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これを基に、各学校でのアレンジを加えるべき~『学びの技 14歳からの探究・論文・プレゼンテーション』(後藤芳文・伊藤史織・登本洋子)~

玉川学園の中学3年生の授業「学びの技」のテキストを、市販用にまとめ直したものです。生徒にレポートや論文を書かせる時の参考になるかなと思い、読んでみました。


目標の設定に始まり、実際に論文を書いて発表するまでに必要な心構えや具体的なやり方、細かい決まりなどを順を追って書いています。これに従って進めていけば、ある程度のレベルの論文を書くことは出来そうに思えるので、生徒にとっては1つのマニュアルになるかと思います。


ただ、これはあくまで玉川学園方式なので、ちょっと実際の論文の書き方やフォーマットに、違和感を感じる部分もあります。例えば論題を設定するにあたり、マインドマップを作成することを推奨していますが、それ自体が目的化しかねないなと思いました。もっとも、マインドマップの作成で頭の中が整理される子もいるとは思いますが。


また、実際に論文を書く際のフォーマットにも違和感を感じる部分があり、実際に生徒にレポートや論文を書かせる場合は、改めて各学校独自のフォーマット等を守るように指導する必要があります。

しかし最近の生徒は、何か1つの正解があると思いがちなので、本の体裁でばっちりまとまっているものと、教員が配るフォーマットを記したプリントとでは、本の方を正しいと思いそうです。そういう意味で、この本は生徒にぜひ一度読んでほしいと思う一方、共通テキストとして生徒全員に持たせるのは、慎重になった方が良いかもしれません。


以下、印象に残った部分を備忘録代わりに書いておきます。


灯油ランプの生活が当然だと思っていた人には、その生活は「問題」にはなりません。一方、エジソンの頭の中には「現実」と「夢」や「理想」との落差から生じた「問題」がありました。「人々が夜の暗闇から解放されるにはどうしたらよいか」という「問題」です。「問題」は、客観的に存在するのではなく、「夢」や「理想」と「現実」との落差を感じる人々の頭の中にあるのです。


ある本が読むべきかどうかを見極めるブラウジングにあたり、タイトル、「はじめに」、目次と並んで、索引も手掛かりになるという意識はなかったので、なるほどと思いました。


アンケートの集計にあたり、「アンケートの項目を数値化しておくと、数値の入力だけで済むため手間が省け、集計しやすい」というテクニックは、ぜひ覚えておいて実践しようと思います。


全体として、一読に値する内容である一方、これを基に各学校でのアレンジを加える必要があると思います。そうすることで、より良いレポートや論文を書かせることができるのではないでしょうか。



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