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一家の大黒柱になるということ
専業主婦だった母親を見てきて、私はずっと専業主婦にはなりたくないと思っていた。
それは、「経済的な自立は自由を得る事」だと思っていたからだ。
私の父親は古い考えを持っている人で、母親が働く事を許さなかった。
だから、私の母親は経済的に父親に頼らざるを得なかった。
両親から何度か離婚を考えていると告げられたが、最終的に離婚に至らなかったのは、母親が経済的に自立していなかったからだと思う。
専業主婦だった母親は、離婚して経済的に自立して生活していけるのか不安で、離婚に踏み切れなかったのだと思う。
私はあまり幸せそうでない両親を見て、どうして離婚しないのだろうとずっと疑問に思っていた。
父親の横暴さに反発するようになり、父親との関係が悪化してからは、母親が父親と離婚してくれていれば良かったのにとさえ思っていた。
経済的支えを失う事の恐れから、父親の横暴さに我慢している母親を見て、こうはなりたくないとずっと思っていた。
そういう両親を見てきていたからこそ、離婚に対する抵抗もあまりなかった。
「結婚生活を続けている事=幸せ」ではないと知っていたからだ。
子供の為に離婚すべきでは無いという意見もあるが、私はずっと両親に離婚してほしいと思っていたので、結婚生活を続ける事が必ずしも子供にとっていい事では無いと身を持って感じていたからだ。
だからこそ元旦那から離婚を言い渡された時、すごくショックで悲しかったけれど、比較的早く離婚を受け入れる事が出来た。
気持ちが離れてしまっている元旦那と無理やり結婚生活を続けても、意味がないと思ったからだ。
離婚に踏み切る事が出来たもう1つの大きな理由は、私が仕事をしていた事もある。
金銭的な不安はもちろんあったけど、元旦那と別れても収入源があるという事は、非常に大きな心の安定剤だったと思う。
だけどシングルマザーになって、一家の大黒柱になって、自分だけでなく子供達の生活も背負って働く事の大変さを知った。
自分が職を失えば、自分だけでなく子供達も路頭に迷うかもしれない。
共働きの家庭であれば、自分が仕事を失っても、パートナーの仕事があるからある程度の安心感もあるだろう。少なくとも私はそうだった。
だけど、今はシングルマザー。
私が働いて稼がないと食べてはいけない。
言い換えれば、私にはもう専業主婦になるという選択肢もないのだ。
「経済的な自立は自由を得る事だ」と今も思っている。
だけど今の私は、経済的に自立する為には働き続けないといけないのだ。
自由を得る為に、自由を失っているような気がするのだ。
だからこそ、「専業主婦でいる」という選択肢がある人たちが羨ましく感じたりもする。
あんなに専業主婦にはなりたくないと思っていたのに、羨ましく感じるのだ。
多分それは、専業主婦でいる事が羨ましく感じているのではなく、そういう選択肢がある事が羨ましいのだと思う。
元旦那から「子供達と日本に帰る事」を許可されなかった時、子供達と日本に帰れなかったから悲しかったというよりは、その選択肢を失った事が悲しかったんだと思う。
私には多分「自由」でいる事がすごく大切なんだと思う。
だからこそ、自分で選択した人生を送りたいし、多くの選択肢を持ちたいのだ。
自分が一家の大黒柱になって、横暴な父親だったけれど、家族の大黒柱としてずっと1人で経済的に私達を支えてくれていた父親の偉大さを知った。
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