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でますか

「テレビのプロデューサーから聞いたんだけど…」

対面して人と話す機会がめっきり減っているかと思いきや、朝晩、普通に通勤している方たちも依然として多く見かけます。テレワークって進んでいるのでしょうか?

「桜は満開なのに、それほど心が躍らない」という、初めて覚える不思議な感覚です。

テレビ局では、スタッフの半分以上、下手すれば8割くらいがリモートワークに移行され、ある局では、会社貸与のPCがAIで管理され、稼働していないとサボッていると見なされ、電話がかかってくる仕組みだとか。

まぁ、見張り役が、上司からAIに替わっただけで、うぜぇおっさんから
ネチネチ言われるよりは、職場の摩擦が減るかもしれません。

対面会議は減ってはいるものの、下請けの制作会社は動かざるを得ないので
普通に集まって会議があります。どこの業界でも下請けはつらいですね。

で、おととい制作会社で行われた会議でのこと。

誰かが「こんなメールが来たんすけど」と切り出しました。

チェーンメールです。すでに武漢での騒ぎがあった頃から、手を変え品を変え、いろんなチェーンメールが出回っています。

最近のネタは「ロックダウンのXデー」。4月1日だとか2日だとか…

先に申し上げると、今回の話はチェーンメールの「内容」よりも「見分け方」についてであり、妙なガセネタをお伝えするものではありません。

このブログを読んで下さっている方は、リテラシー(読み書き能力)の高い方たちだと、勝手に期待していますが、念の為、ガセネタを流そうって話ではないのでお含み置きして、よろしければ読み進めてください。

そのスタッフは、友人から来たというメールを見せてくれました。
「4月1日にロックダウンがあるらしい。テレビ局のプロデューサーからの情報だから、確度が高そうなんで、教えておくね。大切な人に回してあげてください。」

ざっと、こんな内容だったのですが、会議の場には、もちろんテレビ番組のプロデューサーがいましたから、「これ、◯◯さんが流したんじゃないの~?」なんてお約束のたわむれがありつつ、個人的には300%チェーンメール確定なんで、あえて半信半疑なフリをして乗っかっていました。

会議終了後、居残って作業をしてしたら、別の若手男性スタッフ(以下、イケメンスタッフ)が、切り出しました。

「自分の彼女が中国大使館の偉い人から聞いたんですけど、一週間くらい前に、日本政府から大使館にロックダウンの予定連絡があったって…」

はい、はい、はい、来ましたー ってとこなんですが、イケメンスタッフの彼女が中国人だということを、以前から知っていて、実家が裕福なことも聞いていたので、一瞬「マジかよ」という空気が漂いました。

イケメンスタッフは、ちょっと前に送られてきたという、ラインの写メを探し出しました。

すると、別の女性スタッフが「そういえば、9・11の世界同時多発テロのとき、犠牲者にユダヤ人がいなかったよね。起こるのがわかっていたから、事前に連絡が回っていたんだよね」と、言い出しました。

確かに、当時そんな都市伝説も出回りましたが真偽のほどは不明です。

そして、イケメンスタッフに送られてきたという写メを見てみると最後の方に…

「テレビのプロデューサーが…」

はい、出ました。おいおい!さっき話していたチェーンメールと流れ一緒じゃん! もう、中国大使館って言うからさぁ… 君の彼女も、まんまと…

    +  +  +

3歩くらい引いて見ていただきたいのですが、これらのくだりには、私達の脳が起こしやすい思考の錯覚が織り込まれています。

「テレビプロデューサーが言っていた」

おそらく一般的には、テレビのプロデューサーっていうと、なんか偉くて、情報をいっぱい持っていて、みたいなイメージがあるのかもしれません。

そのため、勝手なイメージによる「ハロー効果」が起こります。
ハロー効果とは、一つの属性値に引っ張られて、他の属性値も底上げされてしまう現象で、プラスマイナス、どちらもあります。

つまり、肩書だけで判断しちゃうってヤツです。

普段、テレビプロデューサーと仕事している立場で言うと、プロデューサーだから「偉い」とか「凄い」ってのは、どうなんでしょう?普通の人間です。なので、もし出会ったら普通に「人間的には…」いう目線で見るのがいいと思います。

だいたい、ロックダウンという史上初のことが決行されるとなったら、
一般へのアナウンスまで超トップシークレットです。それを決めている人たちは基本的に自分の利権を軸に考える人たちだから、おいそれと漏らすことは極めて少ない… ほぼ無いと考えるのが妥当でしょう。

通常、テレビの報道でいうと、永田町にあたりに詰めている番記者が情報収集して報道局の偉い人に伝えて…といったプロセスが踏まれるので、いきなり一介のプロデューサーが知ることは、ほぼ無いと思いますし、仮に知った場合、そんな重大情報を部外者に漏らすとは思えません。

ひとくちにテレビのプロデューサーといっても、役割はさまざまです。全体を見る人から、お金の勘定だけする人、人繰りだけをやる人、タレントの仕切りをする人などなど、、、会社で言うと、管理者ですね。一方、ディレクターってのは、制作する人で、同じ横文字でも、やっていること、責任がだいぶ異なります。

今回のチェーンメールには、中国大使館というワードも出てきますが、これはもともと武漢で始まったとされていることもあって、大使館との因果関係は無いにも関わらず少数のサンプル情報から、極めて小さい法則を真実と思い込んでしまう「少数の法則」も働いています。

また、「利用可能性ヒューリスティック」も働いているかもしれません。
脳は、すぐに利用できる情報だけを使って、答えを出そうとします。つまり、思い浮かびやすい、イメージしやすい情報だけを使って、答えを導こうとする認知バイアスです。

人間は、すぐに思い浮かばない情報は、無視して判断しようとする性質があります。判断にとって本当に必要な情報が欠落していることに気づかないところに危険な問題が潜んでいます。

一瞬冷静に考えればわかります。武漢は、「始まったとされる場所」の情報。中国大使館は、「連絡を受けたとされる場所」の情報。中国つながりで脳が早合点するのかもしれません。これがレソト王国大使館だったら、それほど騒がないと思います。
(※レソト王国の関係者の方がいたら、すいません。あくまで認知度が高くないであろうという意味での一例です)

そして、チェーンメールを見分ける大きなポイントは、「回してください」というフレーズ。人に口コミするかどうかは、聞いた側の勝手なんだから、「回して」なんて命令される筋合いはないでしょって、感じです。

「大切な人」に「回して」下さい。という、人の善意につけ込むようなフレーズこそ、チェーンメールならではの特徴です。

真に受けて、回そうものなら、愉快犯の思う壺。ここ要です。「テストに出ま~す。」ただ、テストは、突然やってくる、まさに抜き打ちテストだから、厄介なんですよね。

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