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九鬼の記事vol.3(2019.12.30)

0.今週の記事のレビュー

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「今週の記事のレビュー」では、本記事を簡単にまとめています。★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

1️⃣今週の学び:「股関節まわりの筋」に対するアプローチの大切さについてです。ウェイトトレーニングはもちろんのこと、動きの中でも負荷をかけながらパフォーマンスを高めるということについて、まとめています。特別ゲストとして、サッカー日本代表の原口元気選手が動画に登場してくれています👏👏

2️⃣今週の陸上部:今週は、最後の追い込みのトレーニングと、レクリーションについて。特に年末年始の休みに入る節目の時期でもあるので、チームビルディングを兼ねて活動をしてきました。

3️⃣今週のオススメ論文:前回とは反対に、ウェイトトレーニングによってランニングエコノミーの改善がみられて、パフォーマンスが向上した研究を紹介。高重量の重さですることがポイントとなりそうです。

4️⃣時事ネタ・記事の紹介とコメント:オリンピックの2種目問題などについてコメントしています。

5️⃣Q&A:前回の記事に対する質問で、接地した時に脛を倒していた方がいいのか、起こしていた方がいいのか、という内容でした。


1.今週の学び

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「今週の学び」では、今週のできごとから九鬼が感じたことについて述べています。主にトレーニング・コーチングの現場での気づきを発信したいと思います。
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 今週の学びは「股関節まわりの筋」です。スプリンターはもちろんですが、やっぱり球技系選手にも股関節まわりの筋に対するアプローチって大切だな、ということを再確認した週でした。当たり前でしょ!って思うかもしれないのですが、再確認ということで。

 今週は、色々とコーチングをさせていただく機会に恵まれて、大学のグラウンドと学外に多くの時間を割きました。はじめは、ある高校の野球部へのスプリント指導から始まりました。甲子園でも素晴らしい成績をおさめているチームでのスプリント指導ということで、とても有意義な時間でした。

 その翌日には、FC大阪のトレーナーと選手数名が、大学にトレーニングに来てくれました。

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 最初のトレーニングということで、スプリントというよりは股関節まわりの筋に対するアプローチのエクササイズを中心に行いました。

 技術と体力というのは、それぞれが別々に成り立っているわけではなくて、お互いに密接に関わり合っている、というのが筑波大学名誉教授の先生の教えでした。そういう観点からすると、スプリントトレーニングにしても「走り方」を教えるのではなく、速く走れるキッカケを選手が掴めるように、いろんな環境を整備することが重要だと考えています。そして、その環境の一つとして、体力(ここでは筋力などを含む)の準備が必要です。

 具体的なエクササイズとしては、このように片脚になって、壁に向かってランジをするようなエクササイズなど。上げている側の骨盤が上に上がって、地面に付いている側の中殿筋に刺激が来るように、様々な課題を与えながら、自然とそのような形になるように進めます。

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 そして!今週の学びが、なぜ「股関節まわりの筋」になったかというと。数日前から、共同研究の関係で筑波大学に出張しています。そこで、タイミングがあって、サッカー日本代表の原口元気くんのトレーニングを見学することができました。ちなみに、彼とはもう5年以上もの付き合いで、友人です。話は戻って。そのトレーニングの中で、原口くんの股関節まわりの筋を触ったのですが。!?!?!?!?っていうほど、発達していました。なかなか股関節まわりの筋、特に中殿筋を大きくすることって、球技系選手にとっては難しいと思うのですが。本当に、綺麗にそこの筋が発達していました。

 本人曰く、筑波大学の谷川先生とのトレーニングをスタートしてから、ズボンが入らなくなったり、明らかにグッと力を出せるようになったらしいです。いわゆる、「走り方」を教えるのではなくて、その周辺の準備をするというのは、まさにこういうことなんだなと。しかも様々な動きの中で、股関節まわりの筋へアプローチをするという手法を取っていました。本当に大きな学びがありました。

では、本人登場の動画をどうぞ↓↓

 そして、このトレーニングの方向性といのは、市民ランナーであっても大きくは変わらないと思います。市民ランナーがトレーニングしたい、という話をすれば、「じゃあ股関節まわりだね」と。そういう観点からトレーニングに入っていくのは、わかりやすくて、変化する実感が得られるんじゃないかと思います。


2.今週の陸上部(短距離・跳躍パート)

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「今週の陸上部(短距離・跳躍パート)」では、九鬼が普段指導している大学のチームのトレーニングの一コマを紹介します。短距離走のトレーニングを市民ランナーやその他の競技にも応用できるような観点も盛り込んでいきます。
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 今週の陸上部は、年内最後の追い込みと練習納めでした。

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 練習では、ミニハードル走の本数を多くしたり、サーキットの本数を少し多くしたししながら、ケガをしないギリギリのところでなんとか攻めてみました。無事に、この期間でケガをすることもなくなんとか乗り切ることができました。

 今年度に、選手が200mを21秒19で走って、全日本ICの標準を突破。もう一人、10秒8で走る1年生と話していたら、「ケツが大きくなって、ズボンのサイズが変わった」と。ガリガリというか、幼児体型というか、というような選手だったのが、徐々にアスリートらしい身体に変わりつあります。彼の力から言えば、10秒5くらいは出ても不思議ではないので、どのようにしてもっていくか。ケガの多い選手なので、ケガのリスクをマネジメントしながら競技や練習を継続することが、パフォーマンス向上への近道です。こまめな治療やダウンなど、その時々でできること・すべきことを選択してできるような学生に育てたいですね。そうすれば、リレーでも全日本IC出場も見えてくるかなと思います。

 そして、練習納めとレクリエーション。練習納めでは、学生と一緒に250mを2本走りました。ゲキたれして、終わりました(笑)。レクリエーションは、全部員が顔を合わせてのお楽しみ会。本当なら六甲山登山をする予定でしたが、雨天のため急遽予定を変更。

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 普段は、僕が指導する短距離・跳躍・投擲チームと、竹澤さんが指導する長距離チームが合同で何かするということはありませんが。たまにの機会を見つけて、学生同士が交流できる機会を設けています。「個人種目だからこそ、チームの大切さを知ってほしい」というのが、僕たちの考え方です。あくまで、陸上競技を通じた学生教育なので、競技以外の機会もしっかりと確保して、そこでも活躍したり学べる時間を提供してあげたいなと思っています。このチームで、来年5月の関西ICは1部昇格を目指して、頑張っていきたいと思います。


3.今週のオススメ論文

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「今週のオススメ論文」では、普段なかなか手がづらいスプリントやトレーニングに関する英語論文を紹介します。専門的な内容をなるべくわかりやすく解説して、現場への応用についても考えます。なお、以下の文章は直訳したものではなく、九鬼が読んで解釈し、文章を私の言葉で書き直している点に留意下さい。
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 今週の論文は、Dr STØRENらの論文。詳細な引用は以下の通りです。

STØREN, Ø., Helgerud, J. A. N., STØA, E. M., & Hoff, J. A. N. (2008). Maximal strength training improves running economy in distance runners. Medicine & Science in Sports & Exercise, 40(6), 1087-1092.

 前回の記事では、11週間のウェイトトレーニングではランニングエコノミーやランニングのパフォーマンスを改善できないという論文でした。そこで、今回はウェイトトレーニングでランニングのパフォーマンスを改善できるという主張のものをもってきたいと思います。
前回の記事をまだご覧でない方はこちらをどうぞ↓↓
https://note.com/marathon_kousoku/n/nf7a59d586139

(1)イントロダクション〜研究の背景〜

・長距離のランニングパフォーマンスを決定するのは、1:最大酸素摂取量、2:乳酸作業閾値、3:ランニングエコノミー

・先行研究では、ウェイトトレーニングによってハーフスクワットの1RM(最大挙上重量)とランニングエコノミーが改善されたことが報告されている。

・ウェイトトレーニングの中でも、回数が少なくて高重量の重りで反復する最大筋力トレーニングが、ランニングパフォーマンスに及ぼす影響は十分に検討されていない。

そこで本研究は、最大筋力トレーニングが体重や最大酸素摂取量に影響を与えることなく、ランニングエコノミーを改善することができるかどうかを検証することを目的として行われました。

(2)メソッド〜方法の概要〜

 被験者は、17名のランナーで、日常的にトレーニングをしているランナーでした。被験者を2群にわけて、一つの群には8週間の筋力トレーニングの介入を行い、もう一つには筋力トレーニングの介入を行いませんでした。いずれの群も、通常のランニングのトレーニングを継続してもらいました

 測定は、異なるスピードで5分間走らせた時の心拍数・血中乳酸濃度・酸素消費量でした。また、あるスピードで疲労困憊になって走れなくなるまでの時間も計測するなど、測定は多岐にわたって行われました。

 さらに、筋力の指標として最大筋力と、スクワット中にどれだけ素早く力を立ち上げることができたかというRFD(Rate of Force Development)を計測しました。

(3)リザルト&ディスカッション〜本研究から言えること〜

ランニングエコノミーが5%向上
スクワットの1RM(最大挙上重量)は33.2%、爆発的筋力は26.0%増加
疲労困憊になるまでの時間が21.3%増加

 以上の結果から、今回の研究で行われた8週間のウェイトトレーニングは、ランニングエコノミーを改善してランニングのパフォーマンスを高められた、と結論づけることができると思います。

 前回の記事でも紹介したように、筋力が高まることでスプリント能力が改善されて、スプリント能力が改善されると相対的に走るスピードも低くなります。また、うまく筋の伸張と収縮を働かせると、エネルギーを貯蔵して再利用するというストレッチショートニングサイクルと呼ばれる力の発揮方法も学ぶことができます。

 今回の論文で行われたポイントは、ウェイトトレーニングでも、かなり重たい重量のスクワットを行なったということです。こちらのトレーニングでは、筋に対するアプローチというよりは、どちらかというと神経系に対するアプローチでした。

 と、いうことで。次回の記事では、ウェイトトレーニングの種類が、ランニングエコノミーに効果を与える可能性について考えていきたいと思います。キーワードは、筋に対するアプローチと神経系に対するアプローチ、といったところでしょうか。お楽しみに。


4.時事ネタ・記事の紹介とコメント

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「時事ネタ・記事の紹介とコメント」では、今週のニュースや読んだ本などから、印象に残ったものを紹介するとともに、それに対するコメントをします。
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(1)【リレー「金」へ温存あり? 陸連案にサニブラウン反発】

 結構、この記事で色々とニュースになっていて、陸上競技も市民権を得てるんだなーというのが率直な感想でした。ただ、2種目出るとパフォーマンスが落ちるのは、ある程度予測できるし、回避しづらいところではあると思います。2種目でれることを推奨しますが、金メダルを取ることで国民的スターになって、陸上界がもっと盛り上がるというのはすごく重要なことかな。
他の種目で日本人がどんどん金メダルを獲るのに、陸上だけが金メダルないとなると、競技間の競争に破れてしまうような危機感もあるのはわかります。

(2)日本ハム・斎藤佑樹 2020年へのテーマは「球速アップ」自主トレを公開

 個別的に筋肉アプローチしてもダメで、それをどう統合していくのか。実際のパフォーマンスにどのようにつなげるのかまで考える必要ありますよね。記事だから仕方ないし、本心はわからないけど、投球ってすごく繊細で複雑な技術だから。部分的な筋力トレーニングよって、それまでの技術が崩れることもあるし、意図的に崩すこともあるしで、トレーニング介入は慎重になりますね。


5.Q&A

お気軽に、コメントください。次週以降の記事で、みなさんのご質問にお答えします。

【質問1:bote様】
以前noteの記事に対する質問をしようと思ったのですが、誤って問い合わせから質問をしてしまったので改めてDMで質問させていただきます。
記事中で、脛を倒すようにして良い結果が得られたようでしたが、この時の脛を倒すというのは、①脛をなるべく寝かせて接地をさせたのか、もしくは②身体重心の前方への移動に伴い脛を寝かせるようにしたのか
という疑問を抱きました。
こちらに関して今後触れて頂けるととても幸いです。

 結論からいうと、後者の方です。身体重心の前方への移動に伴って脛を前傾させるように倒します。なぜかというと、脛が垂直な状態では、足関節は少し底屈状態で、アキレス腱はまだ伸張していません。それが前傾になるにつれて、エキセントリックな力発揮をしながら接地の衝撃を弾性エネルギーに変換されると考えることができます。

 すなわち、接地するときは脛が比較的たっている状態で、支持期中間から後半に向けて脛を前傾させて倒すような技術を加速の局面では学ぶ必要があるということができます。

 こんな感じでいいですかね?皆さんも、何か疑問があればDMかコメントください。

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