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【エッセイ】白桃

実は私は三姉妹だ。今までのエッセイに登場する”姉”はすべて長女のことで、次女も存在している。
つまり私は三姉妹の末っ子だ。そう、私はシンデレラなのである。

今書いていて思い出したが、私は昔からシンデレラが大好きで、”学校から帰ったらソッコーでシンデレラを観る”というのが毎日の恒例だった。
いつもシンデレラと自分を重ね合わせながら観ていて、
「はぁ、なんて可哀想なシンデレラ…。こんなにいじわるな姉たちにいじめられて、文句も言わずにせっせと働いて…。3人の中で一番性格もいいし、可愛いし、何から何まで私みたい…。」
実際にはそんなことないのに、シンデレラ気分に浸りたい私は、こうやって陶酔しながら観るのがお決まりのパターンだった。
ちなみにビデオテープが擦り切れるまで観た。

私は末っ子なので当然お下がりの服がまわってくることが多かったが、そんなときも、
「まぁ、仕方ないよ…。だって私はシンデレラなんだもん……。」
と言って、なにかある度に”自分はシンデレラだから”と言い張って納得していた。


長女のあやは、頭が良くおしゃべりで早口でイタズラ好きで、いつも人のことを小馬鹿にしているような女だ。

次女のななは、家族から『お祭り女』と呼ばれるほどうるさいやつで、ちょっとしたことで逆上し騒ぎ立てる。つまりヒステリックな女だ。
ななはとても扱いにくいタイプだが、ヒステリックを起こされると溜まったもんじゃないので、私はいつもななにペースを合わせていた。
ななは2歳年上なのだが、私は小さい頃からななと一緒に”遊んであげていた”らしい。

そしてあやとななはめちゃくちゃ相性が悪い。それもそのはず。あやは人を小馬鹿にするようなタイプで、ななは逆上しやすいタイプだからだ。
あやもやめればいいのに、イタズラ好きが災いして何回でもななをおもちゃにして遊ぶもんだから、ななの機嫌が悪い時なんか最悪だ。ヒステリックを起こしたななは、あやに噛み付くわ髪の毛を引っ張るわで大騒ぎだった(ななの機嫌のいい時は意外とこの2人仲がいい)。
あやはタチの悪いことに、私をからかっても反応が鈍くて面白くないので、感情の起伏の激しいななでわざと遊ぶのだ。
そんなことでうちにはよく近所から苦情が入っていた。本当に申し訳ない限りだ。

2人の喧嘩はあとを引かないので、次の日には2人ともケロッとしている。
でもいつも傍から見るはめになって迷惑している私は、
「あやもいい加減やめればいーのに。」
なんて思っていた。

ある日いつもあんなにうるさいあやが、部屋にこもって出てこない日があった。
私は逆に心配になった。

私「あやー、入るよー。」
あや「やめて!入ってこないで!」
私「|*´ー`*)ノ|Ю ガチャ」
あや「……」

あやは頭のてっぺんが一部だけ坊主になっていて、泣きはらした目をしていた…。

聞くところによると、昨晩あやはいつも通りななを怒らせ、逆上したななは噛んでいたガムをあやの髪につけたようだ。
そのガムはかなり強力に付いてしまっていて、あやは泣く泣くその部分だけ切るしか方法がなかったようだ。

気の毒だったが、少し笑える…。
あやは次の日から必死でその10円坊主のところをピンでとめて学校に行っていた。
ちょうど中1くらいで思春期だったし、しんどかっただろうなーと思うが、普段から人を馬鹿にしまくっているあやだったから、ちょっとざまーみろという感じだった。

案の定あやはまだピンでとめないとダメな状態(正直気休めにしかなってない…)だったので心に余裕がないのか、2人は休戦状態に突入した。
「これでやっと静かになった…」と思ったのも束の間。
まさか私に火の粉が降りかかってこようとは……。


あやとななが話さなくなったので、当然私とななが話す機会が増えた。
私はいつもななの地雷を踏まないように気遣っていたのだが、その日はどうやらミスを犯してしまったようで、なながヒステリックを起こした。
私たちはリビングの小汚いソファに隣同士で座っていたのだが、私は危険を察知し逃げようとした。
その時だった……。


突然、尻に激痛が走った…。


そう、噛みグセのあるななが私の尻に噛み付いたのだ…!!!!!

私は自慢の白桃のような尻に傷を負った。
しかも歯型というなんともマヌケな傷だった。

ちなみにこの歯型は3年間消えないほどしっかりと噛み付かれていた。


あれだけ邪魔に思ったあやのイタズラが、まさか私の尻を守ってくれていたなんて思ってもみなかった。

「早くあやの10円坊主が伸びますように。」
と願わずにはいられない私なのであった。


尻を噛み付かれたと知った時の私の表情↓

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