麻婆豆腐

事業会社から外資系投資銀行に転職し、投資銀行の実務で学んできたことをアウトプットしてい…

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事業会社から外資系投資銀行に転職し、投資銀行の実務で学んできたことをアウトプットしていきたいと思います。内容はコーポレートファイナンス、M&A関連の法務・会計・税務、ExcelのTips等です。

最近の記事

子会社株式の減損が連結決算に与える影響

子会社株式の減損が親会社の個別決算と連結決算に与える影響を見てみます。 x0年度に子会社が20の純損失を計上し、x1年度に子会社が30の純損失を計上、当該子会社の株式について50の減損損失を計上するケースを考えてみます(子会社は完全子会社を想定)。 x0年度 親会社個別財務諸表上の子会社株式簿価100(BS資産)・・・A 子会社個別財務諸表上の純損失20(P&L) 子会社個別財務諸表上の純資産80(BS純資産)・・・C 連結財務諸表上の純損失20(P&L)・・・B

    • 米国SECへの提出書類

      本日は米国の上場企業がSEC(Securities and Exchange Commission)に提出する必要がある書類について簡潔に紹介します。 米国は世界一金融が発達していることもあり、上場企業がSECに提出しなければならない書類も多岐にわたり、自分でEDGAR(SECのオンライン公開データベース、日本のEDINETのモデル)を触ってみないと違いが分かりにくいため、ここで纏めてみます。 10-K日本の有価証券報告書に相当します。年度末の90日以内にSECに提出する

      • Valuation Tips: 退職給付に係る負債

        本日は企業価値評価(Valuation)を行う上で、非常に分かりにくいものの、確定給付制度が幅広く使われている日本企業では金額が大きいことが多い、「退職給付に係る負債」の扱いをなるべく簡単に説明します。 なお、本記事では、以下のEYの企業会計ナビを主に参考にしています。 Valuationにおいて、退職給付に係る負債を純有利子負債と同様にEV bridgeとして扱うべきことは以下の記事で述べました。 ネットデット調整上場会社であれば有価証券報告書の連結財務諸表の注記欄に

        • 有価証券報告書にはなぜ子会社等での「役員の兼任」の記載があるか

          有価証券報告書には、その上場企業の【関係会社の状況】についての記載があり、連結子会社や持分法適用会社の名称、資本金、持分に併せて、役員の兼任人数が記載されています。 なぜ、この役員*の兼任について記載されているかご存知でしょうか。 * ここでいう役員とは、取締役や執行役を指します。 兼任役員は、会社の取締役、執行役員等が、自社と同一又は類似の事業を行う資本業務提携先や子会社の取締役、執行役員等に就任し、兼任していることを指します。 兼任役員が、当該提携先や子会社におい

        子会社株式の減損が連結決算に与える影響

          合弁会社における運営委員会(ステアリングコミッティ―)の位置づけ

          商事法務の『資本業務提携ハンドブック』という本の中で、実務でたまに耳にする運営委員会(今回は合弁会社の文脈)についてよくまとまっていましたので、備忘録的にメモします。 運営委員会(ステアリングコミッティ―)の目的運営委員会の目的としては、以下の3つが考えられます。 1. 合弁会社の意思決定を行うため 2. 株主総会や取締役会において意思決定を行うにあたって参考にするため 3. 現場担当者同士で意見のすり合わせを行うため 1の場合、合弁会社を取締役会設置会社とする場合

          合弁会社における運営委員会(ステアリングコミッティ―)の位置づけ

          上場会社による自己株式取得の方法比較

          本日は、上場会社による自己株式取得の方法を比較します。ちなみに、自己株式取得とは、株券を発行している発行会社自らが株主が保有している株券を買取ることを指します。 大株主からの自己株式取得を企図する場合、 スピードの観点では、ToSTNeT-2 or ToSTNeT-3 > 公開買付け> 相対取得(相対取得は株主総会特別決議に時間がかかる) 株主の経済性の観点では、公開買付け = 相対取得 > ToSTNeT-2 or ToSTNeT-3(みなし配当分の税メリットを享受で

          上場会社による自己株式取得の方法比較

          キャッシュリッチとキャッシュが無い会社、どちらを公開買付けで安く買えるか

          公開買付けの文脈の中で、「キャッシュをプレミアムで買うことになる」という先輩の発言が以前理解できず、キャッシュリッチの会社とキャッシュがない会社のどちらが公開買付で安く買えるか考えてみたので、備忘録的にメモします。 結論から言うと、キャッシュが無い会社の方が安く買えます。 具体的な数字で試算してみましょう。 A社とB社という事業価値(=EV)が1,000で事業内容も全く同じ企業があるとしましょう。 A社はキャッシュを100持ち、B社はキャッシュを0持っています。 ど

          キャッシュリッチとキャッシュが無い会社、どちらを公開買付けで安く買えるか

          DCF法 標準化期間におけるFCFの計算

          今回はDCF法の標準化期間におけるFCFの計算方法について紹介します。とくに、D&A、Capex、運転資本の増減が分かりにくいと思いますので、解説しています。 DCF法では通常、3~5年程度の予測期間を設けて、予測期間におけるFCFを計算したものに、ターミナルバリューを足すことで、事業価値を算出します。 予測期間では色々な前提を置いてなるべく精緻に計算しようとしますが、予測期間を超えた期間においては、精緻に予測することが難しいためにターミナルバリューを計算するんですね。

          DCF法 標準化期間におけるFCFの計算

          産業競争力強化法の特例を用いたM&A

          今回は、会社法および税法の特例として導入されている産業競争力強化法を用いたM&Aの類型について紹介します。 平成23年には、産業活力再生特別措置法(いわゆる産活法)が改正され、認定事業再編計画に乗っ取った自己株式を用いた公開買付けについては有利発行規制*、現物出資規制**が適用されないという会社法の特例がありましたが、公開買付けに限定されていたこと、対象会社の株主に対する課税繰延べ措置が設けられていなかったこと等から、同特例に基づいた株式対価M&A***は一度も実施されませ

          産業競争力強化法の特例を用いたM&A

          組織再編 税制適格要件

          備忘的に組織再編における税制適格要件について記載します。 組織再編とは、会社の組織と形態を変更する会社法上の法律行為を指し、代表例として会社法第5編に規定されている、合併、会社分割、株式交換、株式移転が挙げられます。 税制適格とは、上記の組織再編時において、一定の条件を満たした場合には、対象会社の法人レベルで資産の時価評価を免れたり、株主レベルで譲渡損益を繰り延べたり、合併等の場合には対象会社の株主レベルでみなし配当課税を免れたりすることを指します。 適格組織再編の考え

          組織再編 税制適格要件

          M&A: 組織再編と事業譲渡の要点整理

          今回は、組織再編の代表例と事業譲渡のそれぞれの要点についてご紹介したいと思います。 組織再編とは、会社の組織と形態を変更する会社法上の法律行為を指し、代表例として会社法第5編に規定されている、合併、会社分割、株式交換、株式移転が挙げられます(三角合併や三角交換等は今回は割愛します)。 広義の「組織再編」は、新株発行、自社株買い、現物出資、事後設立、事業譲渡、現物配当、組織変更及び解散も含むと考えられるようです。 一方、日本の租税法における「組織再編成」は、現時点で、新株

          M&A: 組織再編と事業譲渡の要点整理

          公開買付け(TOB)の強圧性について

          今回は公開買付け(TOB)における強圧性について4つにケース分けしてご紹介します。 強圧性とは、TOBにおいて対象会社の株主が、買手が対象会社の支配株主になることにより対象会社の株式価値が低下すると考えている場合に、現状より経済的に損をすることが見込まれるのにも関わらず、TOBに応募するインセンティブを有してしまうことです。 1. 価値減少型TOB+スクイーズアウト無しA社の1株あたりの株主価値を1,000円と考えている株主(X氏)がいて、現在の市場価格が700円であると

          公開買付け(TOB)の強圧性について

          M&Aの投資指標

          今回はNPVやIRR等、M&Aを定量的に評価するための投資指標について紹介します。 NPVNPVはNet Present Value (純現在価値)の略で、投資機会の将来キャッシュフローを現在価値に割り戻したものです。正の値は価値を生み出す投資機会、負の値は価値を毀損する投資機会であることを示します。 将来キャッシュフローは事業計画をひいて試算しますが、割引率は当該投資機会と同等のリスクを持つ別の投資機会に投資したときに想定されるリターンを使います。 M&Aの際によく使

          M&Aの投資指標

          減価償却の予測方法

          今回は、将来の予測キャッシュフローを計算する上で、どのように減価償却費の予測を立てていくのかというのを、Excelの実際の計算も交えながら3通り紹介していきます。 1. 定率償却法まずは定率償却法です。 固定資産の償却年数は5年で残存価値は0、設備投資は100百万円で3年間に1回行い、現在の固定資産は150百万円という前提を置きます(下図のD列)。 上記の前提は上場会社であれば有価証券報告書や10-kを基に立てていきます。 定率償却法は、固定資産の取得価額から減価償却

          減価償却の予測方法

          M&Aスキーム:ロングリーチによる富士通コンポーネントへの公開買付け

          少し前になりますが、2018年7月26日に公表された、ロングリーチによる富士通コンポーネントへの公開買付けのスキームが面白かったので、少し書いてみようと思います。 本案件は、富士通子会社の電子部品メーカーである富士通コンポーネントに対して、東京・香港・上海ベースのPEファンドであるロングリーチグループが公開買付けをしたものですが、そのスキームが少し特殊ですので、まずは下記の公開買付届出書の抜粋をご覧ください。 要は、富士通が76.57%の持分を所有していて、それを25.0

          M&Aスキーム:ロングリーチによる富士通コンポーネントへの公開買付け

          公開買付開始の公表

          ニチイ学館のMBOの開示資料を見ていて、何故公開買付開始公告や公開買付届出書がEDINETで開示されていないのか、ということを疑問に思いました。 公開買付開始のお知らせは対象会社であるニチイ学館がTDnet上で開示しています。 ちなみに、EDINETは金融庁の運営で、金商法を根拠とする法定開示をするシステムで、TDnetは東京証券取引所が適時開示のルールに基づき独自に運営しているシステムです。 公開買付けを行うものは、電子公告または時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙へ

          公開買付開始の公表