形あるものは壊れる 〜私と伯母の関係〜
九州の田舎から上京したてのころ、私は伯母が1人で暮らすマンションに間借りをし、一緒に暮らしていた。
その伯母は、だいぶユニークな人で18歳から22歳まで一緒に暮らした私はかなり影響を受けたように思う。
▪️形あるものは壊れる
伯母は、妹である私の母と違い、とにかく新し物好き、好奇心が強くおうちの家電なんかも最新のものが揃っていた。
当時、まだあまり普及していなかったドラム式洗濯機や食洗機(いずれもドイツ製)、そして24時間風呂(ジャノメの湯名人)だってあった。
私はそんな最新家電の使い方もよく分かっていなかったので、ドラム式洗濯機の扉の開け方が分からず無理クリ引っ張り壊したり、食洗機に入れちゃいけない食器を入れてダメにしたりして、よく怒られていた。
そのくせ、伯母自身がお茶碗割ったりしたら「形あるものは壊れる、うんうん」とか言って、何もなかったことにするのよ。
▪️口ぐせは伝染する
伯母とは食事を共にし、色んな話をした。学校のことや家族のこと、バイトのこと。伯母からも仕事の話や映画の話、いろいろ聞かせてもらったように思う。
伯母はどんなときも「あっそう」という相槌を打つ。
到底話に興味がなさそうな相槌なんだけど、実は興味があって、もっと聞きたいと思っていたらしい。けど相槌は「あっそう」
私もそれに慣れきってしまい、興味のある話でも「あっそう〜」と言うようになってしまった。こわいこわい。
口ぐせは伝染するのである。
新しい環境に行った時に、私がオネエ言葉を大袈裟に散らかすと、いつの間にかみんなオネエ言葉になっていることがある。
気をつけよう、口ぐせは伝染する。
▪️初任給の使い方
就職して、初任給が出たのでお世話になった伯母にご馳走しようと、母親と3人で食事に出かけた。
行き先は「串家物語」
自分で好きな串材料を持ってきて、テーブルで各々揚げる。
新しい!(当時)
新し物好きの伯母はきっと気に入って喜んでくれるに違いない、とか思ってさ。
食べてる途中に伯母は言った。
「客に散々働かせて、このお店はいったいどうなってるの」
なにか社会問題に訴えかけているような言い方だった。これだから日本は…みたいな。
良かれと思って連れてきた私は地味に傷ついたよ。
▪️更年期の影響
間借りを解消し、私も自立。何年か経った時に久しぶりに伯母たちとの会食に出かけた時に言われた。
「あの時はね、私は更年期の真っ只中だったのよ。離婚したばかりだったし、マーチョくんがいなかったら自ら死を選んでいたと思う」
って。
あっそう。
私でも役に立っていたんだね。良かった。
そんな伯母。
今は九州の実家に戻り、70も後半になろうというのに自動車運転免許を初めて取得。相変わらずのユニークぶりを発揮し、私に話題提供してくれている。
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