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大丈夫、過去はもう消えている

サンサーラナーガ2という伝説のゲームソフトがある。

これは子供の頃に自分が夢中になってやっていたSF用RPGソフトだが、その内容はというと…

竜使いの主人公が竜を育成、使役し、敵を倒しながら、尊敬する恩人だが敵でもある天才竜使いの企みを止めに行くというストーリー。

一見よくありそうなRPGのストーリーだけど、大人になった今でも心に残っているのは、使用されていた音楽の美しさと、このゲームのフィールドが、街から街へと移動するいわゆる一般のRPGにおける平面な世界ではなく、階層というシステムだったという点だ。

階層システムとはどういうものかというと、最初、主人公がいる世界は第1階層の世界で、物語のイベント条件をクリアする毎に、シュメールという柱を中心にして全部で8つの階層世界が積み重なって出来ているフィールドを上の階層に向けてワープして進んで行くというシステム。

中でも幼心にズシンときたのは、主人公が後にしてきた下の階層は、主人公が階を上がる毎に消えて無くなっていたというところ。

そんなとんでもなく重たいことをストーリー後半で出会う老人にさらっと言い放たれるのだ。

もちろんそれまでのゲーム内では上の階層に上がると下の階層へのワープゾーンは閉ざされていたし、階層を上がるとき、これまた老人(ワープソーンの番人?)に、本当にやり残したことはないか?という趣旨の問いはあったけども…。

もう無いって…なんて残酷な…。

という衝撃を受けたことをトラウマの如く鮮明に覚えている。

この感じに似たようなものが、いがらしみきおさんの「ぼのぼの」の作中にもあった。確か…「自分が今見ていないものは本当は存在してないのでは?」の哲学だ。

映画でいうとジムキャリーの「トゥルーマン・ショー」に近いかもしれない。

うーむ…究極だ…。

今も時々思う。逆にこの現実世界がもしも元々いた誰かにとっての消えてしまった世界だったらって。そう思うと夜も眠れないんだよね。


このサンサーラナーガ2のなんとも儚いシステムは今思えば僕らの人生に似ている。

未来へと進むしかない一方で過去はどんどん消えて行く。物質的なもの以外で残っているのは思い出というあやふやなものだけ。それ自体も僕らが消えれば無くなってしまう。だからあの時、漠然的に儚く、悲しかったんだと思う。

そして間違いなくその感情が、自分が作品を作る上での切っても切れないインテグラル要素になってる。NOVELSを結成した直後に発表した「惑星パーティ」もこの要素を主軸にして作った。

でも逆に言えば過去が消えていってるのなら、今過去を気にする必要は全然ないとも言えるのではないだろうか。

例えば過去の悲しいことや辛いこと、今自分の周りにいる人には絶対話せないような黒歴史も、自分と一握りの人のあやふやな記憶の中にあるだけなんだから、消えていると思った方がいいと思うんだよね。むしろ過去の出来事が心の枷になって前に進めなくなっていることの方が問題だと思う。

過去が未来に復讐するなんていうのもあるけど、過去の痛みや罪を全て背負ったまま生きていかなきゃならないとしたら、この世界じゃ誰も幸せにはなれないよ。

過去はもう消えているなんて様々な見方で考えると不謹慎という意見もあるかもだけれど、今悩んで立ち止まっている人にとっては背中を後押ししてくれる言葉でもあるんじゃないかなと思う。毒にも薬にもってやつみたいにね。

一旦過去は全て消えてくれないと進めない時ってある。そうしてとりあえず進んで、後からいい思い出だけをうまく復元してピックアップする方が効率的なんじゃないかな。

とかなんとか思ってみたり。


ちなみに「サンサーラナーガ」はサンサーラがサンスクリット語で輪廻、ナーガがという意味らしい。

作品の世界観自体も仏教、ヒンドゥー教、バラモン教を元として構成されていた。

だからちょっと宗教哲学的だったわけですね。

だから僕がこのゲームをやっている同時期に手塚治虫先生のブッダを読みだして号泣していたのは言うまでもない。




さて
いつも読んでくださってる方々、心からありがとうございます。


We Are All Mad Here!(後編)第5章の2部は
明日、金曜日の19時に公開します。

そしてこの第5章、実は2部構成でして、先週第1部の「かえるの回 Mad」を公開しましたが、次は第2部となる「かえるの回 Here」を公開します。
「かえるの回 Here」では遂に、犯人が何故手紙を送ったのか、何故その相手が主人公の孝宏だったのかというところも明らかになっていきます。物語もいよいよ佳境!ぜひお見逃しなく!
これから読まれる方、序章だけ読んでまだ本編どうしようか悩んでる方。
We are〜には、曲にしきれなかった物語があります、僕がずっと伝えたいと思っていた世界と、想いが詰め込まれてます。
少しでも興味があれば時間がある時に少しずつでもいい、是非本編に触れてみて下さい。

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