見出し画像

21世紀の視点で物語を読み直すと~『創竜伝2<摩天楼の四兄弟>』(田中芳樹)~

2巻に突入しました。


1巻の比じゃないくらい、四兄弟がいろいろなものを壊しまくっています。作中では名称を変えていますが、東京ディズニーランド、レインボーブリッジ、東京ドーム、都庁をはじめとする新宿副都心一帯……。



高校生だった当時は気にしていませんでしたが、あまりに物的被害も人的被害も大きすぎですよね。彼らは身を守っているだけとはいえ、過剰防衛という言葉が頭をよぎります。文部省が文部科学省になってしまった21世紀的には、ちょっときついかなと。


とはいえこの物語は20世紀の遺物という訳ではなく、残念ながらというべきですが、以下の一節は当時も21世紀の今も心に刻むべきです。


非合法なテロリストなどこわくない。ほんとうに恐ろしいのは、権力を持ち、法をつくり、法によって人を罪におとすことができる連中だ。アドルフ・ヒットラーも、ヨシフ・スターリンも、一国の支配者であって、町の無法者ではなかった。


周庭(アグネス・チョウ)をはじめとする香港の活動家たちの行為が、なぜ罪とされるのか。そしてそれを他人事と思っているうちに、気づけば自分も罪人とされてしまうのではないか。そのことを真剣に考えないと、日本も世界もとんでもないことになってしまうかもしれません。


感慨深かったのは、以下の一節。


「人類が冥王星に着く前に、日本のベースボールが大リーグに追いつけたら、たいしたものだ」


いまだ追いついたとは言えないのでしょうが、日本人大リーガーが何人も登場するとは、この2巻を最初に読んだ1980年代末には想像もしませんでした。


見出し画像は、作中では「フェアリーランド」と呼ばれている東京ディズニーランドのパレード。肖像権保護のため(?)、あえてキャラクターの皆さんの顔が葉っぱで隠れている写真を使用しました。

作中で「一匹もほんものの動物はいない。(中略)清潔で無機的で無臭の世界」と評されていますが、東京ディズニーランドも東京ディズニーシーも、いつの間にか居ついた動物たちによって、今は一種の生態系が構成されていますよね。

とはいえ「フェアリーランドをつくった人は、動物映画をずいぶん制作したが、もしかしたら動物がほんとうはきらいだったのかもしれないな」という始の指摘には、当時も考えさせられたものです。






この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

記事の内容が、お役に立てれば幸いです。頂いたサポートは、記事を書くための書籍の購入代や映画のチケット代などの軍資金として、ありがたく使わせていただきます。