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性器ヘルペスについて真面目に書いてみる。


「性器ヘルペス」

この単語を聞いたことがある、もしくは知っている人がどれくらいいるだろうか。一医療従事者として、女性として、この性器ヘルペスに大きな身体的・心理的ダメージを受け、夜な夜な痛みと後悔、絶望感に襲われ泣いている女性がいるということを皆に知ってほしいと思い、この記事を書いてみる。


性器ヘルペスは性感染症の1つで、ヘルペスウイルスが性器に感染することで起こる病気だ。

ヘルペスウイルスには2種類あって、そのどちらかが口に感染すれば口唇ヘルペス、性器に感染すれば性器ヘルペスだ。ちなみに私は父が口唇ヘルペスを持っており、いつのまにか私たち兄妹全員口唇ヘルペスに感染していた。


口唇ヘルペスの場合、私たち家族のように一緒に生活しているだけでいつの間にか感染している場合が多々ある。それとは違い、性器ヘルペスの場合はその感染のほとんどが性行為によるものだ(お風呂やトイレで感染することもある)。性器ヘルペスに限らず、クラミジアや淋菌等の性感染症は「性行為を介する」という事だけでなんだか恥ずかしいものとしてとらえられている。だけど決して恥ずかしいものではない。食事を介するか、お風呂を介するか、会話を介するか、性行為を介するかだけの違い。セックスでうつる風邪くらいのスタンスで考えても全然問題ない。

ただその風邪をこじらせると稀に不妊症につながったり時には命に関わることがある。だからしっかり予防すれば防げるのだから予防しようよということ。


性器ヘルペスはコンドームをつけることである程度の予防効果はあるけれど、しっかりコンドームをつけて性行為を行ったとしても感染することがある。性器ヘルペスという「性病」を持っているからビッチな女だいうわけではないことをまず声を大にして言いたい。どれだけ気を付けていても、感染するときは感染してしまう。感染するかどうかは運任せだ。そんなリスクを抱えて毎回セックスをしているということを、どれだけの人達が知っているだろうか。


どうして私が今日性感染症の中でも性器ヘルペスを取り上げたかというと、冒頭にも記載した通り、性器ヘルペスに感染した女性のダメージがあまりにも大きく、そしてほとんどの女性がそのダメージと1人孤独に戦っているからだ。


性器ヘルペスがいかにして女性を痛め苦しめるか。


まず1つ目の理由は、激烈な痛み。ヘルペスウイルスに感染し初めて症状が現れた時、性器に水疱や潰瘍ができて、多くの女性が激痛に苦しむ。下着の擦れさえも痛くてまともに歩くことできない程。トイレの時は、人間1日数回必ず排尿しないといけないシステムなのに、尿がただれた部位につくと大人でさえ泣いて声をあげてしまうほど痛いのだ。それに併せて高熱も襲ってくる。そんな毎日が3日~1週間続くとなると、まさに地獄だ。


そして2つ目の理由が、発症した性器の見た目。先ほども伝えた通り、性器に潰瘍や水膨れがたくさんできる。性器は些細な普通との違いが、人生における悩みにもなる場所。その場所は「普通で綺麗で清潔」が大事にされ、周りのみんなには秘密にしたい性行為という時にだけ相手に見せる、預ける場所。そんなプライベートに溢れた大切な大切なオアシスのような場所がぐちゃぐちゃになるのだ。腫れあがり、皮膚がめくれ、痛みを伴う。この精神的ダメージは相当なものだと想像がつくと思う。


そして3つ目。これが最も大きな理由ではないかと私は思ってる。


完治しないという事実。

そう、ヘルペスは完治しない。完治しないという表現が少し微妙だけれど、ヘルペスウイルスは一度感染したら一生その人の体に「住みつく」のだ。医療がここまで発展している今現在でも、体内からヘルペスウイルスを死滅させる薬は完成されていない。なぜだ。

しかも厄介なことに、ヘルペスウイルスは全身にすみつくわけではない。しっかりと「ここに住みます!!!」と永住する場所を決めてしまう。

どういうことかというと、私の場合は口元にヘルペスウイルスが住みついている。私は生涯このヘルペスを体内に保有したまま生きていくのだけど、この私の口元にいるヘルペスは一生口元に住みつくのだ。私の口唇ヘルペスが性器やほかの部位に移動することは一生無い。


つまりはだ。つまり、性器に住みついたヘルペスは一生涯性器に住みつくということ。唇やお腹、指に移動してくれよと思うけれど、ウイルスは性器に永住する。一度性器に感染すると、一生涯性器にヘルペスウイルスを抱えたまま生きていくのだ。これは男性も女性も変わりない。

この「治らない」という事実が、痛みに、発熱に、見た目のグロテスクさに既に心が折れている女性を絶望の淵に突き落とす。


そして4つ目。助けて、と周りに言いにくい。性器ヘルペスに感染しているだなんて親にも友達にも彼氏にも恥ずかしくて言えない。でも彼氏には言わないとこれから困るよな。でも言うの恥ずかしいな。なんとか治せないかな。どうしよう。どうしよう。どうしよう。。。と一人、スマホ片手に調べまくる。性器ヘルペス含め、性感染症に対して「恥ずかしいもの」として捉えられがちな今、助けてくれるのはネットしかないのだ。女性は不安と恐怖に、スマホ片手に必死で戦っている。


症状が現れるタイミングは口唇ヘルペスも性器ヘルペスも変わらない。ストレスや疲労、栄養不足等によって、唇や性器に潰瘍ができる。いつできるかは健康状態に影響を受けるから、いつ再発するのか全く予想がつかない。

そしてもちろん、潰瘍がある時に性行為をすると相手にうつしてしまうリスクがドンと上がる。粘膜の接触により感染するのだから、ウイルスが表面にでてきている潰瘍が相手の粘膜に触れてしまうと感染する可能性がある。なので再発している時性行為は控えたほうがいい。


これはどういうことかというと、ヘルペスウイルス次第では性行為が制限されるということだ。これが5つ目の理由。今まで大好きな人とセックスできないときは生理の時くらいで、その日以外は自由にセックスをしていたのに。もしデートの日に再発してしまったら私はセックスをできないんだ。相手にがっかりさせちゃうな。申し訳ないな。むしろ私はこれから一生気持ちのいいセックスなんてできないんだろうな。だっていつどんな時も相手に感染させる可能性があるんだから。


今まで自由にしてたセックスさえ、すべてヘルペスに支配されるように感じてしまう。

これはとてつもなく辛いこと。


私は永遠にこのヘルペスウイルスに悩まされ気にしながら生きていくのか。大好きな人とのセックスにも常に相手にうつしてしまうリスクを抱えながら生きていくのか。しっかり避妊したらよかった。あんな男と関係を持つんじゃなかった。ちゃんと性知識を持っておけばよかった。なんであの時。どうしてあの時。


溢れ出る後悔にさらに涙はぽろぽろと零れるし、どうか嘘であってほしいと願いながら夜な夜なTwitterやブログ記事を読み漁る。そして完治しないという現実に打ちのめされ、「治せます!」という怪しい内容を信じ始めてしまう。日中も気付けば性器ヘルペスのことばかり考えてしまう。

とにかく、性器ヘルペスに支配された現実から逃げ出したくなる。



どうか皆もっと性器ヘルペスについて知ってほしいと願う。(もちろん性器ヘルペスだけじゃない。クラミジアや淋菌、HIV等様々な性感染症、避妊の方法、妊娠の仕組みを知ってほしい。)

無知は自分を傷つけてしまう。知識は自分を守ることができる。いくら大切で大好きな相手でも、とある1日の夜だけの相手でも、自分の身体を全て相手に委ねてはいけない。本当に大切なものは自分で守らないといけない。

性器ヘルペスに感染した女性のほとんどが思うだろう。「性器ヘルペスについて知っておけばよかった」と。ヘルペスウイルスと共に人生を歩まなければいけないとわかった瞬間、皆この無知に後悔する。

今この記事を読んだ女性が、そして男性も、今日をきっかけに少しでもこの性器ヘルペスについて、性感染症について調べてくれればと願う。

愛して、温かくて、優しくて、癒されて、身体中に愛が溢れるようなセックスという大事な時間を、そして唯一無二の自分の体を、しっかりと守ってほしい。



そして、ヘルペスウイルスに感染してしまった女性にも伝えたい言葉がある。

私はまるで自分の体験談かのように、全てを知っているかのようにこの記事をここまで書いてきたけれど、私はまだ性器ヘルペスを発症していない。感染しているかどうかわからない。感染していても数年後に初めて症状が出ることもあるから。

一医療者として、そして女性として。望まない妊娠や性感染症患者を少しでも少なくしたいという一心で知識をつけてきただけであり、皆さんの苦しみや痛みを全て共感することはできないでいる。


ただ、私なりに今まで勉強してきて性器ヘルペスについて学んだことは、

これからに絶望しなくてもいいということ。


永遠に住み着くという一番避けたい現実を改めて突きつけておいて何を言っているのかと思われるかもしれない。


ただ、性器ヘルペスに感染したことは皆さんが思っているほど大事件大惨事というわけではない。ヘルペスウイルスに感染している人はごまんといる。むしろ、普通に生活していたらほとんどの人(70%くらいかな)が感染する。感染したのが口なのか、指なのか、性器なのかというそれだけの違い。ほとんどの人がヘルペスと共に人生を歩んでる。

そんなの言われても慰めにも何もならない、なんで私はあえて性器に感染しまったんだ、と悲観するかもしれない。私は、少しの間は悲観し絶望してもいいと思う。だけど、いつかは必ず立ち直って欲しい。


なぜなら、本当にあなたを絶望させるほどのウイルスではないから。


まず、命を落としたりすることがない。とても力の弱いウイルスであるということ。

そして一生ヘルペスに苦しめられると思っているかもしれないけれど、年から年中常にあなたを虐めるわけではい。基本的にヘルペスは、健康な人中では何も悪さしない。ひたすらスヤスヤ眠っています。あなたが体調を崩したり弱った時だけ、「ん????」と目を覚まして、体の奥底から皮膚の方へと散歩しに出てくる。

常に眠らせておけばいいんです。眠らせておくことができれば、あなたは感染していない人となにも変わりないんです。もちろんうまく寝かしつけることができていれば、大好きなあの人にヘルペスをうつす可能性も限りなく0に近づけることができます。


常に眠らせておくのが難しいんだよ!と思うかもしれない。

確かに難しいかもしれない。何をどうやっても不定期に性器がチクチクして、ピリピリして、性器の痛みや違和感に絶望の淵から絶叫したくなる時があるかもしれない。


眠らせておくポイントって、ただひたすら健やかに今この時間を過ごすということ。

この期間に色々試しませんでしたか?ゆっくり睡眠をとってみたり、食事に気をつけてみたり、サプリを試してみたり。これって目的はただひたすらヘルペスを鎮静化させるということかもしれないけど、知らないうちにあなたは必ず女性として美しくなっているはず。


適度な運動、適度な食事、適度な睡眠、必要な栄養素の補給。ほとんどの人がやってそうでできていない「美しくいるための基本的な生活習慣」を皆さんは確固たる意思を持って今やり遂げようとしているんです。

そしていかに健康な女性の身体が美しく、そして弱く、私たちが必死に守らないといけない大切なものなんだと気付いた今。他の誰よりあなたは美しいと私は思います。

どうかウイルスと一生生きていくなんて最悪だ、終わったと思わないで。

はぁ、住み着かれちゃったしとりあえずこれからうまくやってこうね、よろしく。くらいにふわりとした気持ちで自分の身体に住み着いたウイルスと向き合ってほしい。

「よろしくね。」の余裕がとっても大事。


ウイルスと仲良くしろだなんて思いません。だけど、いつまでも目の敵にしているとあなたが疲れます。人生に雲がかかります。もしもウイルスが目を覚ましてしまった日には、「あちゃー起きちゃった!私疲れてるな!!!」と自分の心と体をケアするきっかけにしてほしい。

あなたは美しいままだし、これからも必ず美しい。負けないで、こんな弱っちいウイルスごときに。

今日も明日も、あなたは美しい。




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