スクリーンショット_2020-03-02_8

九鬼の記事vol.12(2020.03.02)


0.今週の記事のレビュー

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「今週の記事のレビュー」では、本記事を簡単にまとめています。★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

1️⃣今週の学び:鹿屋体育大学での実験をもとにした学びです。シーズンいに向けて、どのように脚が速くなっていくのかって、興味があるけれどもあまり多くの研究論文が出ていない印象です。

2️⃣今週の陸上部:合宿がなくなってしまいました(泣)。代わりに競技場練習で代用していますので、その内容を少しだけ。

3️⃣今週のオススメ論文:今週の学びと内容をリンクさせています。ピリオダイゼーションと呼ばれ、時期によってトレーニングを変えながらパフォーマンスを高めていくのですが。それぞれのピリオダイゼーションの時期にどのように疾走速度とピッチ・ストライドが変わっていくのかを検討した論文です。非常に実践的かつ現場的な視点から書かれている論文で、面白い内容でした👏

4️⃣時事ネタ・記事の紹介とコメント:東京マラソンのことを少しだけ。今回はこの部分は少しになっちゃいました。。。

5️⃣Q&A:前回のコメントに対する返答を書いております!


1.今週の学び

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「今週の学び」では、今週のできごとから九鬼が感じたことについて述べています。主にトレーニング・コーチングの現場での気づきを発信したいと思います。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 今週の学びは、「ピッチの向上による疾走速度の改善」です。

 今週の記事は、市民ランナーというよりは、完全に陸上競技の短距離走に特化した内容になります。多くの指導者・コーチは、この季節、「どのようにして短距離選手の調子をあげていこうか」、ということに苦労することと思います。僕自身、選手時代に何度もこのシーズン直前のトレーニングの方向性を失敗して、シーズン前半を台無しにしたことがありました。。。(泣)今回の記事では、そういった疑問や失敗に関する学びや論文紹介をしていきたいと思います。この記事を、当時の僕に読ませてあげたい(笑)。


 さて、今週のビックイベントは、鹿屋体育大学での今季2回目の実験でした。相変わらず素晴らしい研究施設で、実験のストレスも少なく、また勉強になる貴重な機会をいただくことができました。

 ちなみに、前回の鹿屋体育大学での実験の様子も別のnoteで書いておりますので、まだ読んでおられない方はぜひそちらの方もお読みください↓↓

 前回は、最高疾走速度が10.0m/secくらいだったのに対して、今回の試技では最高疾走速度が10.6m/secくらいまで高まっていました。
順を追って説明していきたいと追います。まずは、前回2019年12月に行った実験の動画です↓↓

 そして、今回の試技の動画↓↓

 前回12月の実験で得られたデータをもとに、鹿屋体育大学の永原先生からアドバイスをいただいて、それをトレーニングに活かしました。

 通常の実験では、複数名の被験者を対象にして、統一されたトレーニングやエクササイズが処方され、それ以外の要因はなるべく排除するのが望ましいとされます。そうすることによって、処方されたトレーニングやエクササイズの効果を適切に評価することができるからです。

 一方、現場のアスリートを指導するコーチングでは、多くの要因が複雑に絡み合っていて、常にPLAN→DO→CHECK→ACTIONのPDCAサイクルを循環させていく必要があります。今回の一連の研究活動でも、実際に実験を行って、そこで得られた結果をトレーニングに反映させて、実際にどのように変化した/しなかったというのを追跡調査するというものです。まだまだ追跡は続いていてきますが、中間報告ということでその概要だけでもお話したいと思います。

 結論から言うと。「ピッチの向上によって疾走速度が高まった」という結果になりました。そして、この結果は、後ほど紹介する今週のオススメ論文で得られた知見と一致しており、その先行研究とも比較して考察しようと思います。スプリトマニアにとっては、興味深い内容になっていると思います(そう願いたい!)。

 まず、お話を進める前に、前提を確認させてください。100mのパフォーマンスは、加速の速さ(あえてこの表現)や減速の大きさ(いわゆる後半バテる)といった要因よりも、レース中に到達できる最大疾走速度が強く関係しているというのが、多くの研究論文で報告されています。
したがって、スプリンターの最重要課題は最大疾走速度を高くするということ、つまり足が速くなるということです(←あたりまえか!笑)。

 そして、疾走速度に影響を及ぼす要因は大きく2つあり、ステップ頻度(=ピッチ)とステップ長(=ストライド)です。大まかな定義として、ストライドは一歩の長さを示しており、ピッチは一秒間の回転数を示しています。そして、ピッチの下位要因として、滞空時間(空中の時間)と接地時間(地面についている時間、正確には支持時間)があります。したがって、疾走速度を高めるには、ストライドand/orピッチを高めることが必要で。ピッチを高めるためには、滞空時間and/or接地時間を短縮することが必要です。

 さて、話が戻りまして。今回2月の測定は、12月の測定に比べて最大疾走速度が高くなっていたのですが、その要因はピッチの向上によるものでした。ストライドはどうだったかというと、ほとんど変化なし。そして、ピッチの下位要因はというと、滞空時間が短縮されていて接地時間は変化なし、という結果でした。

 ちなみに、前回の疾走速度・ピッチおよび今回の疾走速度・ピッチを具体的な数字で比較すると。


ここから先は

5,781字 / 2画像
✅毎週、月・金の朝に記事を配信します。 それぞれの講師が記事を書くので、一週間で様々な情報をお得にゲット。 ✅不定期に、note特別のYoutube動画も投稿します。 ✅竹澤と九鬼が開催するランニング教室への、優先案内を記事を通して告知します。記事あり、動画あり、イベントありの三拍子。 ぜひ、ご購読ください🙇‍♂‍🙇‍♀‍

✅市民ランナー✅指導者・トレーナー✅スポーツ科学を勉強する人、へ役立つ専門情報を届けます👍 知識をアップデートしたい方、僕たちと「オモロイ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?