フォローしませんか?
シェア
川崎ゆきお
2022年6月30日 13:48
「吉田峰の義造さんはおられるでしょうか」「さあ、登ってみないと分からないねえ。下りたとしても分からないよ。この道を通るはずだが、見張っているわけじゃないからね」「登るところは見かけられましたか」「だから、ずっと見張っているわけじゃないから、登ったのか下ったのかは分からないよ。ただ、わしは見かけないなあ」「どのくらいの頻度で、下りたり登ったりするのでしょうか」「だから、始終見ているわけじゃ
2022年6月29日 13:14
期待というのは未来にある。先のことだ。数秒後でもいい。一週間先でも来月でも、年末でもいいし来年でもいいし、数年後でもいい。 ただ、期待なので、悪いことではない。いいこととか楽しいこととか、喜ばしいこととか、そちらの方だろう。 なくてもかまわないようなものも多いが、そういうものほど楽だ。重大事に対しての期待は、外れると、がっかりするし、具体的な生活にも関わるし、また生き方にも関係してくる。
2022年6月28日 12:56
「そうキャンキャン吠えるでない」「しかし、間違っています。私が許しません」「だが、皆が受け入れていることじゃろ」「それが間違いなので、間違った受け取り方をしているのです」「それはいいが、別に間違っておろうともそれほど違いはなかろう。どちらでもいいこと、その程度の問題なのじゃ。目くじらを立てて騒ぎ立てるようなことではない」「でも、それでは間違った道へと。それに本筋を示すことが大事で、私の勤
2022年6月27日 13:04
「暑いですねえ、まだ梅雨前なのに」「この時期、暑いのです。真夏とは言いませんが、小夏です」「それは可愛いですねえ。しかし真夏並みですよ」「まだ、暑さに慣れていないので、暑く感じるだけですよ。小夏はまだまだ序の口。しかし、一瞬ですよ。この時期。すぐに梅雨に入り、気温は下がるというよりも雨で陽射しが来ないのでね。それほど暑くはありませんが、蒸し暑い」「じゃ、梅雨の晴れ間はどうですか。これも暑い
2022年6月26日 13:31
当主が急死し、まだ若い跡継ぎがその地位に就いた。若殿から若が取れ、ただの殿様になった。 しかし誰でもなれるものではなく、この若殿は産まれながらの跡継ぎで、無事生き延びれば、当主の地位は約束されていた。所謂世襲制。 この時代は長男が跡を継ぐ。次男ではなく、縁者でもなく。長子相続が決まっているので、跡目争いはない。ただし、例外はあるが。 この殿、少し頼りない。大人しい人なので、そう思われている
2022年6月20日 12:58
有村というちょっとした金持ちの家がある。あったと言うべきか。今もその跡地は残されているが、建物は当然ない。 明治の終わり頃から大正にかけて活躍した人が建てたもので、いわば成金。そのため、屋敷町ではなく、都会から少しだけ離れた普通の町に建てた。といっても広大や敷地を誇る、というわけではなく、廃業した町工場跡。普通の住宅地の家よりも広い程度。 このあたりは工場がそれなりにあり、太平洋戦争の時は空
2022年6月22日 13:25
「まだこんな時間か」 坂田は枕元のスタンドを付け、目覚まし時計を確認した。確かにまだ夜中。夏の夜は短いとはいえ、その時間は暗い。明け方までかなり時間がある。「いつ寝たのだろう」 坂田はいつもの時間になったので、寝床に入った。だから何かしていてうたた寝したわけではない。だが、記憶が少し飛んでいる。「寝付けなかったはずだが」 それは覚えている。これでは起きたときが大変だろうと。 睡眠不足は
2022年6月21日 13:13
何らかの期待をしたとき、その今も、刻一刻変わり、三日後は、その過去の今の期待とは変わっていることもあるが、過去の今は、それなりに賞味期限があり、一月後も、あまり変わっていなかったりする。また、半年や一年、持つこともある。 以前の今も、今の今も、ほぼ同じ感想だったり、同じ気持ちだったりする。確かに多少は違っているかもしれないが、意味としては、刻一刻変わる今ほどには目まぐるしくは変わらないものもあ
2022年6月18日 13:18
期待しているものは、期待通りになることを期待している。それを望んでいる。 そのため、これは期待出来ると思うものは点数が甘いかもしれない。あまり期待していないもの、どうでもいいようなものなら跳ねてしまう点数でも、期待していたものは期待を通したい。そのためか、点数が甘い。 これは期待していたものが、期待通りになったとか、叶ったとかの成果を得たいためだろう。 だから、多少、それを満たしていなくて
2022年6月19日 13:03
堀川吉常は隠居同然の暮らしをしていた。家老職からも下ろされた。しかし、老臣であり、重臣であることには変わりはない。 ただ、お役がないだけ。これは政敵にやられたのだ。はめられたといってもいい。しかし、周囲はそれほど気にしていないようで、堀川吉常なら、そんなこともするだろうと、思っていたのだ。 それほど重要な人物ではなく、軽く見られていた。堀川にも政の方針があるのだが、いささか古臭い。それにもう
2022年6月17日 13:03
予定していたわけではないが、何となく予定通りに事が運んだりすることがある。その事を予定していたわけではないのだが、何となく予定していたように思ってしまうことがある。 予定していても予定していなくても、似たようなものだというわけではないが、予定というのも、何処かでそんな予定が浮かぶのだろう。予定の発生。 だからそれは予定ではないのかもしれない。ただそんな予定が浮かんだけで、作りだしたものではな
2022年6月16日 13:42
御船山には五千の主力がいた。本軍であり、総大将がいる。 その横の山に陣を張る勝又山の部隊は敵の接近に気付き、飛び出した。今なら坂を上ってくる敵に一撃を食らわすことが出来る。 命令系統は曖昧で、全てが総大将が命じることになっているのだが、御船山と勝又山はそれなりに距離がある。そのときは、単独で判断してもいいとされている。 それで、勝又隊は敵に襲いかかったのだが、意外と数が多い。敵のほぼ主力が
2022年6月11日 13:12
無縁坂はあるかもしれないが、無限坂は知らないが、そういう別名の坂はある。ただの呼び名。また、その坂には名前がない場合もある。 無限坂はそのままの坂で、坂が無限に続く。それなら非常に高いところまで上がることになるのだが、そんな無限に続く坂だけがあれば、天に繋がっているだろう。 また無限に続いているような坂もあるが、これは山に向かった坂道。頂上までずっと坂かもしれないが、一本の坂道として認識され
2022年6月12日 13:03
「空き城に何者かが棲み着いておるのですが、如何なさいます」「何処の城じゃ」「白根城です」「そんな城があったか」「最後に逃げ込む城です」「ああ、聞いたことがある。険しい山奥にある城だろ」「もし支城や、この本城も危なくなったとき、そこに避難するための城でして。兵糧の蓄えもあります。武器弾薬もあります。しかし、食べるものには限りがありますので、長くは持ちません。援軍を待つ間、持てばいい城でし