見出し画像

【水中の哲学者たち】 - 息をするように考える -

㊗️受賞
 第17回「わたくし、つまりNobody賞」

哲学研究者であり、哲学対話ファシリテーターでもある永井玲衣さんの哲学エッセイとなります。

永井 玲衣(ながい れい)

1991年、東京都生まれ。哲学研究と並行して、学校・企業・寺社・美術館・自治体などで哲学対話を幅広く行っている。哲学エッセイの連載なども手がける。独立メディア「Choose Life Project」や、坂本龍一・Gotch主催のムーブメント「D2021」などでも活動。詩と植物園と念入りな散歩が好き。

amazon本の概要より

【授賞理由】

永井氏は、仲間を集めてアゴラを作りたいのではないか?それは、無知の知をわかった上で、問いたい、知りたいことが、いつもあふれているからなのだろうが、更に、人の問いも知りたいのであろう。結果として、その多くの問いに明確な答えは出ず、問いは問いを呼び、更なる深み(水中)にはまるばかりなのだが、それをヨシとする姿勢は凜々しい。出ない答えを求めてもがくその姿を、あえて人々(読者、子ども)に見せる人だからこその信頼感もある。哲学者の役目は、自分で考えるだけでなく、人に考えさせることでもあったのだから、その実践は、正しい。これからも、どんどんいろんなことにぶつかって欲しいとの期待を込めて当賞を贈ります。

わたくし、つまりNobody賞 HPより

 ◇◇◇

水の中をたゆたうように、言葉に揺られるような文章を読んでいると癒されます。

ユーモアがあり、静かで柔らかくありながらも感情が揺れ動き、コミカルで面白く、とても好きな文章です。

哲学対話をしたことはないけれど、疑問を投じるという点では、会社の会議も似たようなことかもしれません。

だれかの発言が、水面に投げた小石のように波紋を広げる。波紋に触れた人には問いが生まれ。波紋が落ちつくと思考が回りはじめる。そこへまた問いが投じられる。

ひとりでは至ることのできない深さへ、対話を続けることで潜っていくことになります。

 ◇◇

哲学はわかりにくい。いや、わからない。日常とは無縁の難しい言葉で構築されていて、深く考えないと答えにたどり着けないようになっています。

あえて難しくして日常から切り離す意図がある。哲学を学ぶことの最大の効果は「安易な答えを信仰して絶望しなくなること」ではないかと考えています。

そんな難しいことは本職の哲学者にお任せするとして、日常にも哲学は溢れています。

「なぜ?」「どうして?」生きていると「?」が浮かんできます。生まれた問いを深掘りしていくことが哲学のはじまりです。

はじめは水面でちゃぷちゃぷと遊んでいるだけでもいいと思います。それを楽しそうだなと感じた人が集まってくると対話が生まれます。

対話のリレーをつなげていると思考が深まり、ひとりでは解けないような苦しい問いにも挑戦することができます。

 ◇

晶文社:2021.9.28  
単行本:268ページ

みなが水中深く潜って共に考える哲学対話。
「もっと普遍的で、美しくて、圧倒的な何か」
それを追い求めて綴る、前のめり哲学エッセイ!

「もっと普遍的で、美しくて、圧倒的な何か」それを追いかけ、海の中での潜水のごとく、ひとつのテーマについて皆が深く考える哲学対話。若き哲学研究者にして、哲学対話のファシリテーターによる、哲学のおもしろさ、不思議さ、世界のわからなさを伝える哲学エッセイ。当たり前のものだった世界が当たり前でなくなる瞬間。そこには哲学の場が立ち上がっている! さあ、あなたも哲学の海へダイブ!

人々と問いに取り組み、考える。哲学はこうやって、わたしたちの生と共にありつづけてきた。借り物の問いではない、わたしの問い。そんな問いをもとに、世界に根ざしながら世界を見つめて考えることを、わたしは手のひらサイズの哲学と呼ぶ。なんだかどうもわかりにくく、今にも消えそうな何かであり、あいまいで、とらえどころがなく、過去と現在を行き来し、うねうねとした意識の流れが、そのままもつれた考えに反映されるような、そして寝ぼけた頭で世界に戻ってくるときのような、そんな哲学だ。(「まえがき」より)

amazon本の概要より


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?