自分なくしをゆるく提案してくれる~『さよなら私』(みうらじゅん)~
「見仏記」シリーズからスタートし、結構集中的にみうらじゅん作品を読んできましたが、とりあえず一区切りと思い読んだのが、『さよなら私』です。
↑kindle版
集中的に読んできただけに、「自分なくし」をはじめ、『マイ仏教』など、他の作品でも書かれていたことが出てきます。
じゃあ読まなくても良いかというと、もちろんそういうわけでもなく、『マイ仏教』より更にゆるく、人生のコツが書かれているので、悪くありません。
以下、印象に残った部分。
あなたの脳はあなたの今の限界を知り尽くしています。才能ではなく、才脳。
みうらじゅんお得意の、同音異字で言葉の意味をちょっとずらすものです。ある意味ちゃんと自分のことは知り尽くしているのに、それでも限界を超えたことを望んでしまったり、逆に限界を手前に持ってきてしまったり、やっかいですね。だからこそ、
あきらめないで続けていると、いつか変わるかも
ということになります。
人生の場合、本当はいいか悪いかじゃなく、今の自分で満足しているのかしてないのか? そこのとこを問われてるんじゃないのでしょうか。
鋭い! 深い!
悩みは突然やってくるものではなく、さまざまな原因が重なって、それが飽和したとき、初めて悩みとして表われます。(中略)だから、悩みを解消するにはその原因の一つ一つをじっくり解き、明らかにすることが大切です。
一方で、じっくり解く必要すらないのかもしれません。
他人への期待と他人との比較が大本です。これさえ気をつけて、しないように心がけていればたいがいの悩みは解消します。
シンプルなだけに、難しいです。
良い言葉も知りました。
極楽の余り風:猛暑の中、たまに心地よい風がどこからともなく吹き込んでくること。
50歳くらいになって、かつて卒業した学校から突然、修学旅行のお知らせがきてもいいじゃないですか。
これ、ほんとそう思います。学生時代に修学旅行に行った時とは違う発見が、絶対あるはずです。でも当時も意外と真面目に「見仏」していた記憶があります。数人で前後に並び、それぞれずらして手をあげて、千手観音風の写真を撮ったりもしていましたが(^-^;
人は他人と比較し、自分の置かれた状況に一喜一憂する生き物です。(中略)本来は善悪の判断だけを教えておけば事足りる学校で、勝ち負けまで教わってしまった悲劇なのです。
個人的には勝ち負けにあまり囚われないようにと教えているつもりですが、生徒たちは入学時からすでに異様なまでに勝ち負けにこだわっているので、そこから考え方の転換を図らせるのは難しいです。はぁ。
”自分”を無くせないのが人間と諦めず、「ぼちぼちお無くなりになってもよろしいんじゃないでしょうか?」と日々交渉を続ける努力が大切
「自分を無くせ!」と声高に叫ぶのではなく、こういう風にゆるく提案してくれるのが、みうらじゅんの優しさだと思います。
やはり読んで良かったです。
↑文庫版
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