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自転車の話


この間、自転車をこぐとあまりにキーキー音がするのと、後ろのタイヤが丸坊主のつるつる状態になったのでタイヤ交換をかねて近所の自転車屋に行った。

無口な息子と年老いた父親が営む自転車屋に、ずいぶん長くお世話になっている。ずいぶん長くお世話になってるわりには、全然顔を覚えてもらえないのだが、家から一番近いし仕事も丁寧なのでので気に入ってる自転車屋だ。タイヤと音の話をすると、30分ぐらい時間がかかるそうなので、近所のスーパーで夕飯の買い物をして戻ってきた。するとおじさんが
「この自転車相当古いでしょ。ギアが逆だもん。やりずらいよ」
と声をかけてきた。そして
「直したけど、また音出るかもね」
と言いながら自転車をひき渡してくれた。走ってみたらギアがすんごく堅くなっていて、筋トレになりそうだった。
そういえばこの自転車、長女が生まれたときに買ったので、もう27年ぐらい使ってる。

私は自転車をこぐのが得意ではなかったけど、産休明けですぐに仕事に復帰するには自転車通勤しかなかった。当時子供を乗せると言えば、前籠の後ろに小さな子供用の椅子を設置し、がに股状態で自転車をこぐのが一般的だった。そのがに股こぎに、ことのほか自信が無かった。
ところが長女が生まれた年、丸石自転車から前籠に子供を乗せられるように、子供が乗ると前籠が少し開いて足を出せる物が発売された。もうそれを見たとたん
「これしかない!!」
と思った。自転車にしては当時6万以上して、相当お高かったが、背に腹は代えられない。0歳の娘を保育園に入れて復職するにはそれしか無かった。
そして購入。
その乗りやすさ、まじ神。
子育ては大変だったが、その自転車があれば百人力だった。
ところが冬の日、自転車で保育園に爆走してたとき、いきなり娘が大号泣した。訳がわからず、保育園の先生に相談すると、
「前籠とてつもなく寒いんだから、フードつけなきゃだめ!」
と怒られた。
前籠スゲーって思ったけど、スゲー寒いこともわかった。

それから27年。三人の子供の子育てがひと段落し、一時は前後に子供を乗せて走ったこともあったが、今は夕飯の食材を山ほど摘んで、仕事帰りに家路をめざす。
走ってる途中にブレーキのコードがちぎれてブレーキがきかなくなり、死にそうになったことがあったり、保育園の布団を荷台に載せようとしたら前籠に乗ってた息子ごと転倒して救急車で子供が運ばれたりと、色々あったが、自転車はもはや仕事を共に切り抜けた戦友である。ギアが反対であろうと、音がうるさかろうと、戦友を見放すのは申し訳ないような気がして、新車に取り替えられずに今に至る。
サドルは何回も変え、前籠も2回取り替え、鍵の取り替えは数知れず。それでもフレームもチェーンも使えるし、一歩も動かなくなったらさすがに考えるのだが、そんな日は一生来ない気がしてきた。
電動自転車を横目で見ながら、
「自転車の替え時っていつなんだろう・・・」
と思う。

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