見出し画像

【調査報告】コニーアイランドってどんなとこ?

О・ヘンリーの短編「トビンの手相」、お楽しみいただけましたでしょうか?

次の短編に移る前に、「トビンの手相」翻訳にあたりいろいろ調べた内容を、せっかくなので共有したいと思います。

「トビンの手相」の舞台となっているコニーアイランドは、ニューヨーク市の南の方にある半島のことを指します。
今は遊園地以外にもアミューズメント施設が立ち並び、海水浴も楽しめる
リゾート地です。

現在のコニーアイランド

本作が出版された頃、コニーアイランドには3つの遊園地がありました。Steeplechase Park(1897~1964)、Luna Park(1903~1944、前身はSea Lion Park、2010年より新Luna Parkが営業中)、Dreamland(1904~1911)です。
ジョウンとトビンがどれに行ったのかはわかりませんが、たぶんLuna Parkかなと勝手に思っています。

さて、せっかく遊園地に来たのにトビンが不貞腐れている様子を描写した以下の場面。

He ground his teeth at the crying balloons; he cursed the moving pictures; and, though he would drink whenever asked, he scorned Punch and Judy, and was for licking the tintype men as they came.

O. Henry "Tobin's Palm"

100年以上前の作品なのでしかたないのですが、これ読んでも情景がまったく浮かびません……
まず、crying balloonがわからない。音が出る風船のおもちゃなんだろうなとは思いますが、検索しても何も出てこない。
最初に思い浮かんだのはジェット風船でした。

でも、ジェット風船に"ground teeth"って出来ない気がするんですよね。
私が「ピロピロ笛」と訳したのは、風船かつガシガシ噛りつけるおもちゃだからです。少なくとも私は幼い頃にガシガシ歯型をつけた記憶があります。
ピロピロ笛(吹き戻し)は英語でparty hornなどと呼ばれているので、
О・ヘンリーが思い浮かべていたおもちゃとは別物の可能性大です……
今でも普通の風船であれば遊園地で配られることもありますが、当時はちょっと特殊な風船が配られていたのでしょうか。

そしてmoving picture。一般的に映画のことを指す単語ですが、時間的にも2人のキャラ的にも、映画に行ったようには思えず。
調べたら、当時のコニーアイランドの射撃場の写真が販売されているのが見つかり、どうも動く映像を狙うタイプで看板に"moving picture"とあったので、ここでは射的のことを指しているのだと思います。後の場面でも「射撃場(shooting gallery)を出るとき」と明言していますし。

Punch and Judyは、イギリス生まれの人形劇の演題の名前です。
私は見たことがないので、YouTubeで探して見ようかなと思ったものの、
子供向けとはいえ、けっこう残酷な話のようなので尻込みして見ずじまいです。
トビンがヤジを飛ばすのも納得です。

tintypeは、昔の写真技術の一種で、鉄板写真のこと。
数分で現像できるのが特徴らしいです。その写真を撮影してくれる人のことをtintype menと呼んだわけです。
今もある遊園地の記念撮影サービスですが、この当時からサービスとして存在していたんですね。

今ではコニーアイランドは陸続きになっており地下鉄で行けますが、当時は船でないと行けなかったようです。
帰りの船で、トビンが帽子を失くす原因となった「メシャムパイプ」の髪の女性。
メシャムパイプとは海泡石(メシャム)で作られたパイプのこと。白い素材なので、女性はかなり白に近い金髪だったのでしょう。


いかがでしたでしょうか? 当時の雰囲気が少しでも伝われば嬉しいです。
次回は、名作「賢者の贈り物」を投稿しますので、乞うご期待!

この記事が参加している募集

海外文学のススメ

よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは翻訳業の活動費に使わせていただきます。記事のKindle書籍化等を企んでいるので、その費用に使わせてもらえると幸いです。