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【読書】成長しない主人公~『医学のたまご』(海堂尊)~

*この記事は、2019年7月のブログの記事を再構成したものです。


海堂尊の本を読むのは、初めてです。中高生向けに書かれた本書を、ヨシタケシンスケのイラストの可愛さに惹かれて手に取ったわけですが……。

↑kindle版


読んでいて、正直疲れました。途中からは、早くこの世界から解放されたくて、一気に読んだくらい。


主人公は中学生でありながら、その潜在能力を買われて医学部の研究室に属することになった少年ですが、あまりに主人公が未熟で疲れるんですよ。中学1年生、途中からは2年生が主人公なんだから、もちろん未熟であること自体は構いません。でも、まったくもって成長が感じられないのが疲れました。


もっとも、ジュブナイル小説では必ず主人公の成長が描かれるわけで、あえてそれをしていないという点で、意欲作と言えるかもしれません。


その成長のなさが主人公を窮地に追い込み、そこで初めて彼は自分の未熟さに気づきます。しかし結局そこから抜け出せたのは、周囲の大人の助けがあったからこそ。その後彼が反省し、成長したとは思えない終わり方でした。いや、反省したのは事実でしょうが、真に変わっていくようには感じられない。


とはいえ、学問や研究者の世界の怖さというものを感じさせられました。悪役である藤田教授は、デフォルメ化した存在ですが、似たような人は実際に研究者にいるんだろうなと思います。

そして、物語内のマスコミが行ったことにもぞっとしました。インタビュー映像をつぎはぎして、本人が言ってもいないことを、言ったことにしてしまうのです。現実にもそういうことが行われている可能性は、決して否定できないですよね。


あと、海堂尊の「あとがき」の中の言葉が心に残りました。

知らないということは、自分の人生にマイナスに響きます。無知は罪なのです。


見出し画像には、たまごの写真を使わせていただきました。


↑文庫版



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