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海外マンガ市場における海賊版(Scanlation)の今

初めまして、Mantra株式会社の山中です。

いつもは代表の石渡がnoteを書いているのですが、今後は私も、直接的に自分たちのプロダクトとは関係ないような記事を書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。

現状私がMantra社内で最年長のスタッフになるのですが、Mantraに合流する前は、出版社で編集者をしていたり、ゲーム専門の広告代理店でマーケティングのお手伝いをしたりしておりました。マンガ家・松浦だるまさんの小説家デビュー作『誘』や、テレビアニメにもなった『うーさーのその日暮らし』、『Fate/Grand Order』公式コンテンツとしてお馴染みの『マンガで分かる!Fate/Grand Order』などは、上記の仕事の中で関わらせて頂いた作品です(いずれも単行本好評発売中です…!)

そんな自分自身の経験から、日本のマンガ家さんの才能、そして数々のマンガ作品は、間違いなくこれからさらに世界で注目を集めていくだろうと、ここ数年は特に強く感じていました。今度はMantraから、そんな流れを後押ししていければと思っています。

今回は、その流れをせき止めている大きな要因の一つ、海賊版(Scanlation)について、自分が調べた範囲でお話し出来ればと思います。

どういう人たちが海賊版を読んでいる?

日本では海賊版、と言われますが、英語圏では主にScanlationと呼称されています。ScanとTranslationをかけた造語で、このScanlationの活動に関わる人達をScanlatorと呼んだりします。

以前のnoteにもひとつデータを載せたのですが、Scanlationでマンガを読む人たちの事を詳しく知ろうと思い、主に英語圏でマンガを読んでいる方を対象に調査を行ったことがあります。さて、どういう方がScanlationでマンガを読んでいるのでしょう…?

以下のデータは、RedditやTwitter等のSNSでマンガ読者を対象に行った匿名のアンケート調査より、Scanlationでマンガを読んだことがある人を抽出したデータになります(n数=76)

まずはざっとユーザー属性について。調査自体は英語で行ったので、当然ながら英語圏の回答が多い結果になっています。半数近くの人が毎日のようにマンガを読んでいることを考えると、回答者の多くはマンガ愛読者といって差し支えなさそうです。

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以下は興味深い回答のひとつです。マンガを読むプラットフォームについてなのですが、PCが一番多く、単行本、スマホ、e-bookデバイスと続いています。Scanlationの読者に聞いているので、やはりScanlationで読んでいる割合が高いですが、単行本で読んでいる人も半数以上いることが分かりました。

PCの割合がスマホより高いのは、Scanlationのサイトが比較的PCにのみ最適化されているようなサイトが多いからかもしれません。あとは、単純にスマホだと読みづらい、というのも考えられそうです。

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以下はリーズナブルな金額で公式に作品が出ればお金を払うかどうかについて。匿名の調査とはいえ、オープンな場で行ったものなので、バイアスはかかっているとは思いますが、それでも9割弱の人がYesと回答したのはよい傾向に感じます。

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このあたり、日本で問題になった海賊版サイトと異なる点として、海外では、マンガの多くがScanlation以外で読む方法がない、というのはありそうです。以前のnoteに載せた以下のグラフでも同様の結果を示しています(そして「タダでマンガを読みたいから」の回答率からも上記の設問にバイアスがかかっているのが残念ながら伺えます…)

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Scanlationで流通している作品の多くは、日本で買って読める作品かもしれません。しかし、日本語以外の言語ではそうはいきません。基本的に日本のマンガは海外の出版社からライセンス許諾の問い合わせがあって、初めて流通するかどうかが判断されます。打診の内容によっては、ライセンスを下ろさないという判断もあり得るでしょう。海外の出版社主導ゆえ、かなり作品数が絞られてしまうのですね。

ただ、埋もれていた名作に光が当たり大ブレイクするのも、出版のビジネスにおける面白さと言えます。文化が違えば当然面白いと感じる点もシフトするはずです。海外への作品流通が加速することで、日本ではまだ芽が出ていない作品が、海の向こうで一気に花開き、作家にも出版社にも収益として還元される、ということが当たり前にある世の中になっていけば嬉しいですね。

海賊版を作る人たち

ひるがえって、Scanlatorたちはどういう人たちなのか。実は、現役のScanlator複数人に話を聞いたことがあるのですが、なぜScanlationという活動に従事するのかという質問に、多くのScanlatorは「自分が読みたい作品が公式に流通しないから」そして「ただ楽しいから」と回答していました。前者はScanlationを読む人と同じ感覚ですが、後者の回答は、まるでScanlationをファン活動のように捉えているようにも見えます。

実際、Scanlationはコミュニティの活動のようになっているようで、大規模なDiscordサーバーなどに人が集まり、チームや個人でScanlatorとしての活動に従事しているようです。

彼らの多くに話を聞く限り、どうも自身の行為に対する悪気はないようで、ファン活動としてScanlationに取り組んでいるのだろうな、と感じてしまいます。ファン活動ゆえ、公式に配信が始まると一部のScanlationサイトが、作品の掲載を取りやめる、という結果にもなるのでしょう。

海賊版をなくすために私たちができること

当然上記のような状況をほっとくわけにはいかないわけですが、言語の壁や、文化の壁、様々なものが我々の眼前には立ちはだかってきます。

先日リリースした『Mantra Engine』は、この状況を改善するために我々が考えた最適解の一つです。サイマル配信を後押しすることや、公式に流通する作品をたくさん生み出すことで、Scanlationに関わる必要性をなくし、彼らをただ熱狂的なマンガ読者にしていきたい、というのが私たちの目指す未来です。

彼らは、手段は間違っているかもしれませんが、少なくともマンガを読むのが好きなのは間違いないでしょう。引き続き彼らのことを知る努力は続けながら、『Mantra Engine』や、様々な技術の力をもって、マンガに関わるすべての人のお役にたてるように尽力していきたいと思います。

このnoteを読まれてる法人の方で、『Mantra Engine』への問い合わせ、導入相談等がございましたら、是非info@mantra.co.jpまでご連絡ください。上記のような調査の話もまだまだありますので、ご興味がありましたら、その際に合わせてお話しさせて頂ければと思います。

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