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Shit Mom 母を憐れむ

ニューヨーク、マンハッタンのChelseaという地区には小さなアートギャラリーが少なくとも数十ある。

展示の閲覧は基本的に無料だ。今年春に留学に行った際、貧乏学生だった私は休日をこの地区で過ごすことが多かった。

これらのギャラリーの本来の目的は作品の販売であるため、ほとんどの場合作品や作者に関するフリーペーパーが置いてある。現地の客はあまり取っていなかったが、この街の全てを持ち帰りたい私は必ず一枚一枚拾い集めていた。

フリーペーパー@寮のベッド


未だに、その中の一軒のギャラリー303 Galleryが忘れられないでいる。
当時展示されていたのはTala Madani氏の"Dirty Windows"という作品群。ちなみに私は現代アートの作者は一人も知らなかった。

このDirty Windows、サムネイル写真の通り、水色のかわいい空に泥かshitかそんな感じの何かが塗りたくられている。
なかでもShit Momという約8分間の映像作品が、ひどい(褒めている)。文字通り体がshitで出来たmomの話だ。だだっ広い家で一人、momは歩き、眠り、自分の体を食べ、ベッドに横たわって自慰をし、それによって下腹部に穴があき、絶望して体を千切っては投げ、部屋を汚す。そして映像は終わる。恐ろしくなった。全てばれている。
が、作者もそんな人類を嘲笑っているのではない。そこには憐れみと許容がある。私はこういう人間が好きだ。丁寧に接されると嘘つけと思ってしまうしこちらも自分のクソな部分を見せることが出来ない。正直というのは一種の親切である。そして創作とは正直な思想が一度抽象化され再び具体的なオブジェクトになったものであるはずだ。そうすることで私達は他人の偉そうな思想を快く受け入れることが出来るのではないか。

自分の嫌いなところは母に似ていると思うことがあり、責任転嫁にせよ死にたくなる。私も母もそのまた母もshit momでありクソみたいな愛すべき人間なんだろうな。子供を作るのが怖い。


Shit Mom



ギャラリーの他の作品もぼちぼち紹介できたらなと思います。

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