㊗️受賞
第17回「わたくし、つまりNobody賞」
哲学研究者であり、哲学対話ファシリテーターでもある永井玲衣さんの哲学エッセイとなります。
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水の中をたゆたうように、言葉に揺られるような文章を読んでいると癒されます。
ユーモアがあり、静かで柔らかくありながらも感情が揺れ動き、コミカルで面白く、とても好きな文章です。
哲学対話をしたことはないけれど、疑問を投じるという点では、会社の会議も似たようなことかもしれません。
だれかの発言が、水面に投げた小石のように波紋を広げる。波紋に触れた人には問いが生まれ。波紋が落ちつくと思考が回りはじめる。そこへまた問いが投じられる。
ひとりでは至ることのできない深さへ、対話を続けることで潜っていくことになります。
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哲学はわかりにくい。いや、わからない。日常とは無縁の難しい言葉で構築されていて、深く考えないと答えにたどり着けないようになっています。
あえて難しくして日常から切り離す意図がある。哲学を学ぶことの最大の効果は「安易な答えを信仰して絶望しなくなること」ではないかと考えています。
そんな難しいことは本職の哲学者にお任せするとして、日常にも哲学は溢れています。
「なぜ?」「どうして?」生きていると「?」が浮かんできます。生まれた問いを深掘りしていくことが哲学のはじまりです。
はじめは水面でちゃぷちゃぷと遊んでいるだけでもいいと思います。それを楽しそうだなと感じた人が集まってくると対話が生まれます。
対話のリレーをつなげていると思考が深まり、ひとりでは解けないような苦しい問いにも挑戦することができます。
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晶文社:2021.9.28
単行本:268ページ