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小川糸作品の初心者には、ちょっと厳しいかも~『リボン』(小川糸)~

少し前に、小川糸の『つばさのおくりもの』のレビュー記事をアップしました。



『つばさのおくりもの』とセットというか、その本編にあたるのが、今回ご紹介する『リボン』です。



ひばりが祖母の「すみれちゃん」と協力して孵したオカメインコのリボンが、出会った人々の人生の方向を、少しだけ変えていく話です。本来は『リボン』を先に読んで、『つばさのおくりもの』を読むのでしょうが、私のように逆の順番で読んでもまったく違和感はありませんし、それはそれで味わい深いものがあると思います。


私はもともと結構長い間セキセイインコを飼っていたので、リボンの描写には当時のことを思い出し、懐かしくなりました。オカメインコはセキセイインコより大きいので、ちょっと苦手だったのですが、オカメインコも悪くないなとも思い、飼ってみたくなりました。


結果的にはなかなか良い作品でしたが、読み始めてしばらくは、読み進めるのにちょっと苦労しました。「そんなやり方で雛は返らないだろう」とか、「10歳の女の子の語彙としておかしい」とか、いろいろ違和感や突っ込みどころが満載だったので。『食堂かたつむり』で感じた「ギリギリの線」を越えてしまい、綱渡りに失敗している気がしました。もしこれが初めて読んだ小川糸作品だったら、早々に脱落していた可能性もあると思います。



『つばさのおくりもの』で『リボン』の結末をだいたい知っていたので、そこまでの経過を知りたい気持ちがあったからこそ、読み進められました。とはいえ、想像していた結末とは実はちょっと違ったのは、驚きでした。でも、悪くない結末だと思います。


小川糸作品お決まりの、人々の再生の物語ですが、完全再生ではなく、「この後は人生が少し良い方向に進むだろう」という程度の再生なのが、逆にリアルです。


見出し画像は、証明書付きのベルリンの壁の欠片。永遠にあるかと思われたベルリンの壁が崩壊したこと自体も、そしてそれからもう30年以上経つことも、信じられません。



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