「3.11」と わたし Vol. 24 自分ならできる、飯舘への「言語」を通じたコミット
東大むら塾 鎌倉啓伍 さん
震災から10年の節目、
飯舘村に様々な立場から関わる人々が語る
自分自身の10年前と今とこの先の10年。
今日の主人公は、東大むら塾3人目、鎌倉啓伍 (かまくら けいご) さん。
言語学に興味を持つ彼は、将来研究者志望。
10年後も飯舘村に直接関わり続けることは難しいかもしれないけれど、
得意とする英語やロシア語を駆使して、
飯舘の良さを世界に伝えることはできるかもしれない。
そんな思いで、今はむら塾の一員として飯舘村に関わっています。
最初の「天変地異」の記憶
当時自分は小学校3年。地震発生時は公園で友達とサッカーをしていた。
経験したことのない強さ・長さの横揺れを感じ、足がすくんだ。
家に帰ると、宮城県沿岸部が津波で水浸しになっているニュースの映像が目に飛び込んできた。
その年度の夏休みに仙台・石巻を訪れたばかりだったので、ショックを受けた。
東日本大震災は、「天変地異」的な事件として自分が明確に記憶している最初の出来事かもしれない。
自分の生活や世界がずっと安定しているわけではないことを知った。
同時多発テロのときは生まれていなかったし、リーマンショックのことは全く記憶になかったから。
翌日、原発の水素爆発の映像を目にする。
当時の自分は、それがどれほど人々の生活の安全を脅かすものであるか、分からなかった。
飯舘村のことも、全く知らなかった。
考えてみると、10年前の自分は今とは全く別人である。当時は眼鏡もかけていなかった。
震災から約1年後、中学受験の対策のために塾に通うようになって以来、自分はずっと勉強に傾倒しており、今では公園で友達とサッカーなど、考えられない。
自分が元気をもらえた
大学に入学する前、自分は「原発事故の被災地」を訪れたことがなかった(高校の時に「震災の被災地」である三陸を訪れたことはあったが)。
むら塾に入会した当初の目的は千葉県富津市で農業に勤しむことだったが、説明会でむら塾内に飯舘村と関わるグループが存在することを知り、興味を持ったので入ってみた。
コロナの影響により、夏休みまでは現地に行けず(当初やりたかった農業もできず)、代わりにオンラインのミーティングに参加した。
昨年度の先輩方の活動(村の方一人ひとりとの関係を大事にされていて、すごくミクロで地道だなと感じた)のお話も聞きつつ、「地方創生」「復興」について考えることが多くなった。
9月に入り、ようやく飯舘村に訪問できるようになった。
原発事故の爪痕(フレコンバックなど)を目の当たりにして衝撃を受けたが、人と交流してみると、飯舘村での生活に熱意や希望を持っていらっしゃる方が多いなと感じた。
飯舘村に訪問することで、自分が元気をもらえた。
10月頭の訪問では、稲刈り体験をさせていただき、ようやく飯舘の土に足を踏み入れることができたような感じがした。
また、風と土の家の竣工式では、ロシアの方やその通訳の方と偶然お会いすることができた。
後になって分かったことだが、旧ソ連時代のチェルノブイリ原発事故の関係で飯舘村に対するロシア人の関心は高く、詩人・芸術家がたびたび足を運んでいるらしい。
飯舘村で自分の個性(多少の語学力)を生かして活動できる可能性を感じた。
訪問後、いいたてフォトコンテストに写真を出品したり、むら塾の飯舘村での約1年半の活動をまとめた動画を作って駒場祭で公開したりした。
東京で暮らしていると飯舘村に毎週のように通うことはなかなか難しいが(本格的に二拠点生活を始めない限りは)、東京にいても飯舘と関わることは可能なのだと感じた。
活動が軌道に乗ってきたと思ったら、感染再拡大により再び現地に足を運ぶことが難しくなり、現在に至る。
それでも、年賀状を送ったり、たまに連絡を取ってみたりして、村の方との関係が途絶えないように努めている。村の方とのやり取りはとても楽しい。
「言語」を通じたコミット
自分は研究者志望なので、10年後というと、首尾よく進んていれば博士号を取得してどこかの大学に赴任している時期に相当する。
自分が興味を持っているのは言語学であり、地方創生や農業と全く関係がない。
正直、飯舘村の「地域おこし」にコミットし続けることは難しいと思う。
それでも、飯舘村に少しでも関わったことのある身として、「飯舘ってこんな良いところがあるんだよ」と多くの人に広めることは可能である(飯舘はとにかく人が温かい)。
村の方とのやり取りも続けたい。
加えて、自分なら飯舘村を(英語以外の言語でも)海外の方に紹介することが可能なのではないかとも思っている。
まずは英語・ロシア語が優先になるが、色々な言語に堪能になった上で、その能力を自分の研究だけでなく(研究に閉じこもってしまったらそれは机上の空論である)、飯舘村で生かすことができたら嬉しい。
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