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「光る君へ」19話「放たれた矢」

いやー!今週も不穏な終わり方でしたね。いいぞ!

1.これまでの関白とは違う道長


「右大臣」「内覧」の地位を得て、実質的な政権の頂に立った道長。
帝から「関白にはなりたくないのか」と聞かれて、「なりたくありませぬ」と返す道長。
帝が驚いて理由を尋ねると、
「関白は陣定(じんのさだめ=貴族たちの会議)に出られないから」と答えます。

帝はさらに、
「後から記録を読むことができるが、それではダメなのか」と続けます。
道長は、
「記録だけでは意味がない。その場にいる者の声を聞かなければならない」と述べました。
「事件は現場で起こってるんだ、現場に居なくして何になる」といったところですね。

史実の道長も、「関白」という呼称を欲しがらず、自由に動ける右大臣の地位を望んだと言われていますので、史実に則しているでしょう。

兼家や道隆は、家のためにかなり強引な身内贔屓・政権運営を行うところがあったので、なおさら新鮮に映ったのかも知れません。

やはりこの道長、鎌倉殿の義時、もっといえば劉邦のような大きな器を持っているような気がします。
圧倒的カリスマというわけではないけれど、それゆえに下の人が動きやすい。

陣定でも、理知的な判断を下す道長は、藤原実資も一目置いている様子。

道綱から、「内大臣殿(伊周)が右大臣殿(道長)に突っかかったのだが、右大臣殿は軽くあしらってしまった」という話を聞いた藤原実資は、「そんんな面白いことがあったのか!」と少し嬉しそうな様子。

ちなみに、この道長と伊周の乱闘?は小右記に記録が残っています。ちなみにその記録のほうが物騒で、普通に死人がでていたそうな。

2.F4久しぶりの集合


「平安のF4」と呼ばれる、藤原行成、藤原斉信、藤原公任、そして藤原道長が久しぶりに全員集まって話しています。
ここ最近は道長がいないことが多く、このまま終わってしまうのではないかと思っていたので嬉しいです。

公任は、
「次の除目では、俺のことは忘れてくれ」と言います。

どうして?
「父が関白だった頃は、自分も関白にならなくてはと思っていた。しかし、今はもう道長と争う気はない。これからは、漢詩や和歌を楽しみながら人生を送りたい」と伝えます。

右大臣・内覧として、伊周や隆家など政敵も多い中、陣定を上手く仕切る道長を見て、「これはかなわない、それよりも一流の文化人として名を残したい」と思ったのかも知れませんね。
百人一首にも出てくる「大納言公任」爆誕の瞬間でした。


滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ

この歌を聞くことができるのも、そう遠くはないかもしれません。楽しみ!

そして公任は道長に「貴族たちの裏の顔を知った方がいい」とアドバイスし、そのためには行成を使えと勧めます。
「裏の顔を知っておけ」、今で言えば身体検査ですね。

政治でも役のキャスティングでも、事前にスキャンダルの火種になりうる人は避けておこうという話(平安時代にもあったのかも?)

なぜ行成なのか?
それは、行成が達筆だから。女性たちは行成の文字を欲しがるので、行成は女友達が多い。
その女友達から、睦言で聞いた噂話(もしくはスキャンダル)を聞き出してもらおうというわけです。

間接的に恋愛が政治に関わっているともいえますね(政治は性事ってか…)。

行成は仕事が早く、すぐに道長のもとに噂話を届けにあがります。

「呼んだら焼き捨ててください」という行成。確かに、ある意味機密情報に近い内容ですからね。

「一度読んだだけでは覚えられぬ」と自信なさげな道長。
「それでは、読んでお心に留まったことは記録に残すのはいかがでしょう。私も、朝起きて、前日起こったことを書き留めるようにしております」
日記…ってこと?!ですね。

藤原道長の日記といえば…そう、「御堂関白記」

藤原行成も日記を残しております。「権記」ですね。ビギナーズクラシックスからも出ております(筆者は未読)。

3.まひろ、宮中へ


なんか、清少納言(ききょう)がまひろ宅に来訪するのが恒例行事になりつつありますね。オタクは、この二人の会話を何回妄想したことか。公式(ドラマ)で二次創作を与えてくれるスタイル、嫌いではないです。

まひろは、「宋の国では、身分にかかわらず能力のある者が取り立てられる。我が国にもそのような制度があったら良いのに」
と清少納言にぼやきます。「まひろ様は、大層なことをお考えですのね」と驚き、
「私は、中宮様のおそばにいられればそれで良いのです」と返す清少納言。

おっ?少し二人の考え方の齟齬が出てきたような気がします。
政治的な考え方を持つか持たないか。
「源氏物語」は多分に政治批判の要素があるのに対して、「枕草子」はどちらかというと、「輝かしい我が推し(定子様)との日々」を記録する」という側面が強い。

もしかしたら、その思想の違いで紫式部と清少納言は決裂するのではないでしょうか?

このまひろ(紫式部)は、「教養があるのは良いこと。でも、その背景に隠された思想を読み解いてこそ、真の教養人たり得るのだ」という考えに至るのではないでしょうか。
それが、紫式部日記での批判に繋がるのではないかという気がしてきました。

まひろは、「ききょう様をそこまで虜にする、中宮様にお目にかかってみたいものです」とぼやきます。
「中宮様の後宮に参りたいの?」と仰天する清少納言。
ともあれ、清少納言はオタクの鑑なので、「まひろ様は頭が良いから、中宮様のお気に召すかも」と推しに友を紹介(あわよくば友に推しを布教)することを決意します。

そして、まひろは晴れて中宮定子の後宮に参上することになったのでした。
定子の後宮に、紫式部が参上したという記録は残っていないので、これは完全に主人公補正ではありますが、清少納言と自然に知り合った場合、「ナシではない」という展開ではあります。それに、源氏物語には宮中の描写がよく出てきます。のちのちこの経験が利いてくることでしょう。

おお、まひろの女房装束!山吹色でしょうか。綺麗ですね。
着慣れていない感じがまた良い。
参上する途中で、廊下にばらまかれた画鋲を踏んでしまうまひろ。

廊下に汚物がばらまかれるという嫌がらせが描写されていた「源氏物語」の「桐壺」の巻を彷彿とさせます。
「何か踏みました?」と気にかける清少納言。
「ああ、またか」という表情になり、
大声で「宮中ではこうした嫌がらせはよくあること。私も三日に一度は何か踏みますので、足の裏は傷だらけです。でも気にいたしません。中宮様がお笑いになる姿を見れば、嫌なことはみーんな吹き飛んでしまいますゆえ!
と高らかに喧嘩を売る姉貴(清少納言)。

解釈一致です!!そこにしびれる憧れるう!
「推しの笑顔の為ならなんのその」というところでしょうか。
まさにトップオタ。

中宮様の前に参上し、挨拶をするまひろ。
そこに一条天皇が現われます。ちょっと気まずい展開に(大人の時間です。ちなみに、この話は枕草子に出てくるらしい)。

戻ってきた一条天皇・定子夫妻。
「政に、考えがあるそうですよ」とまひろを紹介する定子さま。
ここで、まひろは「新楽府」を引きます。
「高者、必ずしも賢ならず。下者、必ずしも愚ならず」
「身分の高い低いでは、その者の賢さは計れない」

おそらくこれを引いたまひろの脳裏には、深い教養を持ち宋の言葉を解するにも関わらず長年官職を得られない父・為時が思い浮かんでいたのでしょう。

「能力で人を選ぶようにすれば、高貴な方々も、政をあだおろそかにはなさりますまい」と述べるまひろ。
かなり踏み込んだ発言なので、「言葉が過ぎるぞ」と定子さまに止められます。
一条天皇は頭の良い女性を好むので、定子さまという才色兼備の愛妻がいなければもしかしたら気に入られたかも…?

政に対してそれなりの信念を持っているまひろに対して、妹・定子が皇子をもうけることしか考えていない伊周。
一条天皇も、「確かに高者、必ずしも賢ならずだ…」と思っていそうです。

その後、御簾越しに道長と話す一条天皇。
「藤原為時の娘…名は、ちひろ、いや、まひろといったか。あの者が男であれば、登用したいと思った」と仰いました。

「女だから」というだけで道を阻まれてしまう。「虎に翼」と重なりますね。賢い女性を主人公に据えたこの2作品、どこか相乗効果のようなものがある気がします。

「為時の娘」と聞いたときの道長の表情よ。
「僕が先に好きになったのに」と言わんばかりです。
自室に戻って、申文(私はこういう者です、官職を下さいという自己アピール文のようなもの)をチェックする道長。その中に、為時の文を見つけます。
さあ、最高権力=ソウルメイト力を発揮する時が来たようです。

官職を諦め気味の為時のもとに届いたのは、「従五位下に任ずる」というお達し。道長からの推挙だったのです。従五位下というと、それなりの国の国司も見えてくる身分です。

そしてこの少し前、若狭国に宋人が漂流してきたという知らせがありました。道長の判断で、越前国で引き取ることに。そして、為時は宋の言葉が分かります。
…繋がってきました。

父の昇進を祝い、琵琶を奏でるまひろ。
しかし突然、弦が切れました。
不吉。

4.やっちまった兄弟


藤原斉信の妹・光子のもとに通っていた伊周。例によって通おうとすると、良いしつらえの牛車が止まっているところを見てしまいます。
「女まで私を軽んじるのか」と嘆く伊周。
「相手は誰だ。懲らしめてやろう」とたきつける隆家。

結局、女の屋敷に来てしまいました。浮気相手の男とおぼしき人に、矢を射かけて脅す隆家。
斉信が駆けつけます。
「大事はございませんか、!」
そう、隆家が矢を放ったのは、なんと先の帝で兼家一家の謀略によって出家させられた花山院だったのです。
「院」という言葉の意味を理解して、真っ青になっていく兄弟。
やっちまったなあ!!中宮様に額をこすりつけるくらい土下座しよう。

さーて、次回の「光る君へ」は?
1.伊周と隆家、終了のお知らせ
2.まひろ、ついに道長との過去を暴露?
3.中宮様、絶望のあまり…
の三本です!
来週もまた見て下さいね!!




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