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「光る君へ」越前編まとめ

久しぶりの「光る君へ」の感想です。
ちょっと学業その他で忙しく、後回しになってしまいました💦

というわけで、「越前編」の感想まとめを書きたいと思います。

1.四角関係?!

まひろ争奪戦に二人の男性(道長は殿堂入り)
が加わりました。
かつての恋人・道長への想いを残しつつも、父・為時の赴任に伴い越前に来たまひろ。
彼女の前に新たなお相手が現れます。

宋人の医師見習いの周明(ヂョウミン)です。
演じるのは、数々の作品で「沼」を作ってきた松下洸平さん。
台詞が7割くらい中国語で驚きました。

筆者は中国語未履修者なのでよく分からないのですが、中国語を話せる方からすると「上手い」と仰る方が多かったのですごいなと。

と思ったら日本語も普通に話せていて「君は誰だい?!」と視聴者は仰天しましたが、対馬で生まれて宋に渡ったとのことで納得ですね。

まひろに宋の言葉を教えるシーンが多かったのですが、字幕がすごいことになっていましたね。
「NHK中国語講座in平安時代」みたいになっていて、筆者の中国語モチベが少し上がりました。漢詩も好きだし、勉強してみたいな。

まひろと楽しそうに話していて、「これは恋愛フラグか?!」と思ったら、「国主の娘(まひろ)に取り入り、左大臣に貿易を求める文を書かせます」と朱仁聡(越前にいた宋人のリーダー的存在)に話しており、「国際ロマンス詐欺」と言われていました。

周明は宋語のレッスンでまひろとの仲を深め、「まひろと宋に行きたい」と誘うものの、かつて道長との大恋愛を経験したまひろには通じませんでした。

焦った周明は「文を書かねば、お前を殺して俺も死ぬ」と迫りましたが、母の死・直秀の死を目の当たりにしていたまひろには悪手でしたね。

周明は諦め、朱仁聡に「無理でした。あの女の心に入ることができなかった」と謝罪します。

「あっ消されるか」と冷や冷やしましたが(鎌倉殿で人の命の軽さを知っているオタク)、朱はこう語りかけます。

「お前の心からは消え去ると良いな」
「はい」と周明。ここで自覚してしまうの、切なすぎる…
どうやらこれで退場のようで、寂しいです。

もう一人は、まひろの父である為時の親友である藤原宣孝。
前々から「良い女になった」「色香を増した」などとジャブを打っていた宣孝殿。
ここにきて、本気を出してきました。

為時に手紙を出していたもののなかなか越前に来ず、来る来る詐欺かと思われた宣孝ですが、ちゃんと来てくれました(都には嘘をついたらしい)。
「京都からの土産」として、まひろの顔を引き立てる肌油と、「玄怪録」を渡しました。
もちろんまひろは、「玄怪録」の方に喜んでいました。
オタクの心を分かっている…
さて、まひろの心を射止めるのは誰かな?

2.選ばれたのは宣孝でした


混戦となりましたが、制したのは宣孝でした。
宣孝は、「忘れえぬ人がいてもよい。それもお前の一部だ。丸ごと引き受ける。それができるのは儂しかいない」と大人の余裕を醸してきます。これは強すぎる。

宣孝は外堀から固めていきます。
まずは左大臣である道長に報告。

「為時の娘も、夫を持てることになりました」と報告する宣孝。
「それはめでたい」と寿ぎつつひきつった顔の道長。
さらに、
宣孝「私なのでございます」
道長「何が、私なのだ?」
宣孝「為時の娘の夫にございます」
トドメ刺しちゃった…

この報告を受けた時の「結婚するのか、俺以外のやつと…(しかもこのおじさんと)」と言わんばかりに書状をグシャアとする道長、よかったですね。
そのあと帰宅を拒否するのを含めて芸術点が高い。

一方の宣孝は、道長に報告したことをさらにまひろに報告します(ややこし)。
まひろは当然おこですが、宣孝は「意地悪されても困るからなぁ」と飄々としています。

まひろが「そのようないやらしいことを」とまたおこになりますが、宣孝は「また叱られてしまった」と嬉しそう。道長くん、これは君が勝てる相手ではない。

結婚初夜で、「不実な女ですが、よろしゅうございますか」と訊くまひろに「儂も不実だ。あいこである」と返す宣孝。つよい。

3.定子さまは桐壺であり藤壺であり紫の上なのだ

やはり推しを語りたいオタクです。
長徳の変に連座して出家したものの、その後に懐妊が発覚し姫御子をお産みになった定子さま。

出家というのは当時、社会的に死ぬことを意味しました。しかし、一条天皇はとことん定子一筋。

客観的に見れば、後ろ盾もなくさらに出家した定子にこだわる意味などどこにもありません。むしろ諦めるのが筋。
しかし、無理もない。

一条天皇は幼くして天皇になり、おそらく母とも満足に触れ合えなかったと思われます。
そんな彼に美しく知的でチャーミングな定子(3~4才年上)が幼い頃からずっとそばにいたのです。妻・恋人であるのに加えて姉や母のような存在だったことでしょう。唯一無二の存在と言って良いでしょう。

しかし定子からすれば、父は故人、母も故人(実家が弱い)、兄と弟はあんな有様で後ろ盾になってもらうには心許ない。頼りになるのは帝からの愛情だけ。賢い定子が、この状況の不安定さを全く察していなかったとは思えない。

私は過去記事で、光源氏の母・桐壺更衣のモデルは定子ではないかと書きました。
少し訂正します。
「桐壺更衣を含む、あまたの女君に藤原定子という人の面影が反映されている」と。
父が亡く、後ろ盾がないにも関わらず並ぶものの無い寵愛を受ける→桐壺更衣 
(皇子の母となるところもかぶります)

一条天皇が幼いときからずっとそばにいた、姉であり母のような存在でもある→藤壺
(突然出家してしまうところも重なりますね。ただ、藤壺の出家後は光源氏でさえ諦めたので、一条天皇が出家した定子を呼び戻したことがいかにイレギュラーだったかが分かります)

後ろ盾がなく、殿御の愛情だけが頼りという不安定な立場である→紫の上
(のちに実家が盤石な女性の登場によってさらに不安定化するところも似ています)

そしてこの三人とも美貌に恵まれ、教養もあります。辛口の清少納言に「こんなに美しい人が居るのか」と言わしめた美貌を持ち、漢詩を解する教養も備えた定子が下敷きになっているといわれても納得できます。

書けば書くほど、藤原定子という人がとても多面的で、劇的な人生を送ったことがうかがえます。
定子本人は時に幸せを、時に悲しみを味わいました。もしかしたら悲しみのほうが多かったかもしれませんが、彼女の存在が紫式部の創作意欲を刺激し「源氏物語」に彩りを与えたことはほぼ確実ではないでしょうか。









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