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水菜さんの高い熱量が伺える~『遺跡発掘師は笑わない 縄文のニケ 西原無量のレリックファイル』(桑原水菜)~

*この記事は、2020年1月のブログの記事を再構成したものです。


「遺跡発掘師は笑わない」シリーズの第9弾です。もう第10弾も出ているのですが(注:2020年1月現在)、図書館での順番がようやく回ってきて、発売から約1年後にして読みました。

↑kindle版


題名通り、今回は縄文時代の土器や土偶などをめぐる話です。2018年の東博の「縄文展」のことも思い出しつつ、楽しく読みました(水菜さん自身、この展覧会に行かれたとブログに書いてありました)。



ただ惜しいのは、土器の描写を一生懸命してくれてはいるのですが、イマイチよくヴィジュアルが分からないものもあるのですよ。人物の挿絵はいらないけど、土器の挿絵が欲しかったなぁ。


あと裏テーマ(?)が、諏訪大社の祭神である建御名方命。出雲の国譲りの争いに負けて諏訪に逃れてきたものの、それにより建御名方命自身が地元の神を追い出してしまった、という複雑な経緯を持つ神様です。確か「風雲縛魔伝」シリーズでも建御名方命に触れていたかと思うので、ある意味水菜さんにとってライフワーク的テーマなんでしょうね。


シリーズの今までの作品の中では一・二を争う面白さでしたが、どうしても登場人物をたくさん出してしまい、話をごちゃごちゃさせがちなのが玉に瑕かなと思います。でも発掘や縄文研究についての知識を惜しみなく盛り込んで書いているので、水菜さんの熱量の高さが伺えます。興味深かったのは、研究者のなかには畑を持っていて、自ら農作業をすることで、出土した石器の用途の当たりをつける人がいる、というエピソード。なるほど~と思いました。


あと、いつもどおり萌絵ちゃんが良い味出しています。縄文クッキーを作るところが秀逸。そういうところが萌絵ちゃんの魅力だけど、無量に見られたら、またドン引きされるのでしょうね。


見出し画像は、上記の縄文展で撮った縄文土器の部分写真です。


↑文庫版



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