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増える農薬の使用量~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.467 2023.11.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第70弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「ジェンダーの生物学」です。


「ペアで子育てをするフラミンゴの中にもオス同士のカップルがいて、オスものどの奥からお乳を出せるので、盗んできた卵をあたためて、ひなを育てます。研究者たちは、このような事実に普通に気づいていたでしょう。しかし関心をもたなかったので、目の前で起こっていても記録として残さなかったのだと思います」

p.12

進化心理学などを研究する坂口菊恵さんの言葉です。「関心をもたなかったので、目の前で起こっていても記録として残さなかった」というのは、ジェンダーの生物学に限らず、他のことにも当てはまる気がします。また、「数学は得意ではなかったので、文系で入って、理系に転身し」(p.12)たという坂口さんの経歴自体が、境界を超える感じですね。


「1905年にXY染色体が発見され、20年代に性ホルモンの働きが明らかになると、XYが雌雄のシンボルとして確立してしまいました。実は当時のヨーロッパの学術界では、性のありようは雌雄に二分されるものではなく、むしろ連続的なものであるという認識が広がっていて、Xが女性染色体、Yが男性染色体とくっきり二つに分けられることを危惧し、反対する研究者がいたんです」

p.16

「性はスペクトラム(連続体)で、その境界は動かし得るものなのです。たとえば性染色体の数が通常と異なる人は意外におられますが、外見からも区別がつかず、おそらく多くは本人もそのことに気づいていません」

p.16

この2つの言葉も、興味深かったです。


特集以外では、スペシャル・インタビューの奈良美智の言葉が印象に残りました。

お互いの顔がわかって、ちょっとしたことでも誰かの役に立つことができ、自分のやるべきことがわかる。

p.06

奈良さんのいう「小さなコミュニティ」の定義の一部ですが、そういうコミュニティ、良いですね。


奈良さんが敬愛する人に、岩手県花巻出身の宮沢賢治がいる。その理由は「彼は中央にいず、地元に住み、小さなコミュニティを大切にして生き、それでいて創作世界の広がりは宇宙的だったから」。「(中略)もし彼が早くに才能を認められて都会に住み、『宮沢先生、宮沢先生』と呼ばれていたらどうなっていたのか……」と奈良さんは想像する。果たして、今残っているような作品は生まれていただろうか。

p.08

まず生まれていないでしょうね。というか、「宮沢先生、宮沢先生」と呼ばれている賢治が、想像つきません。


「池内了の市民科学メガネ」ではガムを噛む効用を取り上げていました。

日本では平安時代の頃から、元日と6月1日は「歯固めの日」と決められていたそうです。その日には硬い餅や昆布など歯ごたえのあるものを食べ、みんなが健やかに暮らせるよう家族の長寿と健康を祈る習慣があったそうです。

p.10

ガムの効用は記事中のものを取り上げても、消化促進、ストレス緩和、脳活性化、歯茎や顎の骨を丈夫にする、虫歯予防、空腹感緩和など、いろいろです。私はガムを噛む習慣はないのですが、ちょっと試してみようかな。


三重県四日市市の商店街「諏訪新道」の、電話ボックスを小さな図書館「USED BOOK BOX」に変えた話も面白かったです。こういう試みがどんどん広がれば良いのに。


農薬に関する記事には、目を疑いました。

『農薬アトラス』の報告によれば、世界の殺虫剤、除草剤、殺菌剤の消費量はこの数十年で急増。1990年から2017年までに、世界の農薬消費量は80%増加し、今や年間400万tにも上るという。

p.20

オーガニック農業の試みなんて、吹き飛んでしまう感じですね。前号に出てきたマヤの伝統農法「ミルパ」のやり方とは、対極にあります。


農薬の使用量が減るどころか、むしろ大幅に増えているとは。「ある農薬は畑に1回散布するだけで、周囲1000kmに影響を及ぼす可能性がある」(p.21)そうです。


化学薬品会社は、欧州で禁止されている物質を世界のどこかで販売し続けることが可能だ。欧州で禁止されている農薬の輸出国トップ3は英国、ドイツ、イタリアで、最大の輸入国はブラジル、ウクライナ、南アフリカだ(ちなみに日本はパーキンソン病を引き起こす可能性が指摘され07年にEUで禁止された古い世代の除草剤「パラコート」の販売先となっている)。(中略)近年ベルギーなど一部の国々は、欧州で禁止されている製品の海外輸出について全面的な停止を決めた。

p.21

ヨーロッパで禁止されている製品を、規制が緩いアジア・アフリカ・中南米に輸出して儲けまくっている大手農薬企業、許せません。自国で使えない製品の輸出を禁じるベルギーなどの対応は、当然だと思います。


フランスの国立農業食料環境研究所が昨年3月に発表した研究では、別の見解が示されている。もし我々がその気になって闘えば、大量の農薬を使わずに欧州の全食糧需要を満たせるはずだという。そうなれば、生態系や生物多様性を損なうことなく、欧州の食糧供給を維持しつつ人間や動物の健康を守ることができる。私たちのニーズを満たし、食糧安全保障を確保する別の方法があると。

p.22

我々市民が声をあげれば、そして選挙を通じて意思を示せば、世界は変えられるはずなわけです。


「世界短信」の、南アフリカで発見された15万年前と推定されるヒトの足跡の中に、履物をはいていた可能性があるものがある、というニュースも興味深かったです。


今号も、学ぶことが多く、盛りだくさんでした。
「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。ただし今号については、2023年12月1日に次の号が出るまでは、路上の販売者さんからのみ購入することができます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださったY.Tさん、いつもありがとうございます!



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