲気を出すことができます。

左:人間 テキスト通りの配色とデザイン。トータルのバランスを考慮してラメラインがプラスされている。
右:AI 色はテキスト通りだが、チェックではなくキルティング生地のように見える。


9.ペイズリー柄
ラベンダーをベースにして、白やピンクのペイズリー柄を描くデザイン。華やかな印象があり、フェミニンな雰囲気を出すことができます。

左:人間 テキスト通り、華やかでフェミニンな雰囲気。
右:AI 色がラベンダーではなくパープル。模様は綺麗だがペイズリーというよりもレースに近い印象。


10.ラメグラデーション&フラワーアート
ラベンダーをグラデーションにし、その上に白いフラワーアートを施したデザイン。グラデーションとフラワーアートが絶妙にマッチしており、美しさと可愛らしさを両立したデザインです。

左:人間 ラメグラデーションではなくグラデーションになっているが、白いフラワーアートもテキストのイメージ通り。
右:AI 色がラベンダーではなくバイオレット。フラワーアートがたくさん描かれていることで派手な印象。


検証結果

両手全体のイメージです。
1枚目は実際の手を撮影した画像、2枚目はAIの生成した画像を合成しました。
合成は若干不自然ですが、色が変わらないようサイズの調整に留めています。

Midjourneyが生成したデザインは全体のバランスが致命的な印象です。
ネイルアートは両手全体で完成するため、トータルのバランスが重要だと実感します。

しかし、今回は1~10のデザインを個別にMidjourneyで生成したため、バランスについては指定方法で改善する可能性があります。
ただ、「ラベンダー」という共通の色を指定したため、Midjourneyのデザインはそれなりに統一感のある印象になると期待していました。

残念ながら、Midjourneyのデザインを単体で見た場合でも、一部のキーワードがデザインに反映されない傾向がありました。
人は、特に仕事としてデザインを依頼する人は、要望がいかに汲み取られているか、期待以上の仕上がりになっているか、などが満足度に大きな影響を及ぼします。

Midjourneyは1回につき4枚の画像が生成されるため、今回は40点のネイルデザインを見ましたが、いずれも派手・ゴージャス・鮮やかでした。

一方で、今回のChatGPT提案のデザイン(Midjourneyに指定したデザイン)は、清楚・上品・フェミニン・可愛い・爽やかという比較的柔らかな印象を受けるワードが並んでいました。

要望に対するデザインとしては良い結果とは言えません。

Midjourneyのプロンプト(指定するキーワード、呪文と呼ばれることも)のコツを掴み、内容を見直すことで改善する可能性はありますが、現時点では懐疑的です。


AIは、人間よりも優れたデザインができるのか?

数秒でいくつものネイルデザインを生み出すことができる、これは素晴らしい技術だと思います。
画像生成の過程では、とても楽しい気持ちになりました。
しかし、「AIは、人間よりも優れたデザインができるのか?」の答えとしては、希望に沿ったデザインが難しいという点で、今回の検証におけるMidjourneyのネイルデザイン画像生成では「NO」です。


AIと人間の認識の違いは?

要望を汲み取る、空気を読む、微妙なニュアンスを表現する、これらは今回の検証におけるMidjourneyのネイルデザイン画像生成では難しく、今の時点では人間にしかできないという検証結果となりました。
これは、「人間にはできて、AIにはできない」という点で大きな違いと言えます。



デザインに関する抽象的な文章の自然言語処理には限界があると思います。ただし、AIの学習データによって結果は異なるため、すべてのAIで同じ結果を得られるわけではありません。
あくまでも、今回の条件下での検証結果に過ぎません。



後日、ChatGPTに、10本の指それぞれにデザインをするのか、別のアイデアなのかを聞いてみたところ、以下の回答でした。

ネイルデザインのアイデア10個であり、その中から一つのアイデアを10本の指に施す場合の具体的なデザインアイデアを挙げたものです。
もし、10個のアイデアの中から何本かを組み合わせたり、別のアイデアを加えたりして、10本の指全てをデザインすることもできます。

ChatGPTを使い始めてから毎日会話しています。
活用方法が無限大で素晴らしいサービスです。




最後に、長年ネイルを楽しんでいる私の個人的な意見です。

ネイルデザインとして、ペイズリー・チェック・フラワーアートを同時に施すことは考えたことがありませんでした。

身体を張った検証だとドキドキしていましたが、同色を使用していることと、ネイリストさんの絶妙なテクニックによって、素敵な仕上がりになりました。これはとてもハッピーな結果でした。

ChatGPTのネイル提案という新たな機会で得られた経験です。

また、私にとって、ネイルの楽しみは爪にアートを施すことだけではありません。

ネイリストさんとの会話、リラックスできる素敵なサロン空間、新しいデザインに出会うわくわく、期待以上の仕上がりにウキウキしながら帰る道のり、キーボードを打つネイルが素敵。

これらすべてがセットで「ネイルが好き」です。

そして、「ネイルは絶対にネイリスト野内さんにお願いしたい」という気持ちがあります。

“この人でなければできない仕事”

テクノロジーが進化しても、そういう仕事をしている人は、ずっと貴重な存在だと思います。


ご協力いただいたSchüler(シュクレ)野内さんありがとうございました。

※掲載許可をいただいています。



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