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プレミアリーグ第21節 レスターVS.リーズ〜レスターのゲームプランとリーズのゲームモデルと〜

 こんばんは。先日の記事が、フォロワーが全然いないツイッターでほんの少しだけバズらせていただいて、今は凄いモチベーションにあふれています。評価いただいた方には、再度感謝申し上げるとともに、「継続は力なり」ということで、みなさまによりご愛好いただけるように日々邁進していきたいと思います!

そんなことをいいながら、今日はちょっとニッチな1週間前のレスターVS.リーズの一戦を紹介。時間は経ちましたが、見てみるとこれもまたいい試合でした。

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両チームのスタメンは上の通りで、プレミアリーグ7戦無敗中のレスター。ランパードにとどめを刺したチームですが、この日はヴァーディ―とエンディディが不在と不安材料も多いです。一方のリーズはCBのコッホに加え、ジョレンテが前節に再離脱。CBは左利きコンビのストライクとクーパーとなっているほか、IHはロドリゴとダラスが組み、クリヒがベンチスタートということになりました。

噛み合わせの合致、そしてマンツーマン守備の功罪

 まず、この試合で注目すべきは両チームのフォーメーションの噛み合わせが合っているということです。

(フォーメーションの噛み合わせについては以下の記事の最後の「コラム」で紹介しているので、そちらを参照していただけるとありがたいです!!https://note.com/manunitact/n/nedece45fae30)

この「噛み合わせ」というのは両チームのボール非保持(守備)、特にプレッシングにおいて肝要になってきます。特にリーズの守備というのは毎試合変わることのないもので、そのリーズのボール非保持やプレッシングについて述べていきたいと思います。

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リーズの守備はプレッシング、撤退守備問わず、基本的には上の図のようなかたちと原則で行われます。この試合、最初からフォーメーションの噛み合わせが合っているので、リーズは守備時にかたちを変える必要がなかったわけです。それによって、リーズは6',12',17',26'とプレッシングに成功し、(自分の記録によると、レスターが繋いでビルドアップに成功したのは11'と35'だけで、)前半のボール保持率も53%と試合を掌握することに成功します。

 しかし、先制点はレスターに生まれます。トランジションの局面が続いたのちにリーズがボール保持のフェーズに入ると、すぐさまクーパーから逆サイドのワイドに張るハフィーニャへのサイドチェンジが試みられます。そのボールが少し短くなったため、ジャスティンがカットし、バーンズにボールが渡ります。そこからのトランジション局面でバーンズが「時間」を得て、サイドに開いたマディソンにパスをし、以下の動画の0:33のシーンになります。

(Youtubeチャンネル”Leeds United Official”より)

このシーンはトランジション局面となっていますが、リーズの選手は(基本的にはボール保持時も守備も計算された配置となっているので、)先ほどの通りにそれぞれの選手がマーカーにつき、+1のカバーリングとしてクーパーが中央にいます。ただ、マディソンのワンタッチ、そしてバーンズの巧みなドリブル、シュートによって失点してしまったといえます。これがいわばマンツーマンでの守備弱点で、1対1になるともろに対峙する選手同士の個人差が出たということです。だからセットしたときには、逆サイドの選手もスライドして中央を守り、前線の選手も盛んにプレスバックすることで、リーズは「現代型マンツーマン」を敷いているのですが、トランジション局面でマンツーマン守備の弱点が露呈する形となりました。

 そのまたしかし、すぐにリーズが追いつきます。今度はレスターのボール保持フェーズで、エヴァンスがバンフォードの中切りのプレッシャーを受けながらマディソンにパスをし、マディソンがフィリップスの寄せを受けたため、スルーをしライン間に降りていたアヨセにボールを預け、再びリターンをもらうというレイオフで前を向くことに成功します。この崩しによってマディソンが「時間」を得ますが、マディソンからバーンズへの横パスがずれてしまい、バーンズへのパスに準備していたエイリングがボールを奪います。横パスを奪ったことで、一気にベクトルを変え、エイリングが持ち運んでいるシーンが上の動画の0:45からのシーンになります。

今度はリーズのマンツーマンを基軸とした守備が功を奏するかたちでボールを奪い、そのポジティブトランジションをゴールにつなげました。また、得点を取ったダラスもマーカーであるティーレマンスが低い位置にいたことで、その後ティーレマンスを振り切ってゴールに絡みました。リーズは「次の守備を考えた攻撃」も去ることながら、「次の攻撃を考えた守備」を体現しているチームと言えるかもしれません。

レスターのボール非保持VS.リーズのボール保持

 レスターはブレンダン・ロジャーズ監督就任以来、従来のカウンターに加え、ボール保持により試合を勝ち取っていくことも増えました。そして、この試合もそのためのプレッシングをしっかりと用意してきていました。

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レスターは上の図のような相手との噛み合わせの合致を活かしたかたちでのプレッシングを試みて、3',5',19',29',30',38',43'の7回にわたって成功しています。ただ、リーズが効果的にビルドアップできていたシーンが多かったのも事実で、7',17',22',24',31',36',40'に相手にボールを取られたのちにすぐ取り返したりしたシーンもありながら、ビルトアップ成功につなげています。

リーズがマンツーマンを基調とした守備・プレッシングとするならば、レスターの場合はもちろん噛み合わせを活かしたものなのでマンツーマン的要素もありますが、マーカーの受け渡しもあり、ゾーンを基調とした守備・プレッシングといえます。そうすると、そこに受け渡しする際のズレだったり、同じゾーンに2人を配置することによる局地的な数的優位をリーズはつくってビルトアップしてきたわけです。例えば、31'右サイドのエイリング-クリヒ-ハフィーニャの三角形が「旋回」することで、ビルドアップにつなげましたし、36',40'は右サイドでメンディに2人のマークを与えることで、相手を混乱させていました。

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上が36'のシーンを表した図なのですが、ティーレマンスを逆サイドのIHであるダラスが手前に釣りだして、クリヒを使うなど、ゾーンの穴をついたビルドアップができていることがわかります。

ロジャーズの修正(変更)、それに対するリーズの対応

 前半は完全にとはいわないまでも、リーズの—ペースで終始して1-1での折り返し。ホームチーム、そして優勝争いをするチームにとって勝ち点3を取りに行くことが条件のレスター。ハーフタイムでそのための修正が行われました。

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それは3-4-3への変更です。今季ソユンクのケガをきっかけに使い始めたこのフォーメーションを採用することで、ロジャーズ監督は1つは攻撃時の噛み合わせをずらすこと、もう1つは相手のサイドからの前進やサイド攻撃を食い止めることを狙っていたのではないかと思われます。

 まず、レスターのボール保持とリーズのボール非保持について考えてみると、先ほども述べたようにリーズはボール非保持のときは「後方の数的優位を担保したマンツーマン」を行うはずだが、このように噛み合わせがずれた場合には、その守備ができるように(3-4-3に対して)4-4-2のようなかたちにシフトする必要があります。ソユンク投入と同時に、リーズのコーチがアリオスキに何かを言っているのは確認できますが、やはりすぐには対応できず、48'のようにマークがごちゃごちゃになったり、55',57'のようにリーズがボールを奪うのですが、マークが定まっておらず、突破をされかけるというシーンが散見されました。

 そして、もう一つメスが入れられたのが、レスターのボール非保持の局面、特にプレッシングの部分での相手のサイドからの前進に対する対策です。

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レスターのは上の図のようなかたち(3-1-2-1-3)でのプレッシングを後半から採用しました。ダブルボランチの負担は大きいですが、これによってリーズのサイドの「ひし形」を抑えることができていました。実際に、レスターは後半、57',59',60',62',73'(フォファナのシュートにつながる),76'(アヨセのシュートにつながる)とプレッシングに成功しています。もちろん、これにはリーズの配置の変更が影響していますが、ロジャーズの修正が機能して65分台くらいまではペースを握ったレスターでした。

リーズの修正とゲーム内での順応

 上述したようにレスターペースが続いたのは65分ごろまでで、その後は再びリーズのペースとなり、70'にバンフォードの逆転弾が生まれるわけですが、その過程について少し見てみたいと思います。

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上述したように、レスターの後半からのフォーメーションの変更によって、「後方の数的優位を担保したマンツーマン」の守備を行うリーズにも修正が求められます。そこでリーズは57'あたりからこの上の図のようにダラスが左SBのような立ち位置となり、4-4-2のようなかたちとなります。これによって前半から行っていた「後方の数的優位を担保したマンツーマン」の守備が可能としました。プレッシングも61'×2,66',68',70'に、ミドルゾーンや撤退での守備でも51',72'にボールを奪うことに成功しています。

 一方で、上記しましたが、レスターの50分台後半から60分台前半にかけて、レスターのプレッシングに苦しんだのも事実で、このポジション変更によって、一時的にビルドアップが機能不全に陥りました。

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この上の図でも示してある通り、リーズは「守備を考えた攻撃・ポジショニング」をとるので、ボール保持時もダラスが左SBとなり、前半のように右サイドに逆のIH(ダラス)が流れて、「ひし形」のパスコースを作るというシーンがなくなります。左サイドも同様に、ハリソンがIH的なポジション取りをしますが、それでもパスコースの取り方など慣れない面も多かったと考えられます。このように、レスターのプレッシングの修正に加えて、リーズのポジショニングの変更というのもレスターのペースを生んだ要因となりました。

 しかし、リーズの選手は並大抵のビルドアップ練習を積んでいるわけではありません。恐らく、何パターンものオートマチズムを練習で植え付けられているはずで、64',66'にかたちづくったビルドアップに成功します。これはいづれも、縦関係となったりし、周りにスペースが多く空く相手のダブルボランチの周辺で、64'はストライクが「時間」を得たところから、ハフィーニャへのパスをスルーし、クリヒがサイドに流れたところで、ソユンクがパスカットし、リーズボールのスローインになりビルドアップ成功。66'もストライク→エイリングと繋ぎ、今度は(ボールホルダーに近寄る動きで)瞬間的に空いたフィリップスにパスが通り、フィリップスからハフィーニャへのボールがカットされ、リーズボールのスローインという流れです。いずれもきれいな流れではないですが、相手のプレッシングの「空白」を利用したビルドアップができていたといえます。

そして、そのような流れの中で70'にリーズの得点が生まれます。それは上記したボール非保持における噛み合わせを合わせるという修正が結実した得点ともいえます。70'に相手陣内深いエリアからのプレッシング。ハリソンがフォファナへのパスコースを切りながら、エヴァンズに寄せ、エヴァンズ→シュマイケル→フォファナというようにそれをかわしてレスターがビルドアップしようとすると、アリオスキが縦スライドで対応していました。その後、再びレスターボールのスローインとなりました、そのスローインでもプレッシングを成功させ、そのポジティブトランジションからストライク→ハフィーニャ→バンフォードとつないで、2点目となります。

リーズのベンチからの修正に加え、選手たちが培ってきたゲームモデルが、レスター相手に効果的なビルドアップ、そしてプレッシングが出来た要因といえるでしょう。

ロジャーズの再修正。とどめの3点目

 80'になると、レスターはフォファナ→ウンデルの交代。これにより、前半と同じ4-2-3-1のフォーメーションに戻します。これは恐らく、DFの枚数が5枚よりも4枚の方が単純に攻撃に割く人数が多くなるということを企図したものではないかと思います。リーズがプレッシングの開始ラインを下げたことに加え、この交代が行われたことによりレスターが押し込む展開が続きますが、リーズはしっかりと対応できていました。

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この試合の状況やアリオスキとダラスのカバー範囲を鑑み、ダラスを左SBに、アリオスキをIHとし、最後まで穴のない守備を見せたリーズ。84'に相手のセットプレーのポジティブトランジションをうまくつなぎ、最後はハリソンが決め3点目。度々攻め方を変えてくる相手にボール非保持の局面で対応できたということが、この3点目につながったといえるかもしれません。

試合はそのまま終了し、結果1-3。レスターとしては、リーズを最大限リスペクトし、攻略のためのゲームプランを2段構えで組んできましたが、リーズの若干の修正と浸透したゲームモデルの可塑性が試合を決めたかたちとなりました。

今日は長くなったのでこの辺で。レスター、リーズともに面白いチームなので今後が楽しみですね。

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