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イマジン【掌編】

「イマジンしてみてよ」
突然、ボブがいってきた。

「何を?」
私はぶっきらぼうに返事をした。

「心のなかに、ピースな世界をイマジンしてみてよ」とボブは言った。
「そこはどんな世界だい?」

「そうだね、それは・・・」
私はボブを睨めつけながら言った。
「君がいない世界だね」

「おお、なんて悲しいことを言うんだ・・・」
ボブはそう言って手のひらにある銃をひらひらとわざと見せつけてきた。

私は反射的に背筋が緊張した。
縄で縛り付けられている手首が痛む。

「イマジンしてみなよ、どんな状況でも、気持ちしだいで平和になれるんだ」
ボブは大きく腕を広げた。右手に持った銃が鈍く光った。
「ほら、感じてごらん、ほらあ、僕は今とても幸せな気分だ」

「じゃあ、ボブ、君こそ僕の立場をイマジンしてみなよ」
私は緊張をボブにさとられまいと平静を装うためにわざとゆっくりと話した。
「突然、友人に監禁され、銃をつきつけられている私の立場を。なんの状況説明もなく、こんなことをするなんて、おかしいよ。悪ふざけもここまできたら、立派な犯罪だぞ」

ボブはゆっくりと首を横に振った。とても失望している様子だった。
「何を今更・・・、君が僕の命を狙っている殺し屋だってことくらいもうとっくに調べがついているんだ」

「・・・なに?」

ボブはゆっくりと私に銃口を向けた。
「誰に頼まれたか言うか、それとも平和をイマジンするかどっちだ?」

「わかった、わかったから銃をおろしてくれ。依頼人はAグループのボブだ。同じ名前なのが気に食わないと、わたしにお前を消すように頼んだんだ」

「そうか、やっぱりAグループのボブだったか。くそ、先に手を打たれるとは思いもよらなかったな」

わたしは激しく冷や汗をかいていた。依頼者を吐いてしまった。もう、《こっちの世界》でも生きていけそうにない。

「じゃあ、最後に、イマジンしてみなよ」

「また平和についてか?」

「いや」ボブはおもむろに笑顔を作った。
「Aグループのボブが、本当は俺だったってさ」

ボブはそういうと、顔のマスクを剥ぎ取った。そこにいたのはなんとAグループのボブだった。
私は大いに混乱した。これは一体どういうことなんだ。私はずっと試されていたのか、そうだったとしてもどっちみち終わってしまったな、なぜなら私は彼のことをまんまと白状してしまったのだから。

「・・・イマジンします」
私は震える声でいった。
「平和な世界を、、、イマジンします」

Aグループのボブは満足そうな笑顔をした。
「早くそう言ってくれればよかったんだ。じゃあ、君を釈放するよ」

こうして、私は解放された。
私の心には平和な世界が広がっていた。


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